吾輩は凍え死にそうである。
さて、我輩今日は夜勤である。
昨晩の事、この家に住むボス殿が、
「ねぇお姉ちゃん。会社で松阪牛のサーロインもらったのよ。今安成も美也も寝てるから内緒にしておこうと思って。2枚しかないのよね・・・。」
「食べる食べる!でも今日はもう12時過ぎてるから明日かなー。二人に見つからないよう隠しといてよお母さん。」
そして凍える箱の中へしまうところを我輩この目で確と見た!
しかし今はまだ二人で”サケ”なるものを飲んでいる最中。
功を焦るとろくなことは無い。
数時間程試練の時を耐える。
「さてと、じゃあお母さん私寝るね。」
「私ももう寝るわよ。・・・ニャゴロー悪さしてはダメよ。」
釘をさすところは流石にボスと言ったところか。
そして更に10分程待つ事に・・・。
時は来たれり!
完全に静寂と化した三河家のダイニングキッチン。
先ずはテーブルに飛び乗る。
瞬間強烈な刺激臭!
我輩この臭いが苦手なのだ。
中身が少し入っているグラスごと下へ落とす。
更に本体である”山崎18いやー”のボトルを倒す。
この時先端部分に肉球を当ててクリクリ回すと忽ち中身が外へ。
流れ出る琥珀色の液体が纏う臭いには堪らず我輩もテーブル外へ脱出。
いよいよメインである凍える箱へ。
しかしこれがなんとも開けるのに苦労する。
とにかくデカいのである。
そして重いのである。
だがその苦難を超えればそこにはパラダイスが待っている。
様々な仕事で培った技術を応用し、あの肉球この肉球で必死にチャレンジ。
そして・・・
オープンザドアー!
そこには夢見る楽園が。
我輩にとってはエルドラドそのもの!
迷いなく中へ入ると・・・パタンと音が。
同時に大停電で我輩大パニック!
こうなってしまえば夜行性もクソもない。
我輩の高感度カメラを凌ぐ目でさえ殆ど見えない。
ってか寒いっ!!
様々な手を使い脱出を試みるも、寒さと疲労で眠ってしまった。
山岳遭難でよくあるアレの様に・・・。
次の日、一家全員がステーキを食べたらしいが、ご子息と美也殿が食べたのは何肉なのだろうか?
少なくともサーロインは2枚しか・・・。




