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第38話「圧倒的DP不足」



「――我がやったことといえばそれぐらいだろう」

「……そ、それはまた随分と無茶苦茶なことをやったんだねぇ」


 我の言葉に、ゴブノスケが顔をひきつらせた。

 今、我とゴブノスケはダンジョンマスタールームにいるのだが、ダンジョン強化の前にゴブノスケが「どうやってダンジョンをあそこまで強化したの?」という問いを発したため正直に答えたのだが、ゴブノスケからすれば何かが無茶苦茶だったらしい。

 何が無茶苦茶かとは聞かない。我にとっては特に無茶苦茶なことをしたわけでもないため聞く必要がない。

 そんな我の反応は、そもそもゴブノスケも必要としていなかったらしく「よし、わかった!」と頷いた。


「とりあえずそれは僕には不可能だってことがわかった! じゃあ一般的なダンジョンマスターの僕は一般的なダンジョンマスターメニューを使ってダンジョンを強化しよっかな!」


 何やら一般的であることを強調しているのだが……ふむ、余程に我の話が予想外だったのだろうか。既にゴブノスケもゴブリンキングの身だ。おそらくは一般的なダンジョン魔物とは違うであろうに。


「まぁ、一応聞くとしようではないか」


 改めてゴブノスケに伝えると、ゴブノスケが頷いた。   






ダンジョン強化メニュー


※DP=ダンジョンポイント

※()=必要DP

■フロア強化


・ルーム作成(500DP)

・フロア作成(階層×1000DP)

・罠作成(一罠1000DP)

・通路作成(100DP)

・ルーム変更(100DP)

・ダンジョン環境作成(100,000DP)


■ダンジョン魔物生成


・基礎ダンジョン魔物(一律100DP)


 鬼系:グリーンゴブリン

 獣系:ブラックウルフ

 虫系:ビッグアント

 物質系:ゴーレム

 不死系:スケルトン

 スピリット系:ゴースト

 飛行系:ブラッククロウ



■生存強化


 ダンジョンコア作成(100万DP)

 生活環境改善(一律1000DP)


■その他

???(済)






「ざっと説明するとこんな感じかな? 一応これらの項目にも本当はもっと細かい注釈とかがあったりするんだけど、まずは大枠からでいいかなと思って」 


 ゴブノスケが我へと大雑把に、ダンジョンマスターメニューからのダンジョン強化メニューの項目を説明する。

 本当にざっとした話を聞いて、我は思ってしまう。

 アンコやオーガウォーリアーもこの部屋へと連れてきたかった、と。

 だが、残念なことにこのマスタールームにはダンジョンマスターであるゴブノスケとダンジョンボスである我しか入ることが出来ない制約があり、それならばボス部屋でやれば良いという我の提案も、ダンジョンマスターのメニューはマスタールームからでしか開くことはできないとう理由であえなく却下という形になった。

 ダンジョンの強化ぐらいはマスターとボスでやれということなのだろう。

 我とゴブノスケというお世辞にもあまり頭が良いとはいえないであろう組み合わせであることは若干どうなのかとも思ってしまうが、とはいえ、どうとでもなるだろうという気でもいるためそこまで大きな問題でもないが。


「ふむ」


 なんとなくダンジョンの強化に必要なダンジョンポイントを理解したのだが、その前に一つ聞きたいことが出来た


「我の封印を解いた項目は『その他』の項目になるのか?」

「あ、うん。そうなんだよね! 必要DPもわからなくてさ、毎日毎日100年間。僕の魔力を全て注いでやっと君の封印が解けたんだ……いやーあの時は藁にも縋る思いだったけど、今では君のおかげで僕らのダンジョン生活にも色んな夢が出来たよ」


 頭を下げて「本当にありがとう」と。

 我としては好奇心で聞いただけなのだが、本日で2度目となるゴブノスケからの感謝を受けてしまうこととなった。ここまで真摯に頭を下げられるとなると、どことなく気恥ずかしさを覚えてしまうためすぐに話題を戻す。


「それで、例の階層の制限とやらは突破できたのか?」

「そうそう聞いてよテンマ!」


 その問いになぜか興奮した様子のゴブノスケが我へと詰め寄らんばかりの勢いで口を開く。


「僕の位階が第6位階に上がったことで! ……なんと100階層まで作ることが出来るようになりました! ありがとう! そしておめでとう! 僕たち!」


 一人で拍手をして盛り上がるゴブノスケの気持ちは、共感はともかくなんとなく察することが出来た。150年ちかくダンジョンの限界を味わっていてはそういう気持ちにもなることだろう。


「……あれ、なんかテンマの目がものすごく生温い気がするんだけ――」

「――100階層か、それは素晴らしいな」

「う、うん」 


 やるではないか、なかなかの鋭さだったぞゴブノスケよ。だが、流石に素直な性格だ。すぐに我の言葉へと同意を重ねてくる。


「それで、そのダンジョンポイントは現在いくらあって、そしてどうやって得るものなのだ? ダンジョンを強化しようにもそれがなければ始まらんだろう」

「実はそれを見て僕もびっくりしたんだけど、今は42,800DP溜まってるね!」

「42,800?」

「うん。いやー僕が眠っている間にたくさん稼いだね」

「待て。42,800という数字はたくさんなのか?」


 確か新たな階層を作るにはその階層×1000DPと言っていなかったか?

 つまり11階層を作るためには11,000DPが必要と言うことになる。そこから部屋を――例えば10階層と同じく――10部屋作るとして10部屋×500DP。さらにその各部屋を通路ででつなげるとなると9通路×100DP。

 合計で16,900DPが必要と言うことになる。

 魔物も生成しなければいけないことを考えると今のDPでは11階層から12階層ぐらいまでしか作ることが出来ないということになる。いや、下手をすれば11階層までしか作れないのではないか。

 我の心配をよそにゴブノスケが「そうだよ」と少しばかり困ったような顔を浮かべる。


「ダンジョンポイントを得る方法は二つあってね」

「ほぅ?」

「一つはダンジョンマスターがダンジョンに自分の魔力を注ぐ。これはダンジョンマスターの位階によって得られるポイントが違ってくるんだ。日が変わると同時にダンジョンマスターの魔力もシステムの力で回復するから、日が変わる直前に魔力を空になるまで注ぐマスターがほとんどらしいよ? 僕もそうしてたし」


 なるほど。ダンジョンマスターにしか出来ないポイントを得る方法というわけだ。今まで眠っていたゴブノスケではこの方法は使うことが出来なかっただろう。つまり、DPを得る方法が一つ失われた状態で4万超のダンジョンポイントを得た……と、いうことでゴブノスケにとっての『たくさん』となるわけか。

 なるほど、合点がいった。と考えた我は少し早計だった。


「で、もう一つの方法なんだけど……こっちの理由が僕はさっき『たくさん』と言ったんだよね」

「なに?」

「もう一つの方法は、ダンジョンで侵入者を殺すこと。その侵入者の強さや侵入者の装備品とかをダンジョンが吸収してDPを得ることが出来るんだけど、これがちょっと問題でさ。不殺ダンジョンだとこの時に得られるダンジョンポイントが1/10になっちゃうんだ」


 ハハと誤魔化すような笑いのゴブノスケ。

 つまりここが不殺でないダンジョンならば40万越えのポイントを得ることが出来ていたというわけか。


「それならば確かに『たくさん』といった表現も理解できる」


 納得がいった。

 もしも40万あればこの段階で何階層まで作れることになるのかという気持ちにもなってしまうが、こればかりは不殺ダンジョンのデメリットといったところか。システムの問題であるならば仕方がないといえる。


「うん、って……あれ? 怒っていないの?」

「……怒る?」


 ゴブノスケの言葉に理解が及ばずに首を傾げる。


「え、だって本来なら40万超だよ? 本来に比べて全然減っちゃってるのに」

「本来も何もこのダンジョンは元々そういうダンジョンだろう。その分、貴様のゴブリンたちは順調に位階を上げている。一度生み出したダンジョン魔物が冒険者に殺されて、そこで新たなダンジョン魔物にダンジョンポイントを捧げるといった浪費がない分、それもある意味では仕方のないことではないか」


 世の中にただ単に甘い話など、そうそう転がってはない。

 このダンジョンは我がボスとなった時から不殺だった。他のダンジョンなど知らぬというのにどこに怒りを覚える場所があるのか。語尾が小さくなっていくゴブノスケの言葉を聞いてもやはり意味が分からなかったため、単純に思ったことを告げたのだがそれでゴブノスケは納得できたらしい。


「うん!」


 と、あからさまに笑顔でそのまま話を続けだした。


「ダンジョンポイントを得られる話で一つだけ朗報があるんだ! なんと、第6位階の僕が魔力を注ぐことで得られるダンジョンポイントは5万! 今日はまだ注いでないから合計で9万近くになる。結構ダンジョンの強化はしやすくなると思うよ!」

「それは確かに朗報だな」

「うんうん、一日5万って考えたら結構順調に強化できそうじゃない?」

「そうだな」


 つまり、ダンジョンポイントの確保は問題ないということ。

 これならば即座に、というわけにはいかないが徐々にダンジョンに手入れをしていくことは可能だろう。

 これからダンジョンをどう強化していくか。

 思考にふけるのだった。

 


読みにくいとのご指摘をいただいたので空白を作るようにしました。

既投稿文も少しずつ今回の形式へと変更していきます。

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[気になる点] 「ざっと説明するとこんな感じかな? 一応これらの項目にも本当はもっと細かい注釈とかがあったりするんだけど、まずは大枠からでいいかなと思っ」」  誤字かな
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