吾輩は敵にも情けをかけるのである!
何時ものように仕事でバイク屋を訪れる我輩。
ムムム?
店が閉まってるぞ?
今日は定休日でないはず。
だったら何故?
理由を調べるべく、裏へ回って縁側から侵入を試みる。
ここのバカ家族はあの場所だけカギを掛けないのだ。
ゴミ虫がいつでも美しい庭へ手を入れられるようにしている為だとか。
フフン、泥棒猫には気を付ける事だ。
前足の肉球をガラスに食いつかせながら横へスライドさせる。
それにしても重いっ!
なんとか猫一匹通れるほどの隙間が出来た。
音を立てないようにソーっと侵入。
お、人の気配がする。
鼻で嗅ぎながら臭いのする場所へ。
おろ?ゴミ虫まだ寝ているではないか?
少し探りを入れてみよう。
「ウーニャン?」
ゴミ虫の寝ている横で腹を見せながら畳へ背中を擦る仕草をする。
それはもう、全盛期のアイドルさえも見せないビジネススマイルを伴って。
「お・・おー、ニャゴローかー。あたた・・・。どうやら腰をやっちまってなぁ。」
なるほど。
ぎっくり腰か。
現場仕事の人間に多いというアレか。
「今日は仕事無理みたいだから休もうと思ってな・・・。」
こうなってしまえば憎きゴミ虫も只哀れなだけ。
仕方がない、労わってやるとするか。
地べたの煎餅布団でうつ伏せになって寝ているゴミ虫の腰部分へ移動。
その上に乗ってモミモミ猫マッサージをする。
「おぉっ!?なんだニャゴロ―、マッサージをしてくれるのか?ありがとうよ。でもお前の体重では軽くて撫でてるぐらいにしか感じないなぁー。」
なんだと?
ゴミ虫のクセに注文つけるとはいい度胸ではないか?
ならば見ていろよ!
我輩マッサージを途中で止めて、傍にあるタンスの上へ。
この上にはゴミ虫が必死で貯めた金の入る貯金箱があるのを知っているんだぞ!
発見次第それを後ろ足で蹴り、ヤツの腰部分目がけて落としてやる。
見つけた!
ってか、大きいからタンスへ上がってすぐ目に入った。
少し重いが、男ニャゴロー全力を振り絞ってこの仕事に取り組む。
そして・・・
「ギャアァァァァァァァァァァァッ!!!!」
見事命中!
それにしてもなんて大袈裟な!?
男ならそれぐらいで悲鳴などあげるんじゃないバカ者がっ!
「今の悲鳴なに?・・あぁっ!?お父さんどうしたのよっ!なんでそんな場所に”家庭用耐火金庫”が落ちてるのっ!?」
その後、赤と白のピポピポ煩い引っ越し用の車に運ばれて、ゴミ虫は何処かへ連れていかれた。




