ビビリの恥(ビビリ視点・ざまあ)
「僕のスキル――《剣心》がどれだけ《剣聖》と戦えるのか楽しみです」
アルマ王子がそういった刹那、ビビリは膝から崩れ落ちそうになった。
「な……なんだよ、これ……」
彼から放たれる魔力に屈してしまったのだ。
あまりにも強大で、近くにいるだけで気が失いそうだ。
これが《剣心》?
聞いたこともないスキルだからと少し安心していたが……こんなの勝てるわけがないじゃないか。
「一つ質問してもいいでしょうか……?」
「はい、なんでもどうぞ」
ビビリは震える手を抑えながら、アルマに尋ねる。
「アルン兄さんは……アルマ様にいかほど渡り合えたのでしょうか?」
「僕の全敗だよ。アルン殿にはどうやっても勝てなかった」
嘘だろ……?
兄さんはスキル無しの無能なはずだ。
なのに、こんな力を持った人物を負かしたのか?
信じられない。到底信じることができない。
しかし、彼が言っているのだから事実なのだろう。
王子がわざわざ嘘を吐くなんて思えない。
「追放したのは……間違っていたのか……?」
思わず、溢れてしまった一言。
もちろん、アルマはそれを聞き逃さなかった。
「追放……? それってアルン殿をか?」
アルマは剣を下ろし、こちらににじり寄ってくる。
「確かに噂は流れていたが、本当だったのか?」
真剣な表情でアルマがこちらを見る。
ビビリは焦る。どうしようもないほどに焦る。
だからこそ正直に答えてしまった。
「は、はい――」
「なんてことだ……ビビリ殿。失礼ではあるが、その判断は誰が?」
「お父様が……国王様が……」
そう言うと、アルマは額に手を当てて大きくため息を吐く。
心底残念そうにこちらを一瞥して。
「この国の政策には不満を持っていたが、遂にはここまでしてしまうか……」
ビビリは気が付き始めていた。
実は、兄さんはすごいんじゃないかと。
だって、この王子と渡り合い、そして勝った男なのだ。
そして、政策に不満を持っている王子を抑え込んでいた男なのだと。
「国王様と一度面会したい。ビビリ殿、お願いできるね?」
「もちろんです……」
ビビリはもうどうにでもなれとなっていた。
なんなら、戦わずに済んだことを安心していた。
これで自分は死なずに済んだ。
軍隊も出す必要がなくなった。
――よかったぁぁぁぁぁぁぁぁ。
そう安堵する。
しかし、自分がどれだけ恥ずかしいことをしているのか気がついていなかった。
どこか安堵している様子のビビリを見て、アルマは思う。
この国は堕ちたものだなと。
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