消去法の絶望

　私は露呈する。鏡の前に露呈する。汚い、醜い、おぞましい。それだけなんだ、それだけなら良かったんだ。本質はそうではない、私は善になる事が出来ない。それは本当に絶望でしかない。

　鏡の前で露呈する。鏡達が露呈する。私達は鏡に囲まれて生きている、鏡が囲って生きている。何て浅はかで、愚かな姿なんだろう。どっちを向いても傾く天秤、理解のしたくない林檎、沢山あれば覆い隠す。解りきってはいた事だが、ここにも善は無い。仕組み、システム、役割、チャート。皆挽肉になってしまえ。

　ここに来た事がそもそもの間違いであった筈だ。そうなれば、地の底で始まり、地の底で終わる。もう涙も涸れ果てた、天に唾吐けども自身に帰ってくる事も知っている、傷を見せれば塩擦り込まれる事も解っている。それは鏡だからだ、鏡に囲まれているからだ。知っているはずだ、理解しているはずだ。

　　逃げ場は無い

　私が露呈する。鏡無くとも露呈する。汚い、醜い、おぞましい。理解した、理解してしまった。私は善になる事は無い。私は善を理解していないのだ、理解していないものになる事は不可能なのだ。私は悪を知っている、悪と言うものを知っている。汚い、醜い、おぞましい。理解した、私は善になる事が出来ない。

　私は露呈する。鏡は常時露呈する。私の世界は三面鏡、どこまでも広がっているが、その実薄っぺらいものなのだ。それも救いにはなりえない、この絶望から逃げ出すには足りない。私は苦痛に恐怖する、私は未知に恐怖する。善にもなれず、無にもなる事は無い。嫌悪、憎悪、鏡に向い、消えてしまえ。

　サイコロの面を間違えた。本来なら、零で始まり、零で終わる。そうであって欲しかった。だから私は思うのだ。善に成れぬその姿を見続けるしかないのであれば、もう逃げだそう、もう見たくない。鏡はそれでも私を囲む。皮肉な事に鏡を囲む。

　　逃げ場は無い　私が選択しない