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ビビリ、敗北する(ビビリ視点・ざまあ)

「僕は《剣聖》のスキルを持っているんだ。確かにルインちゃんは強いって聞いているけど、あまり舐められるのも困るかな」

「気持ち悪い喋り方をするな。さっさと構えろ」


 ビビリとルインは向き合い、剣を構えている。

 スキルの性能差で言えば、圧倒的にビビりの方が有利だ。


 《剣聖》は、剣技に関わる全ての能力がぶち上がる。

 対して、ルインのスキルは《剣客》。


 確かにルインのスキルもなかなかの物だが、それでも《剣聖》には劣る。

 だから、自分は問題ないはずだ。


 この勝負、絶対に勝てる。


「始めるぞ」


 そう言うと、ルインが急激な速度で間合いに入ってきた。

 ビビリはギリギリのところで反応し、剣で攻撃を防ぐ。


 その様子を見てか、他の騎士団員は盛り上がり始めた。

 誰もがビビりを見て笑っている。


「な、なんだよ。たったその程度か。やっぱり僕の《剣聖》の方が上のようだね」


 《剣聖》の能力もあって、ビビリは余裕綽々と言った様子だ。

 ギリギリの防御であったが、それでもダメージは皆無に等しい。


 やはり所詮は《剣客》。剣士スキルの最上位である《剣聖》に勝てるわけがない。


「なにを勘違いしている」

「は?」


 ルインは嘲笑しながら、ビビリを見据える。


「私はスキルなんて発動していないが?}

「は……?」


 ビビリは困惑する。

 スキルを発動していない……?


 なら、あの圧倒的な速度はなんなんだ。

 素の実力だといいたいのか。


 ありえない。

 スキル無しであんな馬鹿みたいな技が出せるものか。


「構え直せ。お前がスキルを使うなら、私も使ってやろう」


 刹那、ルインの体から圧倒的な覇気が放たれる。

 思わず、ビビリは後ずさりしてしまった。


 なんだこの胃の腑をえぐるような恐怖心は。

 相手は所詮《剣客》。


 でも、自分より劣る相手なはずなのだ。

 なのに、どうして自分は恐怖している。


「教えてやる。スキルより大事なのは経験と知識量だ。その二つがあってこそ、スキルの真の価値が発揮される」

「な、なんだよそれ! スキルさえあれば問題はないはずだ!」


「馬鹿言うな。我らが団長はそれを私に教え、そうして今の騎士団がある。そんなのも知らない者が騎士団の団長になるだと?」


 言いながら、ルインが一歩前進する。


「調子に乗るのも大概にした方が身のためだぞ」


 一瞬だった。

 ビビリが持っていた木剣が真っ二つに切り落とされ、地面に転がる。


 衝撃なんて微塵も感じなかった。

 木剣同士だと言うのに、まるで良く研磨された真剣にでも斬られたかのような感覚。


「な……な……!」


 言葉が出てこない。

 恐怖で体が震える。


「剣聖、お前の負けだ」


 ビビリはただ、地面に膝を付ける他なかった。

 勝てない。こいつには、絶対に勝てない。


 ――《剣聖》の僕が……勝てない。


「質問する。敗者なのだ。きちんと答えろ」


 ルインが鋭い眼光で覗き込む。


「アルンはどこだ。どこに追放した」

「ア、アルンは……」


 言っちゃだめだ。

 言ってしまったら、きっと取り返しのつかないことになる。


 だけど。


「どこに追放した。言え」

「バート領です……」


 言わないと、きっと自分は殺される。

 王族だからって関係ない。


 今、宮廷にいる人物で一番強いのは彼女だ。

 本能がそう言っている。


「そうか。一言、言わせてもらおう」


 髪を掴まれ、無理やり顔をあげさせられる。

 眼の前には、怒りを顕にしたルインの姿があった。


「腐っているな。この国は」

「…………」


 ルインは踵を返し、騎士団に向かって声をあげる。


「これより、私はバート領に向かう! 強制はしない。着いて来たい者だけ私に着いて来い!」

「ま、待ってくれ。君たちがいないと王都の安全は誰が守るんだ……!」


 やっとの思いで声を出す。

 が、返ってくる言葉は悲痛だ。


「《剣聖》が守ればいいのではないか? 強いのだろう?」

ここまで読んで下さり、ありがとうございます!感謝感激です。皆様の応援のおかげでランキングにも入りました!やったぜ!


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