吾輩は伝説のキノコを売り損ねたのである!
更に続き。
クロス業者とのコラボを終えた我輩。
次なる部屋へと足を運ぶ。
「ウニャン?」
ここは我輩の苦手とする風呂場らしい。
しかし本家のソレと比べるに、相当小さいのではないか?
フム・・・まだ水は来ていないようだ。
先ずは蛇口のレバーを前足で持ち上げる。
次はその近くに付いているダイヤルを赤い方へグリグリっと。
突起物を押さなければ回らないのに苦労するも、そこは我輩仕事師なのでやり遂げた。
ここで少し歯が痒かったから、シャワーなるホースをカミカミする。
気持ち良すぎて穴が開くほど噛んでしまった。
古い木造の家にある浴室だと、壁はタイルと呼ばれる陶器が貼られている。
これに爪を引っかけて剥がす仕事が大変気に入っているのだが、最近は滅多に見かけない。
床も壁もデコボコの割には肉球触り感がツルツルなのだ。
こうして人類の進化と共に古い技術は駆逐されていくのだろう。
そんな事を思う我輩は、少し寂しい気もした。
浴室を出ると、不思議な場所へ出た。
一見普通の壁や廊下なのだが・・・
そこで本能の趣くままに行動してみる。
まずは試しにあちらこちらを引っ掻くことに。
「ニャッ!?」
床がずれた!
冴えわたる野生の勘が我輩の探求心を掻き立てる。
これが噂に聞く地下室か!
好奇心旺盛な我輩がそれを見過ごすはずもなく、いざ冒険へ!
細心の注意を払い、一歩・・・また一歩と、警戒しながら前へ進む。
{ガタン!}
「ニャギャァァァァァァァァァァーーーーッ!!!」
不意な物音に思わず大鳴きをしてしまった。
我輩ビビりだっつーの!
数歩先に物音の原因が転がっているのを発見。
あれはもしかして『伝説のキノコ』では!?
それは以前美也殿がタブレットで見ていた中国のニュースで特集されていた。
我輩の前に転がっているのは正にソレではないか?
大発見と思い、速攻咥える。
これを売れば大金持ちに・・・
{ガシッ!}
「ブニャ!!」
不意に首元を掴まれる。
一体何が起きたのだ?
「つーかまえた・・・。」
「ニャギャァァァァァァァァァァーーーーッ!!!!!」
それは昨日出会った”糞ババァ”その人だ。
しかし今回はクスリとも笑っていないこのメス。
何故だが我輩死の予感が・・・。
「この部屋は二度と入っちゃだめよ。その咥えている物も離しなさい。もし今度ここで見かけたらニャゴローちゃんの股についている蚕の繭を潰しちゃうからね・・・マジで。」
そしてこの部屋は我輩の営業先から削除された。




