吾輩は包丁を見ると寒気がするのである。
前回『回転ずし』前で思い出に浸った我輩。
今から偵察を兼ねて内部情報をかき集める事にしよう。
最初は店側もピリピリしていると思われ、警備レベルもマックスに近いと予想。
捕まったら何をされるか分からない。
ここは一つ、商店街を縄張りとするニャン吉にバイト君となってもらおう。
入り口からズラリと並ぶ人間ども。
そんな時間があるならば仕事しろと言いたい。
しかし今はそんな事を言っている場合ではなく、店のセキュリティー確認が先。
アーケードを支える為にある柱の陰で息をひそめ、ニャン吉の行動に目を配る。
店の前に着いたと思ったら速攻地べたに座り、片足を上げて玉袋周りの毛づくろいを始めるニャン吉。
早速突撃の合図が!
彼には作戦もへったくれもないのだろうという事は敢えて置いておく。
それよりも、いよいよ突入の時とワクワクドキドキの我輩!
どんなにこの時を待ったことか。
「次の方どうぞ―!」
店員が外の客を引き入れる隙に中へ侵入するニャン吉。
さすが商店街一の泥棒猫!
――― 20秒後 ―――
「この小汚い三毛猫めっ!二度とウチの敷居を跨ぐんじゃないぞコラァ!」
「フギャアアアアァァァァァァァーーーーーーーーーーーッ!!!!」
なんということだ!
あのすばしこいニャン吉が1分持たないだと?
しかも、すし屋の親父と一緒で従業員の手には刀があるではないか!?
これはおいそれと侵入できないぞ?
ウーム。
我輩は外に放り出されて転がりまわるニャン吉を見ながら色々考えてみる。
因みに彼は全身緑色に染まっていた。
特に粘膜のある場所には塊が・・・。
この店を攻略するのは、もう少し装備をそろえないとな。
そんな訳で今日は諦めるか。
新規開拓に手ごたえを掴めず、トボトボ帰宅する我輩。
その途中で・・・
「ウーニャン?」
偶然出会って話し掛けてくるニャー吉とニャン太郎。
彼等二匹を見てピンと来た!
この間4匹で行った商店街の新しい店へ行けば刺し身が食べ放題だと伝える。
その証拠に腹一杯で動けなくなったニャン吉が入り口の近くで寝ているぞとも。
「ニャギッ?」
二匹はまだ話半ばなのに、全速力のチーターを超えるスピードで消えて行った。
一時間後、店には緑色に染まった起毛の雑巾二枚と、新メニュー『肉の握り』が増えていた。




