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キモオ、魔物になる


「その時オレのダチが―――」



~ 5分後 ~



「マジパねくねえっスか!?―――」




~ 1時間後 ~



「だからその時言ってやったんスよ!―――」





~ さらに1時間後 ~




「ーーーいや、おまえTE〇GAかって!!!!」


「ゼヒュー、、、ゼヒュー、、、」


2ジ、カン、ぐらい、ワイ、一言も、しゃべって、ない、のに、会話が、成立、してるンゴ・・・。



それに、しても、息は、絶え絶えなのに、足は、全然、元気ンゴねえ。

やっぱりこのシュンソクのおかげンゴ。


SUPER WIDEソールを搭載した左右対称ソールモデル。特殊配合素材KMOをミッドソールに使用し、汎発性と衝撃吸収性アップしているだけあるンゴねえ。好評発売中ンゴ。



「あ、あれじゃないっスか??」


ヤニカスが指さす先には村らしき集落が。

そのそばには一際巨大な塔がそびえ立っている。


やっと村に着いたンゴ・・・。

いつから日本はこんなに田舎になったんか??

ん?なんか村の方が何か騒がしいンゴ。



「魔物が来たぞー!!女子供は身を隠せー!男は魔物を迎え撃つんだー!」


村の住人の男たちは村の真ん中に集結し、各々武器や、武器の代わりになりそうなものを携えている。



「兄貴!村に魔物が出たみたいっスよ!!兄貴の出番じゃないッスか!」



魔物!?!?いつの間にかそんなのが生息してるンゴ!?!?怖いンゴ!!

いやンゴ!会いたくないンゴ!!



「村に向かってくるぞ!!!」


村に向かってる!?ワイの近くにいるンゴ!?


キモオは思わず周りをキョロキョロと見渡す。



「チビデブの魔物とガリガリの魔物だ!」


ワイの周りにそんな奴はいないンゴ・・・??



しかし村人の視線は確実にこちら側を向いていいる。



「これ以上やられっぱなしでいられるかー!!いくぞぉぉお!!」


村の男衆たちは物凄い勢いでこちらに突進してきた。



「兄貴!!やばいっスよ!!オレら魔物と勘違いされてるっスよ!」


「ファ!?!?」


ワイを魔物ってのと勘違いしてるンゴか!?


「止まるっス!オレたちは魔物じゃないっス!!」


ヤニカスはキモオの前にでて、両手を広げ村人たちを制止する。



「ちょっと待て!!!!

ん・・・?魔物がしゃべってるぞ・・・。新種か・・・?」


先頭にいた村人の言葉で、村人たちの歩みは止まった。



「兄貴は魔王に呪いをかけられてこんな姿になっているっス!それを魔物だなんて失礼っスよ!兄貴は王様に頼まれてこの村に来たんスよ!」


こいつ意外と良いやつンゴね・・。呪いが解けてイケメンになったら女の一人でも紹介してやるンゴ。



「そんなことがあったなんて・・・。大変申し訳ございませんでした。村長のところへご案内いたします。」


「話せばわかる人たちで良かったスね兄貴!」


また知らない人に会わなきゃいけないンゴ・・・?

嫌ンゴ・・・。



「遠いところからようこそおいでくださいました。ワシは村長のゴミカスと申します。」


村長の親生まれたばかりの息子にどんな恨みがあったンゴ!?


「村長の名前ゴミカスって言うんスか!?オレヤニカスって言うんすよ!名前似てるっスね!ウェーイ!!」


「王様から話は聞いてるとは思いますが、、、」


村長はヤニカスのハイタッチを求める手に視線を向けることすらせず、経緯を語った。



「ここから西に向かったところにあるジーザス塔に、ロクシタンという危険で邪悪な魔人が住み着いてしまったのです。

そいつは夜な夜な仲間を集めて、大音量でEDMをかけて大騒ぎして、村の若い女を連れて行ってしまうんです。連れ去られた女たちは・・・。」


そんな、いい匂いがしそうなハンドクリーム屋みたいな名前のウェイ系の魔人絶対嫌ンゴ・・・。

会いたくないンゴ。いじめられたくないンゴ・・・。



「なんスかその魔人!メッチャ楽しそうスね!アガるわー!オレも混ざりたいっス!!

EDM!?ア・ビッチーとか流れたら最高ッスね!!」


「勇者様、どうかお願いできませんでしょうか。」


村長の無視のスキルが高いンゴ。もしかしたら村長からは、ヤニカスのことが見えてないかもしれないンゴねぇ。



ヤニカスに全てを任せ空気でありたいキモオだったが、村長はキモオの手を握り語り掛けてきたため、キモオが返答せざるを得なかった。



「い、いやワイにはそんなの「もちろんじゃないスか!!兄貴にかかればワンパンっスよ!!早速行きましょう兄貴!」


久しぶりに喋ったのにこのバカのせいで最後まで言えなかったンゴ・・・。



「ありがとうございます勇者様!昨晩また一人連れ去られてしまって・・・。

一刻も早く助けてあげてください!」


このクソじじいも、なんでこう都合のいい言葉だけ聞こえてるンゴ。



「よっしゃあ!じゃあ向かうっスよ!兄貴!」


ワイが行ったところで何もできないのにどうすればいいンゴ・・・。

コイツと魔人が戦い始めたら隙を見て逃げるンゴねえ。


村人たちに見送られキモオとヤニカスは村から西のジーザス塔に向かうこととなった。




     ◇     ◇     ◇






「ギギィーーーッ!!」




「あ、野生のゴブリンが飛び出してきたッス!」


トゥルルルトゥルルルトゥルルルトゥルルルトゥントゥントゥーントゥン



ゴッゴッゴッゴゴブリン!!


緑ンゴ!!汚いンゴ!!画面越しじゃないとこんなに怖いンゴか!!!

雑魚だと思ってたんゴ!!!


む、無理ンゴ!!!



キモオはドラゴンの時は距離があったため気づかなかった、リアルな皮膚、息遣いなどを間近で感じてしまい、腰が引ける。


「こんな雑魚、兄貴が出るまでもないッスよ!!オレに任せてください!」


トュクン・・・。

やだ・・・。カッコイインゴ・・・。


「おっと、その前に・・・。」


ヤニカスはタバコをくわえ、

懐から細長いろうそくほどの大きさの赤い石を取り出した。

ヤニカスが赤い石を握る力を強めるとその石は光を帯び、先端が発火する。

その火を使い口元の煙草に火をつけた。


「それどうなってるンゴ!?」


「兄貴、魔法石知らないんスか?これは魔力を流すだけで火をつけられるんスよ!」



魔法石!!なんそれ!?ワイの異世界の妄想がついに現実になったンゴか!?!?

ゴブリン出てきて、うすうす何か変だとは思ってたけど、もしかしてここは日本じゃないンゴか!?!?



「ゲッホ!!エェッホ!!ゲホゲホゲホゲホ!!ォ゛ォ゛ォ゛ェ゛ッ」


メチャクチャむせてるンゴ・・・。だったら吸わなきゃ良いンゴ・・・。



「―――あ゛ーーー。タバコいやっス・・・。くせえっス・・・。うっえぇぇ・・・。」


「だ だだ大丈夫ンゴか?」


「ウゥッンン゛。大丈夫っす。。。

言ってなかったっすけどオレもジャシン・ビーバーに呪いかけられてるんスよ・・・。

タバコ吸わないと魔法が使えなくなる呪いってヤツを・・・。

タバコ嫌いなのにこんな呪いをかけるなんてマジ最悪ッスよ・・・。

ガン萎えっスよねえ・・・。」


そんな呪いかける意味あるんか!?ただの嫌がらせやんけ!


でももし本当に魔法使えるなら、タバコ吸ってでも使ってみたいンゴねえ・・・。



「でも、ゲホッ――これで戦えるっスよ!

"ビュウ"!!」


ヤニカスが呪文を唱えると鋭い風が吹き抜け、ゴブリンの体がまるで目に見えない剣に切り裂かれたような傷を負った。


「ギイィ˝ィ˝ィ˝!!」


「あれまだ倒れないっスね。ゥオェ!ンッン!!

――じゃあ"エレク"!!」


ヤニカスのリーゼントの先からバチッという音がし、光ったと思ったら、ゴブリンに向かって蛇行しながら光は伸びていき、ゴブリンに直撃した。


「ギィゲェェエエエエ!!!」


ゴブリンは叫び、体からは煙が出ている。

地面にゴブリンが倒れたとほぼ同時に、ゴブリンの体は灰となり風に流されていく。

そこには親指の爪ほどの大きさの透明な石だけが残った。



ファー・・・。

これは本当にARじゃなくて、魔法みたいンゴ・・・。

呪いといい、王様といい、魔王といい薄々気付いてたけどワイは本当に異世界に来てしまったンゴねえ・・・。

ということはワイも魔法を使えるようになる日が来るんやろうか・・・。



「―――オロロロロロロロロォォォ ォ゛ォ゛ェ゛。アー・・・ペッ・・・。ォェ゛」


ゴブリンが消えると同時にヤニカスも地面に膝をつき、激しくおう吐した。



ファッ!?メッチャ吐くンゴ!!どうしたンゴ!?


「ヤニクラでメッチャ気持ち悪いッス・・・。タバコ体に合ってないんスよ・・・。

戦闘終わると状態異常になるんス・・・。」


ファンタジーなのに体質難儀過ぎて、さすがに同情せざるをえないンゴ。



「ッペェッ!!―――すんません!お待たせしましたっス!もうすぐ塔に着きますし、先を急ぎましょう!」


ヤニカスの体調がある程度回復すると二人は大きくそびえたつ塔を目指した。



「着いたっスね!!まだEDMは聞こえてこないっスけどヤツらは中にいるはずッス!早く娘たちを助けてあげましょう!!」



コイツやっぱり意外と優しくて良いヤツンゴねえ。


人を見た目で判断しちゃダメって、ママンも言ってたンゴ・・・。

ああ、ママンに会いたいんゴ。



「じゃあ兄貴!開けますよ!」



二人の身長より遥かに大きい扉を何とか押し開けると、目の前に信じられない光景が広がっていた。



「ど、どうなってるっスか!?」


「ふぁ??」


キモオとヤニカスも思わず動きが止まる。



全員倒れているのだ。


総勢7人程が一人を除いて全員血まみれの姿で。

全身をぴくぴくと痙攣けいれんさせている。


さらによく見るとロクシタンと思しき、ひと際派手な見た目の魔人の臀部(ケツ)の間にある排出口にはマイクが突き刺さっていた。



「おい!あんた!大丈夫ッスか!!何があったんスか!!」


ヤニカスが駆け寄った先では血塗れで倒れている派手な見た目の魔人達の中心で、一人安らかに眠っていた。

ヤニカスは口元に耳を当て呼吸を確認し、頬を軽くたたき呼びかける。



「―――ん。ん?へ?こ、ここは?」



ふぁ・・・。


ファァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアア!!??!!??


ファファファファファッファファファッファファファファッファアァァァッァァアアアア!!!!!!


リリリリリリリリリ、リ、リアル、ツキ子たん。。。。


ツツッツツツキ子たんがワッワワワイの目の前で呼吸して、声を出してるンゴ。。。



ヤニカスの呼びかけで目を覚ました人物は、キモオが他の何よりも愛してやまなかったツキ子というアニメのキャラクターに瓜二つの見た目をしていたのだ。




異世界ぱないンゴ。ビバ異世界。ラブ異世界。


拝啓


敬愛なるママンへ

異世界でワイの嫁が見つかりました。

地球には帰りません。


敬具



背が低く、少し癖のある肩までの長さのつややかな黒髪。

触れれば折れてしまいそうなほっそりとした体系に似つかわしくない豊満な胸囲。

くりくりの目は少したれ目で弱々しい泣きそうな表情に見える。

シルクのような透き通った肌はシワの一つもない。

キモオの興奮は止まらない。


「私はなんでここに、、。ッロクシタン!!」


「安心するッスよ。なんでかわからないッスけど全員ひん死ッスから。

むしろなんでかわからないッスか?」


「―――ごめんなさい・・・。私、なにも思い出せません・・・。

昨日ここへ無理やり連れてこられて、お酒を飲まされそうになったまでしか・・・。」


「ってことは・・。

―――こんな芸当ができるのは、さては兄貴ッスね!!さすがッス!誰にも気づかれずに!リスペクトっす卍」


「へ?い、いやワイは「ありがとうございます!!あなたのおかげで助かりました!」


キモオの目の前までいき、顔がぶつかりそうな距離でお礼を言った。

キモオは興奮のあまりにプルプルと小刻みに震えながら、鼻からは大量の出血をしている。


「!?ア、アニキ!?大丈夫ッスか!?」



「ワイの生涯に一片の悔いなし」


キモオはその短くダルダルの脂肪に包まれた腕を上空に掲げ、生命活動を停止した。



「ア、アニキィィィイイイイイイ!!!!」


ヤニカスは急いで煙草に火をつけ、"エレク"の呪文を唱える。

リーゼントからの放電をキモオの左胸目がけて射出し、キモオの復活を試みていた。



そんな茶番劇が行われていることを知らないマリンは、塔の奥で眠っていた女性たちを起こしていた。


女性たちはヤニカスとキモオの見た目から魔物と間違えるテンプレのやり取りを繰り広げ、ようやく一行は村を目指し、帰路についた。








「―――オロロロロロロロロォォォ ォ゛ォ゛ェ゛。」

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