キモオ、仲間ができる
ジーザス村に着くと村長や村人たちがキモオ達の帰りを今か今かと待ちわびていた。
「ー――帰ってきたぞぉ!!!娘達もみんな無事みたいだ!!」
「「「ワアアアアアアアアアアア!!!」」」
高台の見張りから大きな声が上がると、村人達もそれに続き歓喜の声をあげた。
なんかすごい笑顔の人がたくさんいるンゴ。。
村の歓声がキモオ達を包む。10年以上引きこもっていたキモオにとってもちろん初めての経験であり、なんともいえない快感と高揚感と恥ずかしさにキモオの顔が気持ち悪く歪んだ。
「勇者様!まさか本当に娘たちを助けてくださったとは!感謝してもしきれませんぞ!」
そんな感謝されると照れるンゴ・・・。
生まれて初めて人にこんな感謝されたンゴ・・・。
なんか悪くないンゴ。
「村長何言ってんスかー!兄貴にかかればこんなの余裕っスよ!」
「あの・・・。助けていただいてありがとうございました!私・・・本当に怖くて・・・。」
突然、キモオの後ろから女性らしき声が聞こえた。思わず顔が強張り、恐る恐る振り返った。
ファァァァァアアアアア!!!
塔に倒れていたワイのお嫁さんのツキ子たんや!!!
ファァァアア!!!
でゅふふふでゅふでゅでゅでゅでゅふふふふふふふふふふふふふふでゅふ
こ、これはゆ夢やなかったんか!!!
いや待て!!もちつけワイ(イケボ)。
こないだ興奮しすぎてレムりんを少しばかりびっくりさせてしまったばかりじゃあないか(イケボ)。
細かい気遣いできるワイまじイケメン。
「ぜ、ぜぜぜぜんぜんぜんんぜんワイはなななんあなななんもしてななななないいンゴゴゴゴゴ。」
決まった(イケボ)。
これは完全にツキ子たんもワイに惚れたンゴ。
完全に、落ち着いて余裕のあるイケメンの間合いを使いこなした会話だったンゴ。
ソワソワしすぎて側から見ると小刻みに震えているように見えるキモオは、
挙動不審の極みながらチラチラとツキ子へ視線を向ける。
あぁぁぁあああああ!!!!ぬわぁぁああああ!!ふぁおfa嗚呼アゝ!!!
かわいすぎるンゴ!!もう、なんて言うか、かわいすぎるンゴ!!!!!
可愛すぎて怒りの感情すら湧いてきたンゴ!!!
「そんな・・・。勇者様は謙虚なんですね・・・。あなたがいなかったら私はまだ塔で、何をされていたかも分からないというのに・・・。素敵な方ですね。」
澄み渡った純粋な眼差しでキモオを見つめる。
・・・・・・。もういつ死んでも構わないンゴ。いっそ幸せな今のまま殺してほしいンゴ。
キモオは大量の鼻血で足元は血の水溜りになっていることに最早気づくことすらない。
「私ツキコと申します。あの・・・。実はお願いがあって・・・。私も勇者様の旅に連れて行っていただけないでしょうか。私は治癒魔法が使えますので少しでもお役に立てると思います!
それに・・・勇者様ともっと一緒にいたい・・・。」
「「「・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッッッッ!!???」」」
村人達とキモオの驚きのあまりに時が止まった。
数秒の間を置いて、様々な感情の入り混じった声にならない声があたりに響いた。
「流石アニキ!!人たらしっすねー!!」
唯一平静を保っているヤニカスがキモオを茶化そうと肘でつつくと、キモオの体は硬直したまま後ろに倒れた。
「ア アニキ大丈夫っすか!?どうしたんすか!?」
・・・。
返事がない。
ただのしかばねのようだ。
「ア アニキぃぃぃいいいいいい!!」
ヤニカスはタバコに火をつけ、"エレク"を唱えた。
「――――――――ッッッハァ!!
な なにがあったンゴ? ワイはなんで倒れたんや?」
「ツキコちゃんが旅の仲間になってくれるらしいッスよ!」
ッッッファファファファファファーーーーーーー!!
ホホホホ ホンマなんか!?ああ あのツキ子たんがワイと一緒に!?
キモオの体は硬直――――以下略
ーーー×8
「お!!おぉぉ!!!!ぜ、ぜひそうしてもらいなさい。うん。わしもそれがいいと思うぞ。うん。
勇者様、この子はプリーストの職に就いてます。必ず!必ず!か!な!ら!ず!や勇者様のお役に立つと思うますぞ。だから、ほら」
村長はどこか過剰なくらいにツキコの同行を進めてくる。
「マジっスか!?プリーストなんてレアな職業!!超有能じゃないっスか!!一緒に来てもらいましょうよ兄貴!!!」
「bebeべべべべつに、ききき来たければこことこ断るり理由もないし、すー、すきすきにすれば良いンゴ。ンゴ。」
決まった。。。。
ワイ、クールすぎるやろ!!
これは絶対濡れたンゴ!!
「ありがとうございます!これからお世話になります!」
「ツキコなら間違いなく勇者様の旅のお役に立てるでしょう!!ツ ツキコのことをよろしくお願いしますぞ勇者様。」
ツキコは支度をし、キモオやヤニカスと一緒に村の出口へ。
村人たちは見送りに大勢で駆けつけてくれた。
「そういえば村長。ジャシン・ビーバーについて何か知らないッスか?
ヒリア王国の王様が村長なら何か知ってるかもって言ってたんスけど。」
「そうでしたか。すみませんが、ワシも詳しくは知らないのです。
ここから海を渡った北の大地にある修道院に行ってみてはいかがですか?
修道院のシスターなら何か知っているかもしれません。」
「お!それ良いんじゃないスか??兄貴その修道院行ってみましょうよ!」
「いいですね!そうしましょう!」
ワイしゃべってないのに行先決まっちゃったンゴ。
まあツキコたんと一緒ならどこでも行くンゴね!!でゅふふ。
「じゃあ私の知り合いの船乗りに頼んでおきましょう。
勇者様を乗せていくということなら快く引き受けてくれるでしょう。
勇者様は村のすぐ裏にある海岸に向かって下され。」
この村長、ゴミカスって名前の割に意外と便利ンゴね。
ワイが世界を救ったら、ワイとツキコたんの王国の便所掃除くらいには任命してやるンゴ。
村人たちに見送られ新しい仲間ツキコを加え、一行は村のすぐ裏の海岸を目指す。
「そういえば私、まだお二人のお名前をお伺いしてませんでした。教えていただけますか?」
「オレはヤニカスっス!」
「わ、わあわわわわわいいいはき、きききもおおンゴンゴゴ!!!」
「キ、キモオく ん??であってますか??
よろしくお願いしますね。キモオくん!」
ふぁぁぁぁぁぁ・・・・。この子と一緒にいたらワイの心臓が持たないンゴ。
生まれて初めて女の子にキモオくんって呼んでもらえたンゴ・・・。
激しい動悸で死にかけてるキモオをよそに、一行は魔物にも出会うことなく無事村の裏の海岸にたどり着いた。
そこには恰幅の良い、海の男という言葉がぴったりの男性が立っていた。
「おお!あんたが勇者様か!村長から話は聞いてるぜ!さあ、乗りな!」
一行は船に乗り込み次なる目的地を目指していく。
キモオ一行を見送った後、村人の男たちが笑顔でハイタッチしていた本当の理由をまだキモオたちは知らない。