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未来の後悔  作者: おいなり
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出会い

初めまして、おいなりと申します。

処女作となる本作品は素人故、文法等がめちゃくちゃです。

それでも気になった方は読んでいってください。

 よく晴れた四月の青い空が広がっている。時折吹く強い風が髪を乱し、青山未来は不快な気持ちになった。こんな気持ちになるのも最後かと思い、未来はその気持ちが名残惜しくなった。これから先に果たして【不快】という気持ちと巡り合うのだろうか、そもそも【感情】というものが芽生えるのかさえ分からない。だがそんな事はもう構わない。生きていく事に疲れたんだ。

 駅のホームは高齢者と仕事中であろうサラリーマンがちらほら見えるだけで、目立って人が多いという訳ではない。迷惑をかける人が少なくて助かる、と安堵した。ラッシュ時では人が多く、動くことさえ困難になってしまうからだ。

 「これならいける」

 未来は小さく呟いた。それは単なる独り言ではなく、自分に言い聞かせる目的もあった。何度も試みようとしたが、いざ実行しようとすると弱腰になって逃げていた自分にである。

 電車が進入してくるホームの端へと未来はうつむいて歩く。ベンチに仲良く腰掛ける老夫婦を横目で見かけ、この老夫婦は幸せな人生を歩んできたんだろう、羨ましいな。二人を見てそう思った未来は足を早めた。まるで自分にはもう関係のない世界だと吐き捨てるように。

 ホームの端に着き、時計に目をやった。電車が来るまであと十分もある。

 「くそ、早かったか」

 未来は舌打ち交じりに呟いた。時間に余裕があると決心したのにまた逃げてしまう。もう、うんざりなんだこんな自分にも、世界にも。

 ポケットから携帯を取り出し、連絡が来ていないか確認する。相変わらず連絡が来ていないことに未来はふっ、とため息交じりの微笑を漏らす。慣れたもんさ毎日のことだから、連絡が来ているなら今頃自殺しようなんて思うはずがない。この世界に俺を必要としてくれる人なんかいないんだ。そう思うと携帯をポケットではなく鞄の中に押し込んだ。

 耳につけたイヤホンからはビートルズが流れ続けている。未来は最後の贅沢として死ぬ直前まで好きな音楽を聴いていたいと思っていた。音楽に対する冒とくだと責める人もいるだろうが、今の未来にそんな言葉などどうでもよかった。まるで、集合時間より早く来なければならないと教師が生徒に言い聞かせる事と同じようにどうでもいいことだった。

 そんなことを考えているうちに電車が来るまで五分を切っていた。

 「大丈夫、後悔なんてない」

 未来は自分を奮い立たせるようにまた呟く。今の自分なら躊躇ためらうことはない。やり残した事なんてないんだ、心置きなく飛び込める。そう言い聞かせ黄色い点字ブロックの方へと一歩進んだ。

 あと五分、たったの五分でこの世界からおさらばできる。未来は高揚感にも似た興奮を感じた。何度も試みたが弱腰になって逃げていたあの頃の自分はもういない、そう思うだけで気持ちが自然と高ぶってきた。

 線路へと一歩踏み出そうとしたその時であった。足元を杖で小突かれたような感覚がし、何事かとその方向へ振り向いた途端に自分と同じ大きさの何かがぶつかってきた。電車ではない。もっと軽い、まるで大きなサボテンのようなものが未来にぶつかった。

 「うわっ」

 未来は情けない声をあげてこけた。ぶつかった感触から大きなサボテンではなく、人であると咄嗟に分かった。

 「前見て歩けよ!くそっ」

 未来は頭に血が上り、その人物に怒りを投げかけた。こんな時でも自分は恵まれていないのかと泣きたくなるような感情を押し殺して、怒りの感情のみをその人物にぶつけた。

 「すみません、点字ブロック上にいらっしゃったもので……」

 頭上から謝罪の声が降ってきた。そしてその声の主が男性であることに未来は気が付いた。落ち着きのある低い声、どこか懐かしい感覚にさえなってしまう。そう、まるで父親のような声だ。

 その男性のことがなぜか気になり、未来は興味本位で顔を上げた。サングラスをかけ瞳こそ見えないものの、その雰囲気から物腰が柔らかい男性であることは容易に想像することができた。凛とした姿勢立っており、歳は四十代であろうか地肌に張りがありしわも少ない。髪もしっかりと整えられており、実年齢が三十代であってもなんら不思議ではない。まるで英国紳士を体現化したような佇まいだ。

 不意に男性の手に目をやった。左手には大きな手提げ袋がパンパンになっており、少しはみ出している中は飲料水が数本と食料品がちらりと見えた。右手には視覚障がい者用の杖を持っていた。足元を小突かれた感覚はこれだったのかと未来は納得した。

「お怪我はないですか?」

 男性がこけた未来にであろう差し出した謝罪の声は、遥か頭上の方向に抜けていった。

 「大丈夫です、こけただけなので」

 未来はイヤホンを外し、不機嫌な声で男性の謝罪を押しのけるように立ち上がった。

 「申し訳ないです。目が見えないもので、たまに人とぶつかってしまうのです。」

 男性は慣れているかのような声で、再び謝罪した。

 「気にしなくて大丈夫ですから」

 そう返答した未来は不思議に思った。目の見えない、言わば視覚障がい者の人が重たい荷物を抱えて電車に乗ろうという事はあまりにも無謀な事のように思えたからだ。

 「本当に申し訳ないです、それでは」

 男性は未来に一礼すると再び杖を突きながら、どことなく不安定な足取りで歩いて行った。そんな後姿を未来は見過ごせなかった。せめて死ぬ前に良いことを一つでもやっておこう、そんな偽善の心が未来には宿ったのだ。未来は男性のもとに駆け寄り、

 「荷物持ちましょうか?かなり重たそうですし」

 まるで台本を読んでいるかのように聞こえる棒読みな声で未来は言った。

 「えっ、よろしいのですか?」

 まさか助けてくれるとは思ってもいなかったのだろう、男性の声は驚いていた。

 「もちろんです、大変でしょうから手伝いますよ」

 未来はまたも棒読みだった。我ながら酷いと思ってしまった。

 「本当に助かります、お願いします」

 今度は喜びの声で未来の提案に男性は応えた。その声に未来は、なぜ今までこの男性は声を掛けられなかったんだろうかと思った。確かに見た目こそ若いものの、杖を持っている時点でどんな人なのか分かることだ。周囲の人間がいかに無関心なのかと未来は再び嫌になった。まるで手に持った男性の荷物のように酷く重く感じた。

 「電車来ましたね」

 男性は未来に告げた。ふと気が付くと電車が到着し、ドアが開いていた。

 「また逃げちまった」

 未来は男性にも聞こえないような小さな声で呟いた。それは落胆ではなく、後悔だった。また死ねなかった、何度も死から逃げていた自分に対しての後悔だ。

 未来はこの男性と出会ったことにも後悔していた。あの時見過ごしていれば今頃……そう思うと後悔してもしきれなかった。

 しかし、この男性との出会いで人生が大きく変わっていく事に、未来はまだ気づいていなかった。

 最後まで読んでいただきありがとうございます、作者のおいなりと申します。初めて書く、言わば処女作となるこの作品は感動ものとなっております。私事で申し訳ないのですが、仕事の都合で更新頻度がかなり遅くなってしまうかと思いますが、気長に待っていただけると幸いです。

 この作品を読んで気になること、感想などありましたら気軽にコメントをお願いいたします。

 それでは次回の更新でお会いいたしましょう。

                                         おいなり


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