吾輩は妹君が苦手である!
どうやら人間にはアレルギーなどというものがあるらしい。
我が拠所、三河家の御長男もそれを持っているようである。
ある時母上に、
「ねぇニャゴロー。安成は猫アレルギーがあるから、あまり近づかないでね。」
などと念を押された事がある。
三河家で絶対権力を持つ母上を前にすれば、彼女が白と言えば黒い物でも白なのである。
逆らって首から下をビニール袋に入れられても困るので、黙って従う事にしよう。
しかし忘れられても寂しいから、長男を避ける代わりに彼の部屋中へ体毛を振りまいて我輩の存在をアピールだけはしておく。本人に直接近づいている訳では無く、何ら問題ないはず。
理由は分からないのだが、その後必ず彼がクシャミラッシュに見舞われる事となり、それを見ると気分がスーッとする。なぜだろう?
時間のある時はなるべく御長男のお部屋で過ごそうか。
アレルギーと言えば、我輩はどうも美也殿が苦手である。
以前商店街を塒にするニャン吉が彼女の歯牙にかかり、爪を全部丸く切られた事件がある。
『もう野生では生きていけない』と言っていた彼がとても印象的だったのを覚えている。
最近では坂の病院を縄張りとするニャン太郎がボディペイントと称してマジックで幼稚な絵を描かれていた。
彼もまた『猫生に於ける最大の屈辱』と、泣きながらこの町を去った。両わき腹に”ゴキブリ”のアートを残したまま・・・。
更には我輩たちでも報復を恐れて滅多に手を出さないカラスにまで石を投げつけ、
「あいつの羽を毟ってゴージャスで妖艶なマフラーを作るんだ!」
とか言っていたことがあり、この近隣に住む動物界ではレジェンド級ハンターの烙印まで押される始末。
よく他の動物達が我輩に”一緒に住むニャゴローはなにもされないのか?”などと聞いてくるのだが、
美也殿の匂いがすれば直ぐ隠れるから直接的な被害は殆どない。
それでも一昨日は姉上との共同戦線で捕まってしまい、”4WD”と全部の足に紙袋を被せられてしまう。
恐らくだが、その前に見ていた猫にネズミが嚙みつく古いアメリカアニメの影響だろう。
腹の虫が収まらない我輩は、彼女が”自作ポエム”なるものを綴ったノートというものを部屋から盗み出し、キッチンのテーブル上へと放置してやった。
ついでに安成殿の部屋にあるベッドへ転げまわる仕事も忘れずにこなす。
我輩は今日も仕事師の鏡と褒め称えられるだろう。