吾輩は逃亡者である。
「ニャゴロー待てっ!」
我輩は今、三河家の御長女である小織殿に追われている。
理由が何なのかさっぱり分からないのだ。
かく乱する為、先ずはゴミ虫に体当たり!
そして体を擦りつける。
「あぁっ!?な、なんだよニャゴロー!」
「おじさんニャゴロー捕まえてっ!」
タイムロスをした!
小織殿に追いつかれそうだ!
ゴミ虫バイク店の本宅へ逃げ込めっ!
慌てて飛び込んだこの部屋は古い油臭が強く、誰のものかさっぱり分からない。
ダッシュで何かの家具らしき下へ潜ってじっと耐える事に。
暫くドタドタ騒がしかったのだが、それもやがて収まると、
「チッ!逃げ足の速い・・・一旦家へ帰って仕切り直しね。」
フゥ。どうやら嵐は去ったようだ。
安心したのを機に、改めて周りを見ると、どうやらここは寝室の様だ。
一応ベッドの上にある布団の隅々へ体を擦りつける。
おや?
あれはふかふかの衣服が入っている”タンス”ではないか?
得意の前足を使って器用に引きだすと、中にはびっしり衣料品が。
{クンクン}
臭いをかぐと、非常に僅かだがゴミ虫の臭いが・・・。
柔軟剤とか言われる強烈な香りがする液体のせいで、イマイチ嗅ぎ分け辛い。
えぇぃっ!
「ブニャンッ!」
その中へダイブを敢行。
バタバタと暴れる我輩の姿はまるで海を泳ぐシロクマ。
引き出しの中身はその鋭い爪でスタスタに・・・。
これを全ての引き出しで行う。
序に、まるで山の如く積み上げられたまだ組み立てられていないミリタリー系のプラモデルへ体当たり。
ひっくり返ってグチャグチャになったパーツの上でもうひと暴れ。
満足した我輩は、何故にこの部屋へいたのかという理由も忘れて帰宅する事に。
ストレス解放、ウッキウキの我輩は鼻歌交じり。
今日のご飯はなっにっかなー♪
「つーかまえたっ!」
「ニギャッ!」
玄関をくぐった途端に小織殿の手に落ちる。
そして・・・
「今から病院行くよニャゴロー!ったくもう、どこでこんなダニやらノミを拾って来たのよ?」
そして我輩は涙を流すほど大好きな動物病院へ・・・。
因みにゴミ虫親父も一週間後、病院へ通う運びとなる。
ライム病と言うファンキーな病気にかかって。




