領民たちを癒やし、ママに毒されているSランクドラゴンをテイムしてみた
無事バート領に到着した俺は凝り固まった肩をほぐしながら領地を歩く。
それにしても荒れ果てた領地だな。
現存している唯一の街だと聞いているが……酷いな。
「なんだおめえ!? ……その服装、王族だな!! この腕の恨みぃぃぃぃ!!」
領地を歩いていると、領民に襲われそうになったので治癒スキルを発動する。
理由は知らないが、片腕を王族に持っていかれたらしいからな。
これでも、元王族だ。申し訳ない。
「てぇぇぇぇぇぇ!? 腕が生えてきた!?」
生えてきた腕を見ながら驚愕する男。
それもそうか。急に生えてきたら驚くよな。
「大丈夫か? 俺はバート領の新たな領主、アルンだ。よろしく頼む」
「あ、アルン様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
全力で土下座されたので、とりあえず頭をあげさせる。
周囲から明らかな殺意を感じていたのだが、この男を治した途端に殺意が消え去った。
すると、わっさわっさと家々から人々が出てきた。
「俺の怪我も治してくれ!」
「僕も頼む!」
「ほいほい」
治癒スキルを発動し、領民たちの傷を癒やしていく。
これも領主の仕事だ。これくらいどうってことはない。
「「「アルン様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」
元気がいい領民たちでいいことだ。
さて、それよりも早く屋敷に行きたいな。
長年放置されてるだろうから掃除がしたい。そういうのは早めに済ましておいて損はないからな。
「ところでここの領主の屋敷はどこに?」
「あ……それはですね……」
一人の領民が困った顔で笑う。
なんだなんだ。すごく嫌な予感がするのだが。
「Sランクのドラゴンが住み着いちゃってまして……俺たち、近づくこともできず……」
「Sランクか。なら問題ないな」
「Sランクがですかい!?」
SSSランクならまた別だが、Sランク程度ならどうってことはない。
これくらいなら朝飯前だ。
「それじゃあ連れて行ってくれ」
◆
「あーなるほど。これはこれは」
途中、領民が恐ろしいので勘弁してくれと去っていった理由が分かった。
クソでかいフレイムドラゴンが屋根の上で眠っていた。
「ま、サクッとやっちゃいますか」
俺は《収納》スキルで魔剣ディランを取り出す。
そして、《飛翔》スキルを発動して屋根まで一気に登った。
「ぐりゅ!?」
「うわ。さすがにバレたか」
一応Sランクなだけはある。
俺の魔力に反応して目を覚ましてしまったらしい。
フレイムドラゴンが起き上がり、ギロリと俺を睨んできた。
ドラゴンは基本、相手を威圧する能力を持つ。
まあ俺にとっては全て無効なんだけど。
「殺しはしないから安心してくれ。ちょっと出ていってもらうだけだ」
魔剣を構え、そして空間を切り裂く。
この魔剣ディランは空間と空間を繋ぐことができる代物だ。
つまり、バート領から王都に直接繋いでフレイムドラゴンを王都に放つこともできる。
さすがにそこまでの嫌がらせはしないけども。
「ま、待って! 待って、お願い!!」
「は?」
思わず魔剣の能力を停止する。
眼の前のドラゴンが急に女の子になったからだ。
屋根の上に着地すると、女の子が俺に抱きついてきた。
涙を湛えながらおんおん泣いている。
「ごめんなさいー! 妾、なにかしちゃった? なら謝るからー!!」
「え? お前、人間になれるのか」
魔力量の多いドラゴンは变化の力を持っていたりするが……。
「うわっ! すごい魔力量!? 妾絶対に勝てないじゃん! 本当にごめんなさい、殺さないでほしいのー!!」
魔力量も見抜いてきたか。
Sランクでもかなり上位の種族だな。
それよりも……。
「あの……一応今、人間の……あれだ。メスの姿になっているんだからさ。少しは自分の体に気をつけよう」
「え? どうしたの?」
こいつ……無自覚か。
思い切り胸が当たっているんだけど。
「あのな、胸が当たってるんだ」
「駄目なことなの? 格上にはメスとしてのアピールをしたら殺されないってママが言ってた」
ママァ……。
「大丈夫。殺さないから」
「本当!? 良かったぁぁぁぁぁぁ」
そう言ったら、余計くっついてきた。
なんなんだこのドラゴン娘は。
「あー……お前、名前は?」
気まずいので名前を聞くことにした。
「妾? 妾はルーシャ!」
「俺はアルンだ。えーと、お前は特にここの領民に悪いことはしてないんだよな?」
「もちろん! この屋敷の屋根が寝心地よくて……」
なるほど。なら追い出すのは可哀想だな。
「出て行きたくはないよな?」
「うーん……妾はここに残りたいなぁ」
「なら俺に《テイム》させてくれ。そうすれば領民たちも安心してくれるはずだから」
《テイム》とは、魔物を服従させる能力である。
「妾は大丈夫! ママからは格上には従っとけ、って教育されてるから!」
ママァ……。
まあいいか。
「それじゃ、《テイム》」
そうして、俺はSランクドラゴンを従える領主になってしまった。
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