表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/31

プロローグ とある男子生徒の懺悔

 人生の終わりを覚悟した、そんな一瞬。


 廊下の死角に小さくなって座り込んだ身体は、オンボロの機械のように激しく震えていた。


 立ち上がれない、腰が抜けた。


 側には、たくさんの生徒や先生たちが倒れている。息こそあるものの、このままでは鼓動が止まるのも、時間の問題だ。


 あの化け物の姿が、今でも目蓋の裏に焼きついて離れない。瞬きするたびに、その白い髪が、赤い眼をした般若の仮面のような顔が浮かんでくる。


 全身の水分を気持ち悪く揺さぶる、悲鳴にも似た奇声が、鼓膜を振るわせた。


 幻聴ではない。すぐそこまで、迫っている。


 こんなはずじゃ、なかったんだ。ただの好奇心だったのに。


 とんでもない罪を犯してしまった。


 僕が解き放ってしまった化け物のせいで、多くの人たちの命を犠牲にしてしまう。


 この危機的状況を何とかするには、僕自身が蒔いた種を摘み取らなければならない。


 術は発動した。道連れになるのは、僕の魂だけだ。


 覚悟は決まった。しかし、悔いは残る。


 彼女の心に、大きな傷を作ってしまった。あの娘の古傷を、抉ってしまった。


 ごめんなさい。


 全てを元には戻せないけれど。せめてこれ以上、誰も泣かずにすむように。笑顔でいられるように。


 できる限りの努力をしよう。




 震える足を酷使して立ち上がり、おぼつかない足取りで、死角から飛び出した。


 耳元で、鬼気迫る制止の声が響く。しかし、立ち止まるわけにはいかない。


 僕は勢いよく廊下を駆け抜け、一直線に化け物――鬼めがけて突っ込んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ