僕は転生に憧れを抱いた⑪
まさか、さっき話していた金沢遥が俺に手紙をくれるとは思わなかった。
今まで話したこともそこまで無いのに急に手紙で、しかもこれをどう受け止めればいいのだろうと海斗はずっと授業中考えていた。
転生する条件に当てはまるのだろうか、これは。
授業の終わりの鐘が鳴り皆が休憩をしている中、海斗は金沢遥のほうに目をやってみた。
確かに、クラスで飛びぬけて可愛いというわけではないが、それはクラスの一部女子が化粧などして目立っているからで、傍から見たら可愛い部類だとは感じていた。
金沢遥はニコニコと女子友達と談笑していた。
「海斗ー!!!」
葉月だ。最近足音で分かるようにもなってきた。
「ちょっと、海斗、あなた凄いよ!!」
俺はそれどころではないんだよなーと思いつつも耳を向けた。
「うちのクラスの女子があなたの連絡知りたいって、もう何人もいるの!」
「教えて平気!?って海斗本当に転生できちゃうかもよ、これじゃ!」
葉月は声が大きいので多分クラス中に広まっているだろう。
金沢遥も神妙な面持ちでこちらを見ている様子が伺えた。
「まぁ、いいんじゃない?葉月適当に教えといてよ」
俺は確信した。
今、俺はもてている。
これはもう、紛れも無くもてている。
海斗の心臓はバクバクいっている、今までに感じたこと無いほどに心臓が動いている。
「わかったよー教えとくね、でも海斗もしよかったら今日一緒に帰れる?」
珍しく葉月が素直だ。
こういうときは決まって俺を馬鹿にするか、教えてあげないよー!なんていうのも目に見えていたのに。
「いいよ、部活後でしょ、というよりいつも帰ってるじゃん」
「そうなんだけど、ちょっとどこかで話できないかなと思って……ね」
どうしたんだろう、本当に。
あまり見たことない表情をまたしている。
「葉月、どうかした?俺何か悪いことしたら謝るけど」
俺は咄嗟に何故かそんなことを口走っていた。
「えっ、いや、別に」
急に冷たくなった態度に海斗は海斗で意味が分からないと感じた。
「一先ず連絡とかも教えちゃうね、部活終わったら校門で待っててね」
いつもと違う感じの葉月に海斗は少し畏怖していた。
畏怖の気持ちもあれば、いつものように素直に真っ直ぐな態度で来て欲しいと思っていたから、何故か怒りまで沸いてきた。
「らしくねーな」
ボソッと言ったのが間違いだったのだろうか。
葉月は俺の言葉を聞いた瞬間にそそくさとクラスを後にした。
「あーあ、ありゃ怒ってるな」
そばで見ていた祐介が俺に言ってくる
「ったく夫婦喧嘩もいい加減にしとけ、海斗お前はもてすぎたから嫉妬してるんだよきっと」
「誰が夫婦だ」
でも、本当にそうなのだろうか、まさか葉月に限ってそれは無いと俺は感じていた。