吾輩は今日の今日まで知らなかったのである!
商店街の肉屋で店主が用を足している隙にショウケース内へ入って涼む我輩。
すると、ヨタヨタ歩くニャン吉の姿が目に飛び込んできた。
ケース内霜降り肉のみ選んで毛をまき散らし、彼の下へ駆け寄る。
『おー、ニャゴロ―。ハハハ、見ての通り酷い目ニャ遭った。』
三毛猫の白い部分が血で染まり、なんとも酷い姿に。
縄張り争いでもしたのだろうか?
『いや、俺も訳がわかんニャいんだよなー。』
訳が分からないとな?
これほどまでに叩きのめされるのは余程の理由があるはず。
我輩とてニャン吉の知恵が足りないのは以前から理解している。
にしても理由の一つすら思い出せない程バカだとは・・・。
『取りあえず魚屋の倉庫で傷が癒えるニャで休むことにするよ。』
彼はそう言って我輩の前から姿を消した。
しかし、いくらなんでもこれではニャン吉が不憫すぎる!
そんな訳でヒントの無いまま、早速諜報活動を敢行する。
肉屋にて。
「チキショー!さっきも猫がケースのなかに入ってたみたいだな。白い毛と黒い毛がパラパラと混ざっていたからいつもの三毛だと思う。」
魚屋にて。
「今日は特別被害ないんだけど、アイツよく下痢ウンコして行きやがるんだよなー。動きが早すぎて捉えられないんだよ!だが、白と黒は完璧に混ざっていると思う。って事は三毛猫のアイツか!?」
先ずは2件で盗み聞き。
どうやらニャン吉は商店街で疎まられているらしい。
どこの店へ行っても悪口しか聞かない。
そして八百屋。
「やったぞばーちゃん!遂にひいじーちゃんの仇を取ったぞ!!ひいじーちゃんの葬式を無茶苦茶にした三毛猫を捕まえて酷い目に合わせてやった!!!これでじーちゃんも安らかに眠れるだろうよ!!!!!」
なるほど。
どうやらニャン吉をシメたのは八百屋のひ孫らしい。
ジジイの葬式・・・葬式!?
って事はあのボケジジイは他界したのか!?
そんな事我輩全然聞いてないぞ?
そうか・・・。
あれ程憎たらしくても、死んでしまうとなれば寂しいものだな。
明日は弔いの為にも朝一で八百屋へ仕事をしにこよう。
体の至る所にファンデーションの斑点をつけて・・・。
注:仕事=大暴れ若しくは人間にとってのイヤガラセ




