前世大賢者の第一王子、追放されてしまう
「アルン。お前は今日をもって王家から追放処分とする!」
俺、アルンはルルガ王国の第一王子だ。
わりと大きな国の王子をやらせてもらっている。
今は過去形になってしまったんだけど。
「そうだそうだ! スキル無しの兄さんなんて王家には必要ないんだよ!」
そして父上の隣で騒いでいるのが第二王子のビビリ。
俺の可愛い弟……になる。
もちろんこれも過去形だけど。
この世界はスキルが全てだ。
《賢者》のスキルを持った者は賢者を目指し。
《剣聖》のスキルを持った者は剣聖を目指す。
弟は《剣聖》のスキルを手にいれ、俺はというと《判定不可》だった。
つまり、スキルなんて持ってません扱いされていた。
スキルが全てのこの世界でスキルを持っていないとなると、何もできない無能。
まあ、ニート確定ってわけだ。
「ビビリの言う通りだ。スキルを持っていないお前は王家の恥だ。宮廷に置いておくと他国に馬鹿にされかねん」
「そうだそうだ!」
いや、もちろん別に俺は構わないんだけども。
「大丈夫なんですか? 俺、王国騎士団の団長やってますけど」
スキル開花前から俺は《剣聖》に目覚めると信じられていたため、俺は王国騎士団の団長をやっていた。
周囲は無能と言っているが、俺が教育している騎士団は世界一とも言われているほど。
「そんなの僕が引き継ぐに決まってるだろ! だって、僕は《剣聖》なんだ! スキル無しの兄さんが持ってても意味ないだろ?」
「いや、そういう意味で言ったわけじゃないんだけど」
俺がいなくなったら、この国の戦力はガタ落ちする。
そう伝えたかったんだけど……。
なんせ、俺はこれでも人生二周目だ。
前世は大賢者として全てのスキルを網羅し、ゼロからこの国を建国した。
んで、暇だったから転生してみたら第一王子として生まれ。
持っているスキルが多すぎて《判定不可》。結論として無能の烙印を押されたわけだ。
基本スキルは一人につき一つだから判定不可になるのも分かるけど。
「そろそろ黙らんか! アルン、しかし貴様をただ追放してしまったら国民に不信感を抱かせてしまうかもしれん。そこで、お前には辺境であるバート領の領主に任命する」
「ぷぎゃぁぁぁぁ! あそこって荒れ果ててどうしようもない領地じゃないか! 兄さん死んじゃうかもねー!」
バート領か。あそこは確かに荒れ果てている。
俺が現役で賢者だった時もそうだった。
まあ、あそこは貴重な資源が眠ってるから非常用に俺が残しておいた場所だ。
なんなら王都であるここよりいい場所でもある。
「ま、分かりました。んじゃ俺はそこに行けばいいわけですね」
面倒くさいので、さっさと済まそうとするとビビリが俺に近づいてきた。
ニヤニヤとしながら、見て分かる通りの悪い顔をしている。
「《剣聖》発動! オラァァァ!」
そう叫ぶと、ビビリの手に剣が生まれ俺に向かって突き刺してきた。
そして――その剣は折れた。
「は?」
「あ、ごめん。結界張ってたの忘れてたわ。すまん、その剣すぐ直すから貸してくれ」
第一王子ということもあって、下手すれば命を狙われる身だ。
そのため、どんな魔法や物理攻撃をも防ぐ結界をずっと張っている。
「は……?」
剣を受け取り、接着魔法でくっつけて渡した。
「おい……これ、聖剣だぞ? なんで折れるの?」
「あー……そんなこともあるわ。まあ落ち込むなって」
そろそろ相手するのも疲れたので、俺はさっさと移動することにする。
「それじゃあ、父上。んでビビリ。今までありがとな」
そうして、俺は王の間から出て転移スキルでバート領へと移動した。
◆
「これからお主が王国騎士団の団長だ。《剣聖》にはうってつけの役職だろう」
「ありがとうございます父上! たまたま剣が折れたけど、すぐアルンを超えてみせます!」
国王やビビリたちはまだ知らない。
前世賢者なアルンを追放したことで、王国に大打撃が食らうことを。
そして、国家の存続すらも危うくなってしまうことも。
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SSSランク隠しダンジョンで俺だけ最速レベルアップ〜お荷物だと追放されたけど、美少女精霊や王女様と楽しくレベリング&スローライフをしていたら気がつく頃にはレベル差10000ありました〜
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