表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

勇者と魔王と天使

 元々、物置部屋だった部屋には壊れたPCや、その他諸々のゲーム機を置いてあった。


 その部屋をサタンに貸してやったがまさか、サタンがPCで、FPSをやってるとは思わなかった。


 しかも、仕事服で。


「なぁ、お前昨日仕事だよな? なんでFPSやってた?」


「……レーン、これには理由がある、昨日は昼頃に仕事が終わって、家に帰ってきてたんだ」


「嘘をつくなよサタン、お前が仮に家にいたとして、なぜ夜仕事から帰ってきたフリをした? 本当は仕事やってないんじゃないか?」


 サタンが沈黙する。まさか、始めっから宅配業なんて、やってなかったんじゃないのか?


 少しの沈黙の後、サタンが口を開いた。


「すまない、我はもう仕事をしていない。いや、言い方が違うか。仕事をクビになった」


「クビ!? 何やらかしたんだよ! 履歴の魔王ってのか?」


 サタンはクビを振る。


「いや、実は、お前の家に来てからというもの、PCにハマってしまって、仕事をサボるようになったのだ。その中でもFPSは良い。最近は寝てないからな、目の下にクマが出来てしまった」


「おい、クズだなお前。しかもそれクマか、生まれつきかと思ってたよ」


 ホントどうしたよ、戦うのやめて、静かに暮らしたいんじゃないの? 昔の戦闘本能目覚めちゃってるよ、軽くFPSで戦争してるけど、魔王として現実で戦争起こさないよね?


「仕事は辞めてしまったが、これから我も自宅警備員だ、よろしくな」


「よろしくなじゃねーよ! でも辞めちまったのはしょうがねーな、で、どうするんだよ、具体的に生活費とか」


「そこは心配ない、今頃ウリエルが稼ぎに行ってるだろう、我より上手くやれると思う」


「は!? ウリちゃんお前が仕事やめたこと知ってんの?」


 サタンが頷く。


 うわ、だからだ。あんなにウリちゃんが怒ってたの。俺のせいでサタンが働かなくなったと勘違いしてるんだろう。最悪だ。


 元はと言えば、俺がこいつを物置部屋に置いたのが原因か?


「てか、お前最低だな。自分は楽して、娘に働かせるとか、人間の……間違えた、魔物の底辺のゴミクズだぞ」


 少し言い過ぎだろうか。しかし、サタンはじっと俺の目を見つめる。気持ち悪りぃな。


 俺が顔を逸らして、物置部屋にあった昔の商売道具が視界に入る。


「そうだ! サタン、お前、そこら辺のモンスター倒してこいよ! ざっと百体ぐらい倒せば、これから遊んで暮らせるぞ!」


「そうなのか、よし、今すぐ行こう。お前と2人であれば、ものの数分で終わる」


 しかし、俺にはできない理由がある。昔の同じことをして、草原出禁になった。草原出禁って、面白いな。


 理由をサタンに説明すると、納得してくれたようで、部屋を出ていく。


「レーン、傘立てにある聖剣をかりるぞ、時間が短縮出来る」


「ああ、好きに使っていいぞ」


 魔王が聖剣使うと、どうなんだろう。アイツ手が溶けたりしないかな。まぁいいか。


 サタンは仕事服のまま、いつもの帽子を被り、家を出ていった。


 サタンが出かけた後自室に戻りFPSに没頭した。ちょくちょく、草原の方から爆音と地響きがしたが、さほど気にならなかった。


 その日、サタンは帰ってこなかったので、久しぶりに自分で夕飯を、作ることにした。ゲロマズかった。


 その後、自室で眠りに落ちた。





 翌日。


 おはようございます。レーンです。今日も昼に起きました。一階に降りて、冷蔵庫を開けましたが、作り置きが入っていませんでした。


「サタンの奴、なにやってんのかな」


 少し気になって、遠くまで見える魔法で、草原を見渡す。


 なんだあれ、デカい穴ボコが、いっぱい出来てんな。しかも、王国の兵士がチラホラと、って!!!


 最悪の予感が、頭をよぎり、王城まで視界を伸ばす。


「うわ、やっぱりか、アイツ処刑されそうじゃん」


 王城前の広場で、魔王ことサタンが、ギロチン台にうつ伏せで、寝かされている。あんな拘束具、サタンなら余裕で引きちぎれるが、何故か静かに目をつぶっている。


「あーもー、なにやってんの」


 そんな駄々をこねながら、既に転移魔法を俺は発動させていた。








 ・王城前広場


 サタンの処刑台に転移した俺は、サタンの頭を蹴り飛ばしてやった。


 周りの兵士が駆け寄ってくるが、すぐさま結界を造る


「何やってんだよ、お前ならこんな拘束具簡単に解けるだろ」


「レーンか、すまない、討伐金は貰えなかった」


 何言ってんだお前。そんなことどうでもいいだろ。


「なんで捕まってんの? 王国の兵士なんか余裕で倒せるだろ」


「我が抵抗すれば大勢の人間が死ぬ、それに、我はそろそろ死時だと思った」


 ウリちゃんの時とは別の怒りが、こみ上げてくる。なんで悪魔はバカばっかりなんだ。


「ウリちゃんは、ウリちゃんはどうすんだよ、お前がいなくなったら、それこそ戦争起こすぞ、あの子」


 サタンが鼻で笑う。


「確かに、それはありえる。なら、お前にウリエルを託す、それで問題ないだろう」


 何故かは分からないが、サタンを思いっきり蹴り飛ばす。サタンを縛っていた拘束具は弾け飛び、王城の壁に激突する。


 壁の置くから、サタンが出てくる。


「何をする、レーン、我と殺る気か?」


 サタン。魔王からは、少し殺気がばらまかれていた。


「おい、魔王が逃げたぞ!」

「なにやってんの、あそこのおっさん!? 今何をした!」

「魔王を逃がすな、あそこのおっさんはほっとけ!」


 兵士共が、騒いでいるが、そんなの気にしない。処刑台を踏み切り、魔王目掛けて、魔法を撃つ。


 雷の竜巻が魔王に直撃するが、魔法は弾けることなく、魔王の手に収まる。


「レーン、いや勇者、民衆がいる、場所を変えよう」


「そりゃ、俺が言うセリフだけどな」


 俺達は、あの日戦った、魔王城に来た。魔王城は見る影もなく、崩れていた。


「我の城はこんなになっていたのか、墓場にしては、上出来だ」


「何言ってんだ、ウリちゃんが待ってる。今すぐ家に帰るぞ」


 魔王は、仕事服のボタンをひとつ開け、帽子を外し投げ捨てた。もっと大事にしろよ。


 お互い、宙に浮き、空中戦の体制をとる。


 先に仕掛けたのは、魔王だった。愛刀の黒い剣を取り出し、斬りかかってくる。


 俺はどこかしらにある聖剣を呼び寄せ、キャッチし、魔王の一撃を受けとめる。


「なぁ、やめようぜ、意味無いだろ」

「お喋りの余裕があるとは、図に乗るなよ勇者」


 魔王は愛刀を離し、最上級の魔法を撃ってきた。俺は同じく最上級魔法の有利属性で、威力を相殺する。


 爆音は地響きと共に、大陸の端まで響き渡った。結界が貼られてない状態の大地は容易く抉られ、クレーターが出来る。


 今の一撃で分かったよ。魔王、本気だな。


 それからは、剣と魔法の攻防だった。お互い全てを出し合うが、魔力が尽きない。そう言ってみれば、前戦った時はどうやって、勝ったんだっけ?


 考え事をしていると、魔王に一発殴られる。


「なんだ、考え事か、余裕だな」


「いや、前戦った時は、お前が最後、スキを見せて俺が勝ったなと、思って。あの時、お前何考えてたんだ?」


「…………お喋りはそのへんでいいだろう。始めるぞ」


「まってーーーーーーー!!!!」


 俺と魔王は、声のする方向に顔を向けると、ウリちゃんが飛んでくるのがわかった。


 ウリちゃんは、そのまま魔王を庇うように、両腕を広げ、俺に向かって叫ぶ。


「やっと本性を表したですね勇者! ウリとパパが一緒に戦えば、勇者なんて瞬殺です」


 ああ、空を浮いてるウリちゃん可愛い。悪魔なのに、背中から白い羽が生えてるよ。完全に天使だよねあれ。


「ウリエル、家に戻っていなさいここわ危なぐっ……………………お前は」


 ウリちゃんの手には、いつの間に白い剣が握られており、魔王の腹に刺さっていた。


「うふっ…………あははははは、ざまーないわね魔王」


 剣は引き抜かれ、魔王の腹からは、血が流れている。いや、早く治せよ。お前なら、その程度の傷、余裕で直せるだろ。


「勇者は何にも分かってないのね、これは聖天剣、あなたの聖剣なんて、比べ物にならないくらいの聖気を纏っているのよ、治るはずないじゃない」


 ウリちゃんは、血が付いてる剣を揺らしながら説明する。


 違うだろ、そんな事じゃない。


「ウリちゃん、パパが死んじゃうよ、早く治さないと」


 ウリちゃんは、一瞬ビックリしたような顔をしたあと、悪魔のように笑った。


「何言ってるの、私は魔王の娘なんかじゃないわよ。私は天使、天使ゼウスよ」


 うん、それ天使じゃなくて、神様だから。




 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ