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第47話「やっと20階層」



 あの我から見ても強者といえる冒険者たちを退けてから約一週間後。遂に最初の目標であった20階層までのダンジョンの作成が完了した。

 改めて一階層からのダンジョンを見て回る。

 1階層から5階層は第3位階のゴブリン種と第1位階のアント種。これらの階層のダンジョン魔物たちは、まるで我が目覚めたばかりの頃のゴブリンたちを見ているかのように和気あいあいといった様子で種族の垣根なく何やら戯れている。


 この随分と和気あいあいとしている様子は魔物同士による位階上げのための殺し合いを行わせていないことが原因かもしれないが、そもそもそれが悪というわけでもない。そろそろ冒険者たちがいつやって来るともわからないこともあり、こ奴らはこのままで良いだろうと判断して次の6階層から9階層を見て回るのだが、そこからまた雰囲気が少し変わる。


「ふむ」


 歩いて回りながらもその変化へと目を配る。

 主な変化はアント種の位階が第2位階へと進化している点だろうか。アンコが卵を産む時に魔力調節が可能になってきたと言っていた言葉が実践された形になるだろう。ちなみにだが、このアントたちは我の魔力を注いだ者ではなく、純粋にアンコの魔力調節により生まれてきたアントたちだ。アンコ曰くもっと魔力調節できるようになる気がすると言っていたためこのまま階層を増やすごとにアント種を増やしていけば、いつかは第3位階以降のアントをダンジョンに棲まわせることも可能となる。


 アント種が第2位階になったことで第3位階のゴブリンたちの身体能力にある程度は応じることが可能になったからだろう。6階層から9階層では最早、喧嘩囂躁けんかごうそう。喧嘩しているのかというほどに騒がしく走り回って遊んでいる。実際に喧嘩しているわけではなく単に遊んでいるだけだということはゴブリンたちの表情を見れば一目で理解できる。

 これはこれである意味、身体能力を上げる訓練にもなっている気がしなくもない。

 さすが悪戯好きのゴブリンと言ったところか?


「で、ここが10階層となるわけだな」


 10階層は大きく雰囲気が異なる階層となっている。

 単純に我とゴブノスケが折角10というキリの良い階層のため、少し趣向を凝らしたいという話になった。言い換えるならこの10階層のダンジョン魔物たちのために残っていたダンジョンポイントを全て注いだといっても過言ではない。


 10階層のダンジョン魔物は第4位階であるオーガとそのオーガにも屈しない同じく第4位階のダンジョン魔物――マーダーホーネット――が配置されている。

 元々はオーガと第2位階のアントたちを10階層に棲まわせようとしていたのだが、どうもオーガ種には強者と認めている者以外には冷酷な一面があるらしい。オーガの進行方向にいるアントたちを意にも介さず踏み殺すなどといった行為を平然と行っていたため第2位階のアントたちは全て別の階層へと移動させた。


 ラセツは自身の弱さに対しては厳しい面を持つが仲間に対してはそのような面がなかったため、これは新しく知ったことだった。どうやら元はゴブリン種だったラセツは少し、というか随分と特殊らしい。


「ホーネットたちとは……うむ、上手くやれているな」


 その確認をしたいこともあって改めて一階層から歩き回っていたといっても過言ではない。


 黄色と黒の甲殻。背中の薄い羽と、尾から微かに覗いている鋭い針。要するに蜂なのだが、このホーネット種はアンコが現在で可能な限りの全力の魔力調整により産まれた卵に我の魔力を流した結果生まれてきた、いわゆる変異種といったものだろうか。

 まさかいきなり第4位階が生まれてくるとは思わなかったため我もアンコもその時は相当に驚いた。ゴブノスケに伝えたところ「えええええええ!」とうるさいくらいに驚いていたが。


 一部屋に大体、オーガが4体とマーダーホーネットが4体。第4位階のゴブリンたちとは違い、戦闘方法に多彩さがないところが欠点ではあるが実際の戦力で考えたなら現状での最大戦力の階層は――当然、我とゴブノスケ、アンコやラセツは除くが――ここ、10階層だろう。これならば以前に我が告知を頼んだ冒険者たち級の者たちでも突破が難しい様に感じられる。

 10階層の現状には我としては文句の付け所はないが、唯一困らせらせている点が一つだけある

 それが――


「だから我のことは気にしなくても良いと言っているだろう。ただ歩いているだけだ」


 オーガたちは強者を認めるといった点から。ホーネットたちは我の魔力の影響を受けて産まれてきてしまった点から。


 ――我の前にまるで傅くように首を垂れるオーガたちとホーネットたちの姿だ。


 まるで昔、我が魔王だった時のことを彷彿とさせられえてどうも居心地が悪い。我の言葉を機に解散していくこ奴らから、我は逃げるようにして下の階層へと降りる。

 11階層以降になると我も既によく知っているゴブリン達が今日も今日とて位階をあげようと殺し合いに励んでいる。

 我が見た時には第1位階から第2位階までしかいなかったゴブリン達が今や第3位階から第4位階のゴブリン達になっていること自体、改めて考えると感慨深いものがあるがこ奴らはまだまだ満足していない。


 それが何よりも素晴らしい。

 11階層から15階層の間では全てのゴブリンたちは第3位階に達し、中には第4位階に進化を果たしたもの者も少しずつではあるが現れ始めている。また16階層から19階層のゴブリン達は未だに第5位階に進化を果たした者はいないが、それでも全てが第4位階にまで至っている。

 

「順調といったところか」


 20階層へと降りる。

 20階層も変わらずに殺し合いの最中。

 この階層のゴブリン達は相変わらずに第4位階のゴブリンたちのみだが、既にアント種が第3位階へと達している。単純に高位階になるにつれて進化は難しいものであるためおそらくゴブリン達が第5位階になる前アントたちが第4位階になる方が早いだろう。今は進化に苦戦をしているゴブリン達だが、アントたちがゴブリン達と同位階になりさえすれば、得られる経験も大きく異なり第5位階に至る近道にもなるだろう。


 ペースはともかく、順調にこ奴らもまた成長を進めている。

 1階層から20階層に至るまでを大まかに見回って、ある程度満足したためそのままボス部屋へと戻ろうと足を進めていく。

 これから階層を増やしていくにあたり、ゴブリンやオーガ、アントやホーネットたちのダンジョン魔物たちを設置していくことでより高い位階のダンジョン魔物たちも設置できるようになる。

 

「……」


 本音を言ってしまえばあと一種。鬼系や虫系の魔物以外でもダンジョンに設置したいという気持ちがある。

 これに深い意味はない。単純に我が冒険者という挑戦者側だして、系統が2種類しかいないことは少し退屈と感じてしまうからだ。

 一応ゴブノスケ曰く他の系統――確か他の系統は獣系、物質系、不死系、スピリット系、飛行系だったか――のダンジョン魔物も設置できるという話ではあったが、現実的でないことは理解している。


 ゴブリンやオーガの鬼系ではゴブノスケ。アントやホーネットの虫系にはアンコ。

 それぞれの王種がいるからこそダンジョン魔物たちにとって戦いやすい環境を作ることが出来ているからだ。

 他の系統の魔物が増えることでそれを理解できる魔物がいない限り逆に足かせになりかねない。


「こればかりは諦めるしかないだろうな」


 ため息を一つ落とす。

 20層毎に設定されており、現状ではボス部屋手前に設定されているフロアボスの部屋を通り、ボス部屋へと戻る。

 近い将来この問題が予想外の形で解決することになる。それを今の我はもちろん知る由もなかった。



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