アラフォー、うっかり穴に落ちる
初めての小説挑戦です。
日々の息抜きに少しづつ書いていきたいと思います。
無理せず等身大で頑張ります。
私は 三村 薫俗に言うところのアラフォー女性
某住宅リフォーム会社に勤務。
三十代半ばにこの小さな地域密着型の会社にお世話になって5年、前の会社はそれなりに大きな住宅会社だったけど、ノルマが厳しく、売れている人が正義みたいな風潮があり、ブラックではないけど、常に空気がピリピリしている。
私は当時営業アシスタントをしていたけど、30を越えた辺りから新入社員の担当やヤバいトラブル案件が増えてきた。
そりゃ、出来る営業はアシスタント能力は最低限の若い子と動向したがるし、トラブルになれば、社歴の長い私に振ってくる。
同期や先輩はきづけば結婚や転職で姿を消していた。
私は、愚痴りつつも仕事を続けていた。図面をみて、どんな生活をするのか妄想するのが好きだった。
でも、ある日
「ミーちゃん、トラブルで残業したんだってぇ。」
「仕事なんてテキトーにやっていればいいのにね」
「そうそう。トラブったらかおるさんに投げればいーじゃん」
「昨日はかおるさん、マミさんのゲキヤバトラブル丸投げされてたからさすがに頼めなくて」
「えー、だって、マミはデートだったんだもん!」
トイレから笑い声と共に聞こえた後輩アシスタントたちの会話。
あぁ、そうか。そうだった。私も若い頃はトラブルは先輩にフォローしてもらっていた。テキトーに仕事とは思わなかったけど、営業職に就いて全て自分の責任で!と思ったこともなかった。あの子達と大差ない。でも、今の私は?仕事は好き。でもトキメキはない。これからずっとアシスタント?
で、一念発起。やってみたい仕事を書き出し就活。やっと郊外のリフォーム店に就職が決まった。結婚したいと思ったこともあったけど、たまたまタイミングが合わなかったり色々発覚したりして、未だに独身。
今の会社は少人数で現場調査から設計、提案、現場管理、引き渡しまで基本一人で担当。もちろん職人さんとの打ち合わせも全て行う。大変だけどやりがいはある。
知らなかったこと、学ぶことは山積み、現場のイロハを職人さんから叩き込まれ、色々な人と出会い、その人の生活に合った家に改修していく楽しさと、大変さに向き合う毎日を送っています。
そんなこんなで、今日も元気に現場へ!
築150年の立派な和風住宅。
ご高齢夫妻の為にお風呂を改装!
数十年前に五右衛門風呂から改装したという浴室はタイルとステンレスの据え置きの風呂桶。
「前回の改装の時は小僧だった」というおじさんの話を聞きながらお風呂場の寸法を測っていく。
「そういやぁ、床下に穴があってなぁ。どんだけ深いかわからなかったんだよなぁ」
「お風呂場ですか?」
「いやぁ、今の洗面のところだなぁ」
ピカピカの頭をなでながらおじいさんがつぶやく。
「時代を考えると・・・防空壕ですか?」
「防空壕は土間脇のとこだったから、違うなぁ。紐を下しても、石を投げてもわからなかったんじゃ」
床下は未知の空間。見たことのないサイズの虫や昔の新聞等も出てくる。でも穴は経験がないなぁ。
構造上問題がないとは言えないし、今回は洗面所の床の貼り替えもあるので許可を得て床をはがさせてもらう。といっても私には無理なので現場に同行してもらっていた大工さんに床下点検口を作ってもらう。
「おおっと、やっぱり古い家は床下が高いなぁ」
「さすがにすごいですね。土台が栗の木ですよ。今じゃこんな立派なの難しいですね・・・」
二人で床下を探索する・・・今はほぼ床下にはコンクリートを打ってあるけど、昔は土だもんね。ひんやりした独特の空気が漂っている。
おじいさんの言う、洗面所床下の一角に昔の新聞が一枚。石で重しをされているところをみているとこの下かしら?
「1950年の2月だって。もう70年近く前だね第一回さっぽろ雪まつりって書いてあるなぁ。」
「とりあえずどけてみるか」
そおっと石をどけてみる。直径50センチくらいの大きな穴が出てくる。
「手元灯でのぞいてみます?」
曲がりくねったように見える穴は、思ったより深くない様子。
「なんでしょうね?」
「周囲の地盤が問題無さそうなら工事の時にちゃんとしらべるか?」
「そうですねぇ、じゃあおじいさんへ説明してきますね。」
と、四つん這いで現場から出ようとした所で…脇に避けた新聞を手で踏んでしまった。つるんと、穴に落ちる…
ガンガンとどこかに当たるかと思いきや何故だか滑り台を頭から滑るように、下へ下へと落ちていく。
「ぎゃーーー!」
どれくらい落ちたか、ぼよよよーんと大きなクッションの様な所へ顔面から着地。
うぉお。某国民的アニメの巨大な森の精霊か?私は小さなツインテールの女の子か?などと思っていると、そこはソファーの上、横には優雅な様子でお茶を飲んでいたと思われる青年。
盛大にお茶を噴き出しており、目の前にいる執事と思われる初老の男性からお茶がしたたっていた。
…ていうか、ここどこ?