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僕は転生に憧れを抱いた⑨

 翌日の朝、 ぼやけた視界が窓の外を捉えたときには、雪がちらついていた。

 俺はいつもならけたたましい目覚ましを止めてまでも寝ようとするが、今日だけは違っていた。


 それに、いつもなら妹と葉月が来るまでは布団に包まっているのに、すっかり起きて身支度まで済ませている始末である。

 今日は人生が変わるかもしれない、そう思うと昨日も寝付けず目が冴えっぱなしだったのである。

 幸い、知らぬ間に寝込んでいたが頭は常に覚醒し続けている。


 「にいにー!!!!おっはよぉおおお!!」

 いつものように、扉を壊すくらいの勢いで妹は俺の部屋に突撃してくる。

 

 「ほらー!海斗!起きなさ……い?」

 やはり葉月まで同時に俺の部屋に来た、葉月はきょとんとした顔で俺を見ていた。


 「ふふふふふふふ」

 俺はまるで二人に勝ったように謎の笑みを浮かべていた。

  

 「うぇー!にいにキモイ!!!!」

 そりゃそうだ、朝起きて急にドアを開けたと思ったら目の前には笑みを浮かべた俺が立っているのだ。

 むしろ怖い。


 「海斗めずらしいね本当に、天変地異でも起こるのかしら」


 いいぞ、葉月、その通りだ、俺は起こって欲しいと思っている。 


 「まぁな、今日は俺の人生が変わるかもしれない日だからな!!!!」

 「見てろ葉月!!俺の生き様を!」


 葉月と妹はしらけた目で俺を見ている。

 

 「?なんで今日のにいにはこんなにバカみたいなの?」

 妹は俺に語り掛けてもどうしようもないと思ったのだろうか、隣の葉月に語り掛けている。

_____________________

 

 「あははっははは」

 妹は大爆笑だ、腹を抱えて涙まで出ている、というより笑いすぎだろこいつは。恥ずかしいったらありゃしない。

 

 「にいにったら可愛いね~、今日は学校でモテモテなんだってみーちゃん」

 俺の目を見て話しなさい。

 

 みゃーっと泣くみーちゃんもまるで俺をバカにしているような鳴き声のように聞こえた。

 

 「いや、わかってるよ私も、昨日の今日だし確かに何か起こるかもしれないけどさー」

 葉月は流石に可哀想だと思ったのかフォローをしてくるが、俺には届かない。

 なぜかって?葉月自身も笑いをこらえ切れそうになさそうだからだ。


 いいさいいさ、学校で数多の女子生徒に囲まれて慰めてもらおう。

 しかし、ここまで俺も自信を持っているのだ。

 何といったって俺にとっては人生を掛けているようなもんだから、そう考えると不思議と悔しい気持ちが出ていた。 


 「じゃあ……葉月かけようぜ」

 

 「へっ??」

 葉月は何を?っという表情をしている。


 「俺が今日一日、女子の誰からも話しかけられなかったらお前は……」


 「な……なによ、付き合えとでもいうの?」

 表情が若干恥ずかしそうだ、妹は妹でもう俺の部屋をいつの間にか出て行ってしまった。

 

 「べ、別に、海斗とはただの友達だし、付き合うとかなんて考えたこともないけど」

 なんというテンプレ回答、しかも俺はまだ要求を何も伝えてはいなかった。


 「私と付き合ったって別に今と何も変わらないんだからね、手つないだりするのが増えるくらいで、でも街田とかにデートとかはいってみたいけど」

 いつまで喋るのだろう、やたら饒舌なのが面白いのでもう少し見ておく。


 「でも今まで友達だったから、私もそういうの想像できないっていうか、あっでも別に嫌いじゃないんだよ?」


 「……俺がいつ付き合えって言った?」 

 そろそろ言わなくてもいい事もいいそうなので止めておくことにした。


 「……」


 「……」


 なんだろう、この沈黙は。

 あまりいい沈黙ではないな。

 目の前の葉月は怒りなのか、恥ずかしさなのかよくわからない表情をしている。くしゃっとした顔はどこにいけばいいのか分からなく、時が止まっているようである。

 

 「どうにでもしろっ!!!!!!!!!!」

 そう葉月は言い残すと俺の部屋を颯爽と去っていった。


_______________________



 一先ず学校へ行くか、海斗は支度をしていた。

 本当は期待と不安が混じり、不安の気持ちが少し勝っていた。

 一度不安となった気持ちは、まるで白い絵の具に黒を少し入れたように、もう白には戻れないような気がしていたからだ。

 仮に転生したらこの俺の生きている世界はどうなるのだろう、親は心配するだろうか、妹も心配するのだろうか、猫も、クラスのふざけ合ってる友達も、葉月も……。

 俺は色々な人と繋がっているということを昨日ずっと考えていた。


 

 あーぁ、誰かこっちに転生している奴でもいりゃ話とか聞けるのになー。

 まぁこんな平和な街に来る奴なんているわけはないか。

 


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