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キモオ、旅に出る

キモオが目を覚ますと、そこには見覚えのない天井があった。


突然のことで頭は全くついてこないし、どうしてこんな状況になっているのかも把握できていない。

しかしキモオにはこんな状況だからこそ、命に替えてでもなさねばならぬことがあったのだ。




第2章 見知らぬ、天井






「――――――知らない天井だ。」



ファーーーー!!!!!!

ワイが好きなアニメの「世紀末ガングリオン」の名台詞を流れるように言ってしまったんゴ!!



「おお、目覚めたか。」


醜い老人が寝ているキモオを覗き込むようにしてこっちを見ている。



「―――ファッ!? おおお おっさん誰なんやで!? 」


知らない人怖いンゴ・・・。

しかも尋常じゃなくブサイクやで。ブサイク可哀想ンゴ。ワイには理解できないンゴ。



「ワシはこのヒリア王国の王ヒリア17世じゃ。」


王様!?何を言ってるンゴ、、??



王を名乗る老人は、大きい顔にギョロっとした目。潰れた鼻に飛び出た前歯。肌の色はまるでドブのような色をしていた。

しかし、彼の服装は金色の王冠に赤色のマント。マントと王冠にはところどころに宝飾が施してある、まさにRPGの王様の具現化といっても過言ではないような装いをしている。

その装いがこの人物が王と名乗ることへの説得力を強めていた。



「まずは礼を言わねばな。先程はドラゴンを討伐してくれたこと、この国の民を代表して深く感謝を申し上げる。」


ファッ!?!??

ワイがあのドラゴン倒したことになってるンゴ??どうなってるんや・・・。

あれは映画の撮影やなかったんか??もしかしてドッキリなんか??



「い、いや、そそそれはワイやなくて「その方がドラゴンを魔法一発でぶっ倒したんスよ!!」


キモオは声がした方に顔を向けると、マチ針体型の昭和のヤンキーのような男がドヤ顔で立っている。



なんや・・・。あの頭悪そうなDQNは・・・。

ワイが一番嫌いな人種やんけ。絶対関わらんとこ。



「いやーすごかったんスよ!恐ろしく速い魔法オレでなきゃ見逃しちゃうっスね!

あんなすごい魔法初めて見たっスよ!」


このDQN何言ってるンゴ??ワイが魔法??

あの時は確か、、ドラクエの呪文を声に出し、、た??

もしかしてそれが理由で勘違いされたンゴ??



「あ、申し遅れたっス。自分ヤニカスって言うっス!」


ヤニカスwwww

見た目通りの名前すぎて、大草原不可避wwwww



「君が彼を城まで運んでくれのかね。」


「そうっス!ドラゴンを魔法でぶっ倒した後、なぜか股間から血を流してお兄さんもぶっ倒れたんで城まで運んできたっス!」


ファッ!?股間から血!?

だったらなんで病院じゃなくて城に運んで来たンゴ!?脳みそぶっ壊れとるんか!?

―――というか、なんでワイの股間から血が??



「本当に危ないところだった。」


王様は神妙な面持ちで話し始めた。


「勇者殿の陰嚢(タマタマ)は見るも無残にぐちゃぐちゃだったんじゃ。あのままでは命の危険もあった程じゃ。

ワシの娘、王女レムリーンが治癒魔法使うことができなければ今頃勇者殿は死んでいたじゃろう。」


ファッ!? そんなことになってたんかワイは!?

たしか、、あの時、、ドラゴンが爆発したと思ったら、、、

ワイのこと好きすぎるヤンデレの子がワイのタマタマをさわさわしてきたところまで覚えてるンゴ・・・。


そのあとはたしか・・・


『ぱきゅっ』


キモオはなぜか聞いた記憶のない何かがつぶれる音が頭に響いた。

同時になぜか自身の下腹部への強烈な痛みを思い出し、思わず顔をしかめ股間部を抑える。



思い出そうとするとワイのワイ達が痛むンゴ・・・。



「おいレムリーン!勇者殿が目を覚ましたぞ!ご挨拶しなさい。」


王様は王女に声を掛けた。


少し間を空けて大きな赤い垂れ幕の向こうから王女が出てくる。


「勇者様、ご無事で何よりです。王女のレムリーンと申します。」


そこにはキモオの好きなアニメのキャラの1人、レムりんそっくりな巨乳の美女が立っていた。



その瞬間キモオに、ここはどこなのか?なぜキン○マが潰れていたのか?などを思考する余裕はなくなっていた。



・・・


・・・・・・・・


・・・レレれレムレムrむえrめrめうれうjむれめうr!?!?!?!?!


なななんなんななん 何が起きたンゴ!?!?


これは夢なんか・・・。



数秒フリーズしたと思ったら、突然自身の右頬を思いっきりつねるキモオ。


長年息子を愛でる運動をこなしてきたキモオの握る力は尋常ではなく、その頬は千切れんばかりに血を流していた。



・・・痛いのか痛くないのかすらわからないンゴ。


きっとこれは夢なんや。夢なら楽しまなきゃもったいないンゴね。


夢でもレムりんが画面から出てきてワイに話しかけてくれるンゴ!!嬉しいンゴ!!



「rreレレレレ レムりんんんんん!!!!」


普段のキモオからは想像もつかないような速度で、レムリーンに抱きつくために飛びかかるキモオ。

興奮の度合いが常軌を逸して、その体からは謎の蒸気が出ている。


「ヒッッ」


それをまるで飛んできたG○KIBURIから逃げるかのように、必死の思いでかわすレムリーン。



ズンッッ


その勢いのままに壁に激突し、鼻からはとんでもない量の鼻血が出ているがキモオは気にかける素振りすらない。



ハァハァハァハァ・・・ウッッァ!


鼻と頬から大量に血を流しながらキモオは、この世のものとは思えないほど気色悪い目線を彼女に向けた。



「ーーッッッ」


王女は声にならない悲鳴を上げた。


「そ、そそれでは私はこれで失礼いたしますわ。」


『絶対に絶対にあの豚を私に近づけないで。』


レムリーンは近くの使用人に小声で命令をし、足早に去っていった。



大量に出血したおかげか、レムリーンが視界から外れたおかげか、少し間を置いてキモオから溢れ出ていた謎の蒸気は治まった。



「・・・すみませんな勇者殿。あの子は少し恥ずかしがり屋なところがあってな。

ところで、失礼ですが勇者殿、あなたはどこでその呪いを掛けられたのですかな。」


・・・今王様呪いって言ったンゴ??

なんのことや?ワイは呪いかけられてるんか?

それがあの股間の痛みの正体なんか!?



「実はワシも魔王に呪いを掛けられていてな。魔王の居場所を探っているんじゃよ。」



ま、魔王??

そんなやつがいるンゴか?

ワイが小学校で腐王(フオウ)と呼ばれていたみたいなもんなんやろうか?

なんでワイがそんな奴に呪われるほど恨まれてるんやろうか?



「わ、ワイは魔王って奴に呪いなんかかけられたんか!?」


そう問いかけながらも、思わず自身で股間に手を当て、未だ出番のない新品の息子の無事を確認する。



「なんだ気付いておらんかったのか。

君のその醜い姿は明らかに魔王の呪いだ。背が低く、太っていて何度も顔を殴られたようなボコボコの顔は魔王の呪いの特徴だ。」



そういって王様の隣にいた兵士が、大きな鏡をキモオに向ける。



・・・・ファ!?!?!?

生まれた時からワイはこの顔なんやが、これはバカにされてるんか!?!?


・・・いや!!待てよ・・・。

言われてみれば前に鏡を見た時はもう少しスマートだった気がするンゴ・・・。



キモオは鏡の前でポーズを決める。



確かにもっとイケメンだった気がするんゴ・・・。

目も二重だったような・・・。

肌ももっと綺麗だったような・・・。


もしかしてワイが知らん間に呪いを掛けられたんか・・・?

否!それしか考えられないンゴ!!

ワイの志田マサキばりのイケフェイスを返すンゴ!!!


「ワ、ワイの呪いはどうや「どうやったら呪いは解けるんスか!!ずっとこの姿なんてあまりにも可哀想ッスよ!」



こいつは毎回かぶせてくるのはわざとなんか!?



「魔王、ジャシン・ビーバーを倒せば呪いは解けるだろう。ヤツは自分より容姿が優れている者に呪いをかけて、自分が一番美しくないと気が済まないと言い伝えられておる。この国には多くの被害者がいるのだ。」



魔王ジャシン=ビーバー・・・。

ワイの腐王と違って、なんでかリア充の香りがぷんぷんするンゴ。

一瞬同調してやったのに、死んで欲しいンゴ。



「兄貴!!オレも付いて行くんで、魔王を一緒に倒しに行きやしょう!」

「行かないンゴ!!!!!!」


キモオの初めて聞く大きくハッキリとした声に一同は面食らった。


「い 良いのですか勇者様!?あなたはずっとその醜い姿で生きていくことになるんですぞ!?」


「うううううるさいンゴ!ワイはそそそそんな魔王なんて倒せるわけないンゴ!!

そそryあイケメンにはもど戻りたいとは思うけどワワ ワイがドラゴンを倒したんだったらそのお礼としてワ ワイを客としてもてなすのが礼儀なんやないかとお お 思うんやが!?そそ そこんんとこ ししっかりして欲しいんやが!?!?」


とんでもない早口ツバをまき散らしながらでまくし立てるキモオ。



「「・・・・・」」


王様は驚き困惑していた。

ヤニカスはキモオがなにを言っているのかよく聞こえなかったため、キメ顔で黙っていた。

俯き悩んだ様子だった王様は、何か思いついた表情で顔をあげた。


「・・・そうだ!レムリーン!ちょっとこっちに来なさい!」


王様は一度引っ込んだレムリーンを近くに呼ぶと耳打ちをした。


『私嫌よ。さっきどうしてもって言うから一回治療してあげたじゃない。』

『まだ何も言ってないではないか!』

『・・じゃあ何よ』

『勇者様はきっとお前のことを好いておられる。お前からもお願いしてくれ。そっと手でも握ればいけるはずじゃ』

『ハァ!?本気で言ってるの!?嫌よ!さっきの見たでしょ!?こんな見た目も中身も気持ち悪すぎる人!実の娘になんてこと頼むの!!』

『わしだってこんなお願いはしたくない!でも、呪いを掛けられた人々を救うには勇者様の力が必要なんじゃ!』

『それでも絶対嫌!!』

『じゃあ次のお小遣い2倍でどうじゃ?』

『そんなことごときじゃ交渉にすらならないわよ!!』

『では5倍!!あとお前が欲しい物なんでも買ってやる!!』

『5倍・・・。』

『頼むレムリーン!ワシはこの呪いを解きたいんじゃ!父を助けると思って!ね!!この通り!!!』

『・・・結局自分じゃない。。わかったわ。じゃあ今月から3ヶ月分のお小遣い全部5倍ね、あとずっと禁止してたジャシン=ビーバー様の写真集も買ってね。』

『そ、それはさすがに『約束したからね。』



レムリーンはマジシャン顔負けの早技で手袋の上からさらに二枚手袋を重ね、大きく息を吸い込んでからキモオに駆け寄り優しく手を握った。


「ユウシャサマ オネガイシマス、ワタシヲ タスケルトオモッテ」


キモオのそばで呼吸をしたくないため息を止めている王女のセリフはかなり早口で、棒読みもいいとこだった。

しかも言い終わった途端キモオのそばを飛び退くように離れた。


しかし好きなキャラそっくりの女性が自分の目の前にいて、話しかけてくれて、自分の手を握ってくれているという状況に脳味噌の情報処理能力の300%を使ってしまっているキモオにそんな些細なことを気にする余裕は微塵もない。



レレレレレレレレレムりんがワワワワワイの手を握って、る・・・・・・この手でワイの息子をなでなでしてあげたらつまる話はレムりんがワイの息子をということになりましてそれはつまる話はジツセというやつでしてということはレムリンとワイはケッコンということになりましてツマルところはワワワイはワイはムスコよりはムスメがホしいわけでしてイヤでもレムリンとのコドモだったらドッチでもイイワケでありましてツマルハナシは・・・・。

ッッッッッ!!!ウッッッッッ!!!ヲッッッッッツツツ!!!ツォォォォォ!!!レムリンアイシテルッッ!!!!


「ワワワワイに任せるンゴぉぉぉおおおおオオ!!

魔王だろうが!!!!邪神だろうが!!!!ワワ、ワイがレムリンのために!!倒してやるンゴォォオオオオ!!!!」


「アリガトウゴザイマス。ユウシャサマ」



レムリーンは隣にいる王様と目配せをした後、その場から離れ使用人に重ねてつけた手袋を全て投げ渡した。


『その手袋捨てといて。使えないから。ボソッ』


レムリーンは小声で使用人に命令した。



「さすがっすアニキ!!」


「ありがとう勇者殿。早速これからジーザス村へ向かってくれ。

そこの村長ならばジャシン=ビーバーの情報も知っているやもしれん。

それに最近その村の近くのジーザス像の塔に危険な魔物が住み着いてしまったようなのだ。ついでに倒してきて欲しいのだ。」



「マモノでもなんでもレムりんのダンナのワイにまか「早速いきやす!!兄貴はやくするッスよ。」


王様から村への地図を受け取ったヤニカスはキモオの腕をつかみ、歩き出した。


ろくに準備もしないまま彼らの旅が始まってしまった。








『夏場の城のゴミ捨て場よりひどい臭いだったわねアイツ。』


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