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「そんな無茶なッ…」
叫び、絶句するスーツの男。
典型的なアジア人の顔付きで黒縁の眼鏡をかけている。
「そう驚かれても困る、我々はグアム基地にいるし、有事の時は駆け付けるさ」
同じくスーツの男がにやけた感じで言った。
典型的な白人の顔付きで恰幅がいい。
その目は笑ってない。
「思いやり予算がそのまま軍事費へスライドするだろ、儲けたじゃないか」
「思いやり予算があっても賄える訳がない。それに自衛隊は軍隊じゃない。軍事費ではない」
「なら軍隊にすることだ」
白人の顔から笑みが消える。
「我が合衆国はこれ以上アジアに金と力を使い続ける訳にはいかなくなったのだよ」
「しかし、我が国は、日本は一人で防衛する体制にない」
アジア人は声を荒げた。
「日本をそういう風に仕立てあげた責任の一端は貴国にもあるッ」
「オーケイ、それは認めよう。だが、考えてみたまえ。日本はその昔、合衆国とガッツリファイトをした国だぞ?」
「……とにかく、我が国は、そんな事は承服しかねる!」
「すぐにとはいわん、1年の猶予をやろう。その間にせいぜい頑張ることだ」
「くっ…」
この話し合いの後、すぐに米国広報より在日米軍の撤退が通達された。
そして1年後。
在日米軍は段階的にではあるが撤退を開始した。