吾輩は毒にそこそこ耐性がある!
「ニャゴロー今日は美味しい物あげるね。」
どういった風の吹き回しか?
美也殿が我輩に食べ物をよこすなど、アトニャンティス大陸が隆起する前触れかなにかか?
「生のブドウは毒らしいから、干したものをあげる。」
ハハァーン、さては我輩を騙そうと企んでいるのだな?
その手に握る物はどう見てもシカの糞。
そこまでバカではないぞ?
「ほらニャゴロー、お口開けて!」
しかしガッチリ体全体を押さえられている我輩。
抵抗虚しくシカの糞をを口の中へ大量に押し込められる。
「グルニャ・・・・ニャン?」
ムム?
結構いけるではないか?
甘酸っぱい味に半生のソフトな食感。
シカの糞もバカにしたものではないな。
美味しさのあまり、すこぶるガッツいていた我輩。
ここで美也殿の熱い視線に気づく。
「・・・。」
フッ。
我輩のルックスも大したものだな。
あの暴君美也殿まで虜にしてしまうとは。
「おかしいなぁ?外国では結構症例の報告があるんだけどな?」
「ニャーン?」
早口で僅かに聞き取れた言葉は”おかし”と”結婚しよう”のみ。
それを踏まえて考えるに、美也殿は我輩と結婚したいと言いたいのか?
そして毎日ご飯はお菓子をくれるって?
最高ではないか!
いっそ毎日このシカの糞でもいいのだぞ?
などと言っているうちに与えられた30粒ほどを全て平らげる。
ヒジョーに美味であった。
{グルルルルル・・・}
「グ・・グルニャ・・・。」
ここで緊急事態発生!
お腹がグルグル言い出した。
これは間違いなくピーピーシャーシャー。
「お!やっと来たみたいねニャゴロー。部屋汚すといけないから暫くお家に入ったら駄目だからね!」
我輩は美也殿に首の皮を掴まれて敢え無く外へ。
「これで干しブドウも猫には毒なのがハッキリしたわね。なら次はコーヒーでも飲ませてみるか。」
彼女が何を言っていたのかは理解できないが、現在我輩自体がエマージェンシーなのはハッキリしている。
肛門に力を入れて、よろめきながらへっぴり腰で歩く我輩。
意図せぬ脱糞から生ずる汚名を防ぐためにも、ゴミ虫の庭園までなんとか耐えなければ!
しかしその思いも虚しく、玄関横にあった御子息の自転車に大噴射!
最後の最後でサドルまで辿り着いたのは褒めて頂きたいものだ。
趣を変えて黄色いイスの自転車もオツなモノではないか御子息よ。
寧ろ感謝してほしいぐらいだ!
次の日、肛門をコーキングされた白黒の猫が近所のあちらこちらで目撃された。




