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忘れられない人 初めての精通

198X年 TOKYO都下

七月午後

日差しはブラインドの隙間からのみ入り

TVブラウン管の青みがかった電飾が

リヴィングをあたかも深海のように

居心地の良い空間に仕上げ

いい匂いがする

「霊猫香 香水よ」

「セントブピース ボンドナンバー 9 NY?」

覚えたての引用する

「違うけどそういったものよ

アンバーグリス&シベット」

僕TVの画面見続けてるふりする

馨さんの手が

僕の短パンのジッパー弄んでて

その内ちりちりと

音させて下ろしはじめたから

まだオナニー

も知らなかった

馨さんの指

ブリーフの合わせ目に

ゆっくり入ってきて

僕 

思わず

話を逸らす

「この人馨さんに似てる」

ブラウン管のTVCMのこと

アイスカフェ・オ・レに

氷を落とす指

かすかに涼しい音が

「知世さん?

あら光栄ね」

ブリーフを分ける指

止まらない

しなやかで

すばやく布の合わせ目に進み

横目で馨さんの表情うかがった

数瞬

いたずらっぽく笑う馨さんの顔

指は

前後にゆっくり動く

数瞬

馨さんの顔淡い光の中で

画集で見た

マグダラの乙女像のようで

和らいでいく光の中で

めくるめくように

青い草を引き抜いたような匂い

が部屋に

立ち込め

うぐ

知らずに僕

喉を鳴らしてしまったの

「いいよそのまま」

少女の声

が僕を励まし

律動が

絶え間なく思える律動が僕の

太腿の付け根

のさらに中心を貫き

僕は

遠い記憶の中で

柔らかい襁褓に包まれ

長い長い放尿をする

如く

はじめての精通

まだオナニーも知らなかったのに

「僕もう逝ってしまった

て知ってる?」

「このまま眠っていいよ」

僕の

顔の上に黒い紗のような幕が降りた

きっと

僕恥ずかしがると気遣って

馨さんハンケチ掛けてくれたらしい

咽せるような匂いに包まれた

霊猫香

光の中に溶けていくように

僕意識が遠退いていく中で

幼女のような

小さい手が

ぴたぴたと太腿の両側を這い回り

やがて濡れた温かい蠕動体が

僕の中心の

下から上

下から上

舐めあげる

ブリーフがいつの間にか

元のように僕を包み

なぜだか僕

目のはじから

涙が溢れ出て

ブラインドの隙間から

オレンジ色の縞模様が

フロアリングの隅に

僅かなひだまりを残しているのを

水の中の光のように見ていた

水に浮いたブラウン管

の青い光の中に

ぼんやりと

ママの笑顔が浮き沈みし

きれぎれに聞こえたTVの声

毒・・・

・・カレー

町内7人死亡・・

瞬きをして

見慣れたことばの

書かれたトレーナーを

目の端に捕らえた

と思った瞬間

ブラックアウトされたTV

室内はぼんやりとした

オレンジ色一色の中で

僕やっと馨さんの顔をうかがった

オレンジ色の影の塊は

紀代子姉ちゃんにも見えた

ママの妹の娘

僕のいとこで高校生

「馨さん? 

 今の ママ?

「似てる人 よその人よ」

「ママと同じ服着てたね」

「どこにでもあるブランドよ

 唯ちゃん いい子にして

 ママを待てるよね」

「馨さんと?」

「そう?

 そうね 

 時々こうやって

 でも

 一人でさみしくなったら

 水の中に頭まで浸かって

 目を開くの

 そしたらいつでも会えるよ」

だから僕

その夏

毎日プールに通うようになって

すっかり真っ黒に日焼けして

水泳が大得意になった

サキュバスは男の子の精を飲んで

永久にリインカネーションを繰り返す

馨さん?まだ居間にいるよ







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