ネタログサイト 新規登録『一件の古びた寿司屋です』
薄汚れた青年が一人、これまた薄汚れた木の看板が立っている店へと入っていった。
殆ど文字が消えているが薄っすらと寿司と文字が見えている。
「らっしゃいっ」
店主の威勢のいい声に圧倒されつつも、青年は席へと座る。
おそるおそる周りを観察し始めた。
青年は店主を見た。捻りハチマキに白い調理服。
続いて店の中を見渡した。
カウンター席しかない座席は埃すらなく綺麗に拭かれている。
「えーっと、此処なら新鮮なネタがあるって、先輩から教えてもらって……」
青年は知人から貰った一枚の名刺を店主に差し出した。その名前を見て店主は白い歯を見せて青年へと笑いかける。
「おや、お客さん通だねぇ。いいネタが揃ってるよ」
店主はそういって赤いノートをお客の前に出した。
受け取った青年は直ぐにノートを開いて中の文字を黙読始める。
「えーっと、トラックに跳ねられて異世界に行く。ちょっとネタが古いというか……」
青年がおそるおそる言うと店主は困った顔した。
「そうかえ。ここ数年で跳ぶように売れたネタで、今でも通用するネタなんだけどなぁ」
それじゃあ、と大将は今度は青いノートを取り出してきた。
「今朝取立てのネタだっ」
青年が開こうとする前に店主の口が開く。
「空から女の子が降ってくるってなんだけどよ」
ノートを開こうとした青年の手が止まり店主を見つめた。
「……その女の子を男の子がキャッチするか、青年と一緒に重火器使って敵を倒すって言ったら怒るよ?」
図星だったのか大将は言葉の続きを話さなく、青いノートを素早く取ると黄色いノートを青年へと手渡す。
「異世界に言ってカラス、バッタ、いやドラゴンやスケルトンになって世界を統一するってのはどうだ」
「うーん。既に軟体生物などになっている有名作があるからなぁ、確かに被ってはいないけど……」
青年は不安を覚え難色を示すと大将も腕を組み始める。
其処に顔の赤い男性が店へと入ってきた。
大将が「らっしゃい」と短い挨拶をすると、赤い顔の男は注文をし出す。
「タコにマグロ、あとイカも貰おうかな」
男の注文に大将の顔が見る見る赤くなる。
「お客さん、悪いけどウチは寿司屋じゃねえんだわ、魚貝が好きなら他いってくんなっ」
怒気を含みつつ客に怒ると、客も怒鳴り返す。
「んだと、看板に寿司ってかいてるじゃねえかっ」
「てめえこそ、ちゃんと読みやがれ。うちはネタ寿司屋だっ! 話のネタを売るのが商売なんだよっ」
二人のやり取りをみて男性客が溜息を付く。
「ああ。食べ物系ネタも溢れてるよ……」
店の雰囲気★★★☆☆
小さいながらも小奇麗
店主の良さ★★★★☆
粋が良く客と同じ目線がいい
ネタの新鮮度★☆☆☆☆
古い ネタ切れアリ