吾輩はゴン太くんの身辺調査を行うのである!①
我輩の業務が増えた。
この町に獣が多数住み始めたからだ。
※ニャゴローのせい
どこからやって来たのかは知らないが、その数なんと数十匹!
主に犬ッコロで、殆どが鎖につながれているからこれ等は良しとしよう。
問題は公園に塒を構えたレトリバーである。
世間では〝ゴン太くん〟などの可愛らしい愛称で呼ばれている。
しかしその中身は鬼畜!(ニャン吉、ニャン太郎、ニャー吉談)
主に被害を受けているのはバカ三匹(ニャン吉、ニャン太郎、ニャー吉)。
ヤツ等は頻りに何とかしてくれと我輩へ異議申し立てをする。
……?
違うな、嘆願するが正しいのか?
ま、いっか!
そんな依頼を受け、営業の傍ら探偵業に勤しむ我輩。
行く先々で情報収集。
訪問十数件目であることに気付いた。
バカ三匹以外はゴン太くんの事を悪く言う者がいないことを。
いや、寧ろいい噂ばかりで……ウ~ム。
となれば調査方法を根本から見直さなければなるまい。
営業の合間にする仕事ではないな。
明日は朝から探偵業に集中するとするか。
―― 次の日早朝 ――
うーブルブルブル。
この糞寒いのにバカな仕事を引き受けたものだ。
先ずは朝一番からゴン太くんを監視。
現在はまだ小屋で眠っているが、これから今日一日彼を尾行する。
{コケッコッコー!}
(公園内で飼育されている名古屋コーチン)
お、起きたな。
もしかして鶏を目覚まし代わりに使っているのか?
しかし寒いのか、小屋から顔だけ出して寝そべったまま動こうとはしないな。
あ!
ニャー吉だ!
小屋の裏に隠れても尻尾のカラーリングで分かるぞ!
お、ゴン太くんが鼻をクンクンしてる。
どうやらニャー吉に気付いたな。
しかし別段なにかをするワケでもなさそうだ。
再びゆっくりと瞼を閉じたがまた眠るつもりなのだろうか?
ムム!?
ニャー吉が動き出した!
音を立てずに小屋の前へ行こうとでもしているのか?
もしかして気付かれないようにしてる?
アイツはやはりバカだな。
既にバレバレだっつーの!
とうとうゴン太くんの前に。
しかし気付いているはずなのになぜ……?
それにしてもニャー吉は何をしようとしているのだ?
腰を落として右手を掲げているが……もしかしてネコパンチか?
「フギャッ!」
あ!
ゴン太くんが目を開いて先にニャー吉の顔を舐めた!
アハハハハ!
涎でベッタベタ!
しかも不意を突かれたニャー吉は全身総毛立てて上へ5メートルは飛んだな。
余程ビックリしたのか、着地後は足を滑らせドリフトしながら逃げていくし。
なんと間抜けな絵だなニャー吉よ。
キサマの恥ずかしい姿を我輩の脳細胞へバッチリインストールしたぞ!
あ、おい!
そっちはダメだ!
まさかパニくって方向が分からなくなっているのか?
それ以上行けば新井君の……
「グルルッラッシャーッ!!」
「ニギャッ!」
あーあ。
あれが噂の断末魔か。
ご愁傷様だよニャー吉。
少なくともこれでキサマへの報告義務は無くなったな。
報酬を貰い損ねたのは残念だが仕方あるまいて。
さて、もう少しゴン太くんを観察するか。
まだ他の猫からも依頼を受けているのだから。
今回明らかになったのは、ニャー吉の自業自得って事。
ゴン太くんは愛情表現で舐めただけなのにビビッて自ら地獄の扉を開いた彼。
幸い、公園でビーグル犬を散歩していた病院マダムに発見されたニャー吉。
数日後、全身包帯ミイラの首パラボラアンテナ姿が園内各所で目撃された。




