吾輩はブラックサファイアを欲するのである。
最近我輩の住む部屋へ頻繁にブラックサファイアが出現する。
寧ろ嬉しい事なのだが、これが意外にも採集に手間取るのだ。
少し他所見をすれば瞬間移動。
加速装置でも備わっているのだろうか?
たまにうまく押さえる事が出来たと思えば中身の大解放。
思いのほか脆い。
睨み合いの均衡を突然破る不意なタッチアンドゴーの離陸。
決まってこちら側へと向かってくる。
窮BS猫へ向かうとはこの事だ。
・・・今作った言葉だが失敗したようである。
駄々滑り?
それはさておき、以前美也殿へお中元を贈った時に泣いて喜ばれたのを思い出す。
だったらという訳で、彼女の部屋へ誘導する事に。
となれば、先ずはブラックサファイアの塒を探そう。
今寝ているのは一度も見た事のない御父上の書斎。
本棚と呼ばれる場所から、アルファベットで書かれた古臭い皮表紙の本を、何冊か放り出して出来た空間を利用している。
不愉快な事に丁稚も同じ部屋の床を利用しているのだ。
尤も、上で寝る我輩の方が立場は上と言えるのだが。
なんかムカついてきたからいつもの様に下へ向かって放尿をしてやる。
しかし我輩の下はゴミ置き場に利用されているらしい。
数個の段ボール箱が山積みされている。
毎回の放尿により、シミだらけなのが滑稽だ。
この時サササと動く黒い影を確認。
大至急現場へ直行。
とはいうものの、単に棚から飛び降りるだけなのだが。
本来綺麗好きの我輩はとしては触れる事すら憚れるのだが、渋々シミだらけの段ボールを動かすと・・・
「ウニャアァァァァッ!!!」
ビビったー!
マジビビったーっ!!
箱の影かと思ったら、それらは全てブラックサファイアだったのだ。
これだけ数が多いと、さすがに我輩でもチビる。いや、チビった。
遂にブラックサファイアの住処を発見!
どうやらヤツラは湿気のある場所を好むらしい。
これらを総合すると、ヤツらは我輩のオシッコに集まってくるようだ。
それならばと、至る場所へマーキングを。
丁稚と美也殿の部屋周辺は特に念を入れて行う。
この数時間後、同室の丁稚及び美也殿の部屋から血管と神経の位置が入れ替わるほどの破滅的な悲鳴が聞こえたが、仕事を終えた安堵感で無視を決め込み、ぐっすりと眠り続ける我輩であった。




