小学生が作ったなぞなぞが想定外だった話
「んー、今日も相変わらず疲れたなぁ……」
家に帰って早々、僕はソファに寝転んだ。
今日は特にやるべき仕事も無い(明日の授業のための準備は、日課なのでやらなければならないが)ので今から一応は気楽なものだ。
僕は誰かから連絡が来てないか確認するため、カバンからスマホを取り出した。すると図らずも、総合学習の時間に集めた数十枚の用紙が目に入ってきた。
「……そういえばこんなの集めたっけ」
小学校には総合学習という授業がある。まあ早い話が『なんでも出来るよ』という時間である。委員会やクラス内の係を決めたり真面目な日もあれば、まるまる全部レクリエーションの時間になったりもする。
そして今日は半分半分。前半がやや真面目な話で、そして余った時間がお遊びタイムになった。
そして手元のこれが、レクリエーションタイムをかけて出来上がった成果のようなものである。
『なぞなぞを作ろう』
これが、今日のレクリエーションの内容だった。
本当は今日その日のうちに、作ったものを教室に張り出しみんなで見てコミュニケーションを取って、もっとクラスメイト同士仲良くなって欲しいという意図があったのだが、あいにく前半の真面目な話に時間を費やしてしまったせいもあり、みんなに見せる前に授業が終わってしまった。
今手元に生徒が作ったなぞなぞがあるのは、そういうわけだ。
「……そういえば、みんなどんななぞなぞ作ったんだろう」
別に今日今から中身を確認する必要はない。が、純粋にどんなものが出来上がっているのか興味があった。
僕は裏を向いた用紙の一枚目をパラリとめくる。
◆◇
Q パンはパンでも食べられないパンはなーんだ?
A フライパン
◆◇
「……うーん」
定番といえば定番なのだが、まあ、早い話が無個性というか、既存というか。もはやこれは作ったと言えない気がする。
こういう創作的な課題を面倒に思う生徒も確かに居るだろうとは思ってはいたが、初っ端からこれが目に入るとは、どうも他の生徒の出来も不安になってくる。
少々の心配を抱えながら、僕は次の用紙に目を向けた。
◆◇
Q パンはパンでも食べられないパンはなーんだ?
A あんぱん
【解説】私、あんこ嫌いなんですよね。
◆◇
「理由が私的すぎる……」
なぞなぞってそういうのじゃないから……
次見よう、次!
◆◇
Q パンはパンでも食べられないパンを食べるのが私だ!
A かっこいい!
◆◇
「クイズしろ」
なんでこれを書こうと思ったかが一番の謎だと思う。
次!
◆◇
Q さて! ここでなぞなぞです! わたしのお父さんが解雇されました! 何故でしょうか!?
◇
「分かるか!」
いや、解雇されたのは一大事だけど。少なくともテンション高く言う事ではないと思う……
「……不景気だから、普通にリストラかな?」
一応答えを考えて、僕は回答へと視線を移した。
◇
A 着服した
◇◆
「自業自得!」
あとヤバい家庭事情をサラッと言うな。……冗談だと信じたい……
次!
◆◇
Q 面包是面包,但是不能吃的面包?
◆◇
「日本語で書いて!」
仕方なく、翻訳サイトに一文字ずつ打ち込んで日本語に翻訳した。
すると
◇◆
Q パンはパンでも食べられないパンは?
◇◆
と出てきた。
お前もかよ。翻訳にかかった時間を返して欲しい。
次!
◆◇
Q 日本の人口は何人でしょうか?
【ルール】
(もし数値を間違った場合は、正解との差1人につき1本、キミの体に針を刺すぞ!)
◆◇
「なんか怖いこと書いてある……」
無駄に陽気なテンションなのも怖い。
あと問題の性質上、どう考えても万単位で針を刺される。
次、次!
◆◇
Q 朝ドラは何の略でしょうか?
◇
「えっ?……朝のドラマとかじゃないの?」
少しの疑問と興味を抱き、僕は回答へと視線を送る。
◇
A アサヒスーパードライ
◆◇
「嘘つくな」
次!
◆◇
Q ピザって10回言って?
A ヒジ
◆◇
「文字でやっても面白くないヤツ!」
次!
◇◆
Q さて、問題です。今、私は5年生ですが、4年生の時なんという「あだ名」で呼ばれていたでしょう?
◇
「……なるほど」
去年担任じゃなかったから分からないなぁ……。でも、このなぞなぞ(?)はみんなでワイワイ楽しめそうで良いと思う。
僕は少し興味を持って、視線を答えの方へと向けた。
◇
A 異常
◆◇
「なんでだ」
小学生に付けるあだ名?
次!
◆◇
板東英知「ゆでたまご……それは人類のレガシー……」
◆◇
「なんだこれ」
こういうのはツイッターに書いて友達からいいねを貰えば良いと思うよ?
「………………もう、疲れた!」
なんかもう、今日は良いや。何も考えず、僕は静かにベッドインした。おやすみなさい。
Q 何故疲れたでしょうか?
A 生徒のせい