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光焔万丈(KO-EN BANJO-)  作者: 梅屋セイ
1/4

【プロローグ】

初投稿になります。読んで頂けるとありがたいです。

タイトルの「光焔万丈(こうえんばんじょう)」とは、光輝く炎が高く立ち上ることを意味しています。

議論や詩文などの勢いが激しく、素晴らしいことのたとえでもあります。この小説では前者を意味します。


とても自由に書かせていただいております、どうか読者様も自由な心で見て頂けると幸いです。


挿絵(By みてみん)

プロローグ

 一六五七年 三月二日。

振袖火事および明暦の大火と呼ばれる大火事が江戸を襲う。

「ひっでぇ有様だなぁ、えぇ?」

  黒い羽織に身を包んだ男が、江戸の様子を屋根の上から座って眺めている。男の顔は鼻先まで包帯でぐるぐる巻きにされているが、この火事によるものではない。口元は歪んだ笑みを浮かべていた。

「見えるのか。」

  隣に立つ深紅の着物を着た若い男が、俯き無表情に聞いた。

「見えるさ。例え見えなくとも、この叫び声で・・・。」

  江戸はすさまじい炎に包まれていた。そして、町中の民の獣のような叫び声が響き渡っている。誰が何を言っているのかわからない。視力がいい深紅の着物の若い男には唯一、町民の苦痛と悲しみと怒りに満ちた表情が痛いほどよくわかった。江戸は赤い光と黒煙に包まれる。


―――――――――――――――――――――――――――——――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――—

竹林

 涼しい心地よい風、木漏れ日がさす穏やかな竹林で、足音が聞こえる。長い一本道を少女は足早に駆けていた。三つ編みにしたブロンドの髪はゆらゆらと揺れ、青い瞳はまっすぐに前を見据えながら、ただひたすらに走ってゆくのだった。振動でずれる大きな丸いメガネを時折直しながら。


(急がなくては!)


  そう思いながら必死に足を動かしている時だった。

「!!」

  少女の足元に鋭く長い針が飛んだ。その針は箸ほどの太さで、先端は細く尖っている。少し脛をかすったが、治癒師(ヒーラー)である少女は脛に両手をかざし、花の文様が出るとすぐに傷口を塞いだ。これは、花種である証である。少女は顔を上げ飛んできた方を見るも、誰も見当たらなかった。用心しながら針を手に取ると、桜の柄が描かれており、散りばめるように金の装飾がされていることに気が付いた。

「これは(かんざし)ですね・・・。」

  すると不意を狙うように再び少女に向かって針が飛んでくる。だが今度は当たらなかった。咄嗟に地面から薔薇(ローズ)(ウォール)を出して身を守ったからである。予感はしていたが、どうやら自分を狙っているらしい。

「どなたですか!」

  少女が叫んだ途端、フッと背後に風を感じた。

「ここよ、おチビちゃん。」

「!!」

  振り向きざまに頬を針が掠めた。目の前には、可愛らしい少女とは対照的な、スラッとスタイルが良く艶やかな美女が、余裕ありげに微笑んでいた。



―――――――――――――――――――――――――――——――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――—

江戸町

 真っ赤に燃え盛る炎の中で一人、真っ白な風貌の男が立ちすくんでいる。倒壊した建物に塞がれ行き場を無くした町民が密集し、あたふたとぶつかり合う中で、白い男は静かにその様子を見据えていた。


(紅種の仕業か・・・)


  男はため息をついた。かつて友として信頼を寄せていたあの男が、自分の出世と同時に去っていってからは何処で何をしているかなど全く知る由もなく、あの男はあの男なりの人生をー、そう、誰にも縛られない気ままな道を歩んでいくのだろうと思った。しかしある事件が起き、もう二度とあの男の顔を見ることができなくなるとなった時、自分はどうしたらいいのか考えた。そして、ようやく答えを見つけかけたときにこの大火災が起きた。


(手遅れだったか。)


  今はただ、自分の不甲斐なさに情けない気持ちだ。だが、あの男が生きている限りは諦めない。

  白い男は、燃え盛る炎に向かって強力な氷を纏った刀を振り回し道を作ると、一目散に駆けていった。――――――――――彼は氷種である。




―――――――――――――――――――――――――――——――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――—

江戸町 裏道

 慎重に、少年は辺りを見回しながらひっそりと裏道から様子を伺っていた。


郷兄(きょうにい)・・・これが郷兄が望んだ結末なの・・・?」

  少年は黄色がかったオレンジ色の髪にバツ印の形をしたオレンジ色のピンが特徴的で、彩度が高いピンと同じ色の布を首に巻いている。真っ赤な炎のおかげで、色が同化して少年に気づく者は誰もいない。

「あれは・・・!」

  少年は咄嗟に物影に隠れた。例の白い男が見えたからだ。

(いまあいつに捕まったらまずい、はやく郷兄を見つけないと!)

  こっそり再び見てみると、男は丁度火消しを行った後であった。

「やった!」

  道ができると男に続いて我先にと町民が駆けていく。そこに紛れるように、少年も続いて走っていった。その途中、倒壊していない屋根を見つけると運動神経がいい少年は軽々と屋根へ飛び移った。

(待っててね、郷兄・・・!)




―――――――――――――――――――――――――――——――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――—








「後悔しているか?」

  黒い羽織の男が低い声で聞いた。それから何秒経ったか、二人の間は謎の緊迫感に包まれた。

「いや。」

「ふん、よかったな。今夜はめでたく酒でもいこうや。この江戸は・・・、いや、この国は全てお前のものだよ。」

  黒い羽織の男は、ははは、と大きく声を出した。そしてまた、今度はもっと大きく狂ったように叫んだ。その姿はまるで今までの鬱憤を晴らすかのようだった。勢いに乗って男は包帯を振りほどくと、隣に立つ深紅の着物の男に呟いた。

「・・・紅種のな。」




解説:それぞれの人物が、同じ時刻、それぞれの場所でのシーン。

主人公は第一章にて。


作者は高校時代に舞台を経験していたからか、小説が脚本のようになってしまうところもあるかと思います。至らぬところは改善していきます。

主人公は「殺陣」をするのですが、これは自身が殺陣をしていた経験を活かそうと考えたとき、ちょうど創作していたこの小説にピッタリだと思い、作品に取り入れました。


今後とも「光焔万丈」を宜しくお願い致します。


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