吾輩は台風時期には多忙を極めるのである。
台風。
それは我輩の仕事に於けるハイシーズンでもある。
一般的に仕事どころではなくなるのだが、我輩の場合は全く逆。
大忙しとなるのだ!
確かに暴風にさらされ、雨でベチャベチャになる。
しかしそれ以上のやりがいが!
コンピニにて。
傘立てに刺してある複数の傘を爪で引っ掻いてやる。
後は入口付近をうろちょろして自動扉に反応させ、何度も開閉を繰り返させる。
商店街付近にて。
紐や針金等で固く結ばれている各店の看板。
前足でニャンニャンとじゃれるようにしてほどく。
角度を計算し、突風時には最も高い一枚ガラスへ直撃するように。
民家付近にて。
台風が来ているとの予報時には動かないクセに、酷くなってきた途端に心配となって補強を始める老人。
我輩風上へと周り、板っきれを空中へ放る。
やはり角度と風速を計算し、ジジイの顔面へ直撃するように。
違う家では雨漏りなのか、屋根に上って修理している人間が見える。
下にある”脚立”とやらへトントーンと身軽に上る我輩。
上段にあるロックらしきものを外してやる。
一般にはガッチリロックされて外れないのだが、年寄りの場合、軽くかけてあるだけの事が多い。
その後素早く降りて内側から足部分を押してやると・・・
{バッタン!}
開いて地面へ簡単に倒れるのだ。
これでよしと!
最後に増水を心配してか、或は好奇心なのか川へと足を運ぶ人間。
彼等の後方へそっと周り、思い切り体当たりを・・・。
大概年寄りが多いから、我輩でも簡単に押し飛ばすことが出来るのだ。
これは田んぼの場合も同じだが、農家の人間はコメの影響を心配しての事。
彼等に至っては水門の開け閉めなども重要となってくる。
責任をもってする彼等の仕事は我輩の手伝う所は無いのだ!
そちらには同じ仕事師として、敬意を払う。
今日もいい仕事しましたねぇ。




