神楽島の終焉
幾千年も昔、人間と動物とは別モノとされる「鬼」がいた。
大柄で赤い体、頭には角があり人間に似た体格を持つ。
鬼は人の住む土地を強奪し、作物を奪い無くなると別の場所へ移る非道で、人々は鬼に怯えつつも平穏に暮らしていた。
海に浮かぶ神楽島という島があった。
そこは温暖で作物の育ちも良く、生活に適した平原の他、島の中央付近に行けば荒野や火山がある、様々な環境が入り混じる住みやすい島。
その神楽島を見つけた大勢の鬼は島に上陸し、例の如く人々の住処を奪い始めるのだった。
「今日よりこの島は、鬼ヶ島とする!今までにない良き島ゆえ、うぬらには情けをかけるとしよう。」
鬼の大将が、神楽島に住んでいた人々を集めに集め海岸へ歩かせ、島から追放しようとしていた。
しかし島の人々は勇敢にも鬼に立ち向かう。
鬼の屈強な体と力には適わず、次々と人々が殺されていく。
「このままでは皆殺されてしまう、どうにかしなければ…。」
「いや、私たちではもうどうにもならん!」
「せめて、この子は…。」
鬼が島に来る直前に生まれた子供を守るため、母親は神楽島にある特有の巨大な桃に我が子をいれ、海に流すのだった。
「あの子が助かるにはああするしかないんだ、いずれあの桃は川に流れ着く。」
「その桃を誰かが見つけてくれれば、中のあの子を育ててくれるだろう…。」
わずか1日で島の人々は半数以上を殺されてしまい、降伏した人は皆島から追放されていった。
それから数週間後…別の土地
非常に小さな村で特に栄えているわけでもないため、鬼たちに手を付けられない安全な村。
その村の端の小さな家に、お爺さんとお婆さんが住んでいた。
普段の通り、お爺さんは山へ芝を刈りに、お婆さんは川へ衣服と野菜を洗いに家を出た。
川へ向かったお婆さんはさっそく洗濯をしようとしたところ、川上から何かが流れてくるのが見えた。
近づいてきてようやくその正体が見える、巨大な桃だった。
「これは一体…香りも良いし、これだけ大きければ村の皆と食べられるかの…?」
お婆さんは巨大な桃をやっとの思いで持ち上げ、ひとまず家に持ち帰ることにした。
芝刈りが終わって帰ってきたお爺さんはその桃を見て仰天、お婆さんの話を聞き村長の家に持っていこうと話が決まる。