吾輩は毛深くなどないのである!
暑い!
今日も仕事をサボってダレるとしよう。
湿度と高温で、体感温度が著しく上がるこの国。
アフリカの方がよほどマシとの声も高い。
そんな訳でこの季節はキライなのだが、他にも理由がある。
夏休みというおかしな制度だ。
つまり美也殿が日中も家にいるのである。
それは御子息殿も当然当てはまるのだが、今年は忙しいようで殆ど家にいない。
現に今も合宿とかに行って留守なのだ。
「ニャゴローどこー?お土産があるのー!」
何!?
お土産とな!!
よく御子息殿を訪ねてくる女性達が持参するアレ等の事か?
ケーキなる甘味の王やホニャララ牛なる霜降りの肉などのアレか!?
ダッシュでリビングへ向かう我輩。
辿り着いたその先には・・・美也殿がいた。
「つーかまえた!」
「ニャニャン?」
お土産なる食べ物はどこにもないではないか?
さてはこの娘、謀ったな?
「じゃっじゃーんっ!これは電動バリカンと言って毛を刈る機械よ。夏なのにアナタ暑苦しいんだもん。」
バリカン?
この娘は何を言っておるのだ?
動物に体毛があるのは当然だろう。
もし剥き出しだったら怪我が絶えないぞ?
「ニギャアァァァァァァァッ!!!!」
そんな思いも虚しく、容赦なく体毛を刈り取る美也殿。
どこで手に入れたのか分からないそのバリカン。
時々毛が噛んで”切る”のではなく”毟る”になっている。
歯科検診で行われる歯茎テストの後と同じく、我輩の身体は至る所で出血。
この悲鳴が聞こえないのか!
「ほーら終わったー。とっても涼しいでしょう。」
まぁ、確かに涼しくはあるが・・・。
それ以上にヒリヒリして痛いのだ。
しかし我輩はこう思う。
仕事をサボった罰が当たったのだと。
だから今回は敢えて苦汁をなめることにしようと。
その後、近所でスフィンクスと間違われる野良猫が多数出没したのだった。




