吾輩は小さな命を救うのである!
仕事終わりで一杯ひっかける為に立ち寄った公園。
さて、今日はどんなつまみが置いてあるのだろうか?
チッ!
今日はドライフードだけなんてシけてやがる!
仕方なくカリカリ齧っていると、川の付近で釣りをしている人間が目に留まる。
どれどれ、我輩がレクチャーをしてやろう。
「ウニャン?」
先ずは腹を出して敵ではないアピール。
この姿に参らない人間は皆無。
ヌヌ?
一瞬チラリとこちらを向くも、殆ど無視ではないか?
イラっとしたからそーっと道具の入った箱を川へ流す。
「あっ!道具がっ!?・・あれ、この猫以前も・・・って事はお前が犯人かっ!!」
愉快愉快!
ヤツ自体は早口で何を言っているのかイマイチ聞き取れないも、道具箱を追って慌てふためくその姿の滑稽足るやなんとやら!
「ぜ~~、ぜぇ~~~っ・・」
息を切らしてまで取りに行くなど、それはそんなに必要なモノなのか?
戻ってくるなり我輩に向かって何かを話し始める人間。
「こ、ここでお前をブッコロすなんて簡単な事だが、誰に見られているとも限らん!てな訳で、お前と友好を結ぶためにプレゼントを用意した。」
ヤツは我輩の目の前に一匹の魚を差し出す。
それはもう、ピチピチ飛び跳ねるこれ以上ない新鮮な魚を。
「その寄生虫だらけの”ブルーギル”を友好の証として受け取れ!そしてあり得ない程の寄生虫症で悶えシネっ!!」
やはり早口でよく分からないが、この魚をくれる事は間違いないらしい。
我輩それを咥えると、ダッシュでこの場を立ち去った。
この時の彼は、まるで悪魔の様な顔つきだったことを我輩一生忘れないだろう。
折角もらったこの命。
尽きてしまう前に何とか助けなくては!
幸いな事に、まだ息はある。
それにしてもなんと生命力の強い魚だ。
走り出して5分、バイク屋に到着。
ゴミ虫の目を盗んで熱帯魚水槽の中へポイーッ!
他の魚たちに比べれば、綺麗さは劣るものの、その存在感は素晴らしい。
暫くすると水に馴染んだのか、近くを通る魚をパクーッ!
次から次へとパクパクーッ!
これで元気を取り戻したと一安心した我輩は、家へ帰る事に。
今日も頑張ったニャー。
次の日バイク屋の前で、空になった水槽が洗って干してあったそうな。




