吾輩はうる星ではないのである。
我輩只今仕事中!
聞いて驚け、なんとミンミン煩い夏の風物詩であるヤツの捕獲に成功したのだ!
毎回思っていた。
ヤツは高感度レーダーでも搭載しているのではないかと。
得意の猫足で近づくも、必ずヤツのいる木の下辺りで逃げられてしまう。
しかも液体スプレーのオマケつきでだ。
しかし今日は運よく公園内の地面に転がってのた打ち回るヤツの捕獲に成功。
早速バイク屋のゴミ虫へ届ける事に。
ところが留守の様なので、一先ずバイクのサイレンサー出口へ隠しておく。
今日中に魚屋、八百屋、肉屋の商店街連中ぐらいまではコレを届けてやりたい。
時間が勿体ないので、ゴミ虫を待つことなく再び公園の森までダッシュ!
何たる幸運!
またしても地面に落ちている!
しかも同時に二匹いるではないか?
ならばどちらも捕獲してしまえ。
先ずは黄色と黒のお腹をしているアーモンドチョコの倍ぐらいあるヤツを前足で・・・
「ニギャッ!」
肉球に走る激痛!
何が起こったのだ?
まるで右前足に心臓があるみたいにドクンドクンしている。
よく分からないが、黄色と黒のストライプは避け、今度は巨砲ぐらいのお腹をしている背中部分が黄色いやつを・・・
「ニギャギャッ!」
同じく左前脚にも激痛が!
この時既に我輩の右前足は倍以上の大きさに・・・。
あれ?
我輩なんだかクラクラするぞ?
もしやこれが噂に聞く熱中症とやらか?
悪化する体調に、その場で蹲ってしまう。
すると一匹の猫が我輩の下へ。
『ニャゴローお前凄いな!』
興奮した口調で話す彼は近所に住むニャー吉。
我輩には彼の言う意味がよく分からない。
『スズメバチと熊蜂の戦いにチャチャを入れるなんて勇者じゃないか!』
「ニャニン?」
熊蜂?
スズメバチ?
あれはクマゼミとアブラゼミではないのか?
『熊蜂も必死に抵抗していたから、あれはメスだな。毒性は弱いけど針あるぜ。』
いやもう刺されたし・・。
それにスズメバチって、確かこの国で一番人間をぶっ殺している生物じゃ?
しかも一回目は耐えれても二度目がヤバいんじゃなかったっけ?
『俺はもう逃げるぜ。さっきニャゴローが叩いたやつ森の中へ消えて行ったから。』
ムム?
ヤツが森へ消える事のなにかヤバイのか?
『お前もヤツの仲間が来る前に逃げろよ。じゃあなっ!』
ニャー吉は走ってこの場を去って行った。
それにしてもおかしな事を言う。
虫如き下等生物が集団行動をするわけなど・・・・あ!
全身スズメバチに襲われた我輩。
それを目撃した公園を管理する人間達に、そのカラーリングから”テンちゃん”とあだ名をつけられた。




