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キモオ、襲われる

  




「オボロゲシャァッ ハァッハァ ォ゛ォ゛アエ ハァッハァッ ンゴッ」


「キモオくん大丈夫ですか?」


「こ・・・こんなの全然大丈夫ンゴ ゴォエエアロロロ」


「キャッ!」


キモオが振り返った拍子に吐しゃった破片が甲板に飛び散ってしまう。



「ゴ ゴメンゴェアロロロロロ」


「ちょっと待っててくださいね・・・。"ゲロピタール"!!」


ツキが呪文をとなえると手が緑色の光を帯び、その光はキモオの体に吸い込まれるように消えていった。


「ォロェア・・・? ファッ!?もう全然気持ち悪くないンゴ!一瞬で船酔いが治ってしまったンゴ!」


「さすがッスね!!回復系の呪文初めて見たッスよ!」


「酔い覚ましの魔法です。気分は良くなりましたか?」


「さささすがツキちゃんンゴ!!ほ ほ本当にありがとンゴ!!」


「いえ!キモオくんが喜んでくれて私も嬉しいです・・・///」


きっと前世のワイ聖人クラスの徳積んだんやろなあ・・・。



「せんちょーー まだ着かないんスかーーー?オレ腹減ったッスよーー」


「もうちょい辛抱だあんちゃん!!ここらへんは近海の主の縄張りなんだ!見つかったら転覆するぞ!」


「なーに言ってんスかせんちょー!そんなの船長のテクニックで一瞬で抜けれるんじゃないスかー?」


「あったりめーよ!主が出てきてもオレが華麗にかわしてやるよ!」


「フーー!さすがっスねせんちょー!」


い、いつの間にこのおっさんと仲良くなったンゴか。

このヤンキーのコミュ力が恐ろしいンゴ。


ハッ!!もしかしてこのアホを近海の主に食わせればワイとツキちゃんとのラブラブランデブーが始まるンゴ!?

ワイ天才ンゴ。



「近海の主??よ 余裕ンゴね!!ツキちゃんには指一本触れさせないンゴ!!」


またもや決まってしまったンゴ・・・。ツキちゃん今頃ビショビショやろなぁ。

脱水症状寸前ンゴか?

これであとはあのヤンキーを海に落とせば完璧ンゴね。



「うわぁあーー!!ゆ 勇者様!!ホントに出てきちまいましたよ!!」



船長が腰を抜かし、甲板に座り込み震える手で海を指さす。


ザバァァァアアア


凄まじい水しぶきとともに巨大なイカが海面に姿を見せた。


「だ、大王イカッス!!兄貴!こいつはかなりヤバいッスよ!!」


「ツ ツキちゃん!!ワワワイの後ろに隠れるンゴ!!」


キモオは必死の思いでそう叫ぶも、足は震えるばかりで、腰も抜けかけ、立っているのがやっとといったところだ。



そのとき、イカが出現した際の波が船を襲う。


「きゃ!!」


「ンゴ!?!?」


ツキ、キモオは船の急激な揺れにバランスを崩してしまう。


そのまま倒れこみ、キモオの上にツキがのしかかる体制になった。



い、痛いンゴ。

ん?ん??ん???んご????

この、ワイのうえにのってる細いシルエットは、、、まさか、、、、、


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――あっ。



キモオはツキが自分の上にのっているという事実を認識した、


次の瞬間



「プギャァ」


なぜかツキがキモオの顔面をぶん殴り、吹っ飛んだキモオはジャイロ回転しながら甲板に頭から突き刺さった。


ツキは今までのかわいらしい表情の面影すらも感じさせない、般若の面のような表情をしていた。

その口からは謎の黒い蒸気が、体からは禍々しいオーラが噴き出している。



「ア、アニキィィイイイイイイイイ!!!!」


ヤニカスが甲板に突き刺さったキモオの元へ駆け寄ると、キモオのズボンから何やらメモ用紙のようなものがはみ出ていた。

広げてみるとそこにはしっかりとした字でこう書かれていた。


「ん?なんッスかこれ?えっと、

『勇者様へ 

ツキは下心を持つ者に触れられるとバーサーカー状態になり、満足するまで周りを壊し続ける呪いにかかっております。くれぐれもツキに下心を持って触れないようにして下され。

PS .ツキは男です。玉も竿もしっかりとついてます。  ゴミカス』

って、ええええええええええ!!色々とまじッスか村長!!!!」



そんな状況を露ほども知らない大王イカはその間にも船へ近づき、

今にも船に襲い掛かろうとしていた。


謎の蒸気を発しているツキは、あたりをグルッと見回すと大王イカに目を付け、もの凄い勢いで飛び掛かった。

踏み込んだ甲板の板に亀裂が走る。


まさか人が自分に飛びかかってくるとは思っていなかった大王イカは、一瞬驚き動きを止めたものの、その巨大な腕を振り上げ、飛びかかるツキを海にたたき落とした。


はずだった。


たたき落としたつもりがその大木ほどの太さはあろう腕にツキはしがみついており、その腕をハグの体勢のまま握りちぎった。


「う˝ぉ˝ぉ˝おおおおおおお!!!」

「グャァァッァァアアア!!!」


某人造人間の暴走状態顔負けの雄叫びと、大王イカの悲鳴があたりに響き渡る。


勢いそのままにツキは近くの腕を三本ほど引きちぎり、

大王イカはたまらず海の中へ逃げようとするが、バーサーカーツキはそれを許しはしなかった。


大王イカの足の一本を持ちながら甲板に着地すると、船の上空に大王イカを引っ張り上げた。



船長は後日こう語る

『いやぁ、あの時は生きた心地がしなかったね。大王イカ?そんなのどうでもよくなってたね。

一本釣りされて上空を舞って涙目だった大王イカには同情すら覚えたよ。』



ツキは宙を舞った大王イカに向かって飛びかかると、その頭の先端を両手で持ち、

そのまま本体を真っ二つに引きちぎり、船を挟んで両側の海へそれぞれ投げ捨てた。


「ギュギャァァッァアアアア!!!!」



ブシャァァと大王イカだったものから飛び散る青い血を背景にツキは甲板に着地した。


ツキはくるりと周りを見渡すと、ヤニカスで視線が止まった。



ヤニカスは後日こう語る

『いやぁ、自分の死を確信するってああいうことをいうんスかね?生きてるの不思議だったッスよ。兄貴には余裕でしたって言ったッスけど、ほんとはバリバリのビシャビシャに漏らしたッス。

兄貴には内緒ッスよ。』



しかしツキはヤニカスへ飛びかかることなく、電池が切れたかのようにそのまま倒れこみ寝息を立て始めた。


「ーーーハッ!!俺の首はつながってるッスか!?!?

そうだ!!!ア、アニキ!!しっかりしてください!!」


ヤニカスが甲板に突き刺さるキモオを引っこ抜くと、心臓が止まっているとは思えないほどに、幸せそうな顔をしていた。

その顔の左側にはこぶしの跡がくっきりと残っていた。


「"エレク"!!」




  ◇   ◇   ◇







「あ、あああの、ここれはなにがあったンゴ?」


「ありがとうございやす。

お連れの方であんなに強い方がいらっしゃるなんて流石勇者様ですねー。えぇ。

もうすぐ着きやすよ。目的地は修道院でしたよね?

すぐ近くの岩場に止めるんでとっとと下りる準備をしてくだせえ。」


さっきから船長に何聞いてもこれしか言わなくなったンゴ。

もうこれでこのやり取り6回目ンゴ。

今までで一番RPGっぽいンゴね。


船長ってあんなに目が死んでたンゴかねぇ??

もっといきいきしていたような気がするンゴ・・・。



それにしても本当にワイが寝てる間になにがあったンゴかねぇ。


大王イカはいなくなってるし、甲板は青く汚れてるし、何より顔の左側がはれすぎてて目が開かないンゴ。

しかもめちゃくちゃ痛いンゴ。


それに何かとても幸せな気分だった気がするンけど、なにも思い出せないンゴ。


ツキちゃんも寝てるンゴ。


ヤニカスもなぜか海にずっと吐いてるンゴ。

船酔い?軟弱者ンゴね。



「着きやした。」


「あれ・・・。私いつの間に眠ってしまったんでしょうか?・・・え!もう着いたんですか!?」


「「ヘ、ヘイ!!!」」

「着きやした!!」

「お足元にお気を付けるッス!!」



マリンが起きたのを確認するや否や、瞬時に駆け寄り70度くらいの角度でお辞儀するヤニカスと船長。

その体は震えに震えていた。


「え、あ、ありがとうございます??」



困惑するツキとそれを眺めてより困惑するキモオ。


一行は修道院を目指し、船を下りる。






船長は一時間はそのお辞儀の姿勢のまま静止していたという。

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