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仕事猫ニャゴロー  作者: どてかぼちゃ
192/218

吾輩は社会見学に出かけるのである。①


 「ウンニャー!」


 驚きの声をあげる猫達。

 その圧倒的迫力に固唾を飲む。


 

 この寒さでは仕事もままならぬ故、従業員に慰安会を持ちかけて見た。

 彼等は即答で〝ニャッニャゥェー〟と。

 

 もしかして〝オッケー〟とでも言いたかったか?

 偉そうに……人語を解するのは我輩だけで充分であろう?

 見せしめに一番大きな鳴き声だったニャン太郎の肛門へ唐辛子をプレゼント。

 隣にいたニャー吉が猫パンチで更にそれを押し込むと、飛び上がって大喜び!


 ハァ……

 あの細さではイマイチ効き目が薄いようだ。

 今度からハバネロにしてやるか。


 ともあれ、今はそのツアー真っ只中。

 先ずは商店街外れ大工店の近くにある親子経営の家具屋を訪問。

 目的地はその裏手にある本宅である。


 余程あくどい商売をしていたのか、それはそれは立派な日本家屋。

 優に1000坪を超えそうな敷地に武家屋敷かと言いたくなるほど巨大な平屋。

 

 だが、我輩が猫達に見せたいのはこんなものではない。

 そこの玄関わきにある檻の中身を見学させたいのだ。


 そして今、その目的地前へ。

 彼等が度肝をぬかれていたのはそこで飼われているグレートピレニーズ犬。

 この白い悪魔こそ見せたかったのだ!

 どうだ貴様等!

 凄いだろう!


 「ウンニャー!」


 猫達は一斉に驚きの声をあげる!

 犬の姿はまるで白い獅子!

 これに驚かずしてなにに驚くと言うのか!?

 

 これを見せたかった理由は単純明快、単にこの町ではここにしかいないから。

 べ、別に檻の中にいるから悪戯しに来たワケではないんだからね!

 

 その心情を知ってか、大型犬と言えど我輩達に少々ビビっておる様子。

 猫の数およそ50匹。

 かの悪魔犬も、この多さに委縮しておるわ。


 だが安心したまえ。

 当初悪さの一つもしてやろうと思ったが止めることにした。

 体格に合わない小さな檻へと閉じ込められた貴君に同情。

 それにそんな舐め目線でこちらを見られれば気の毒にもなろうて。


 だから自由を与えてやろう。

 一生恩に着るのだぞ!


 檻に鍵はかかっておらず扉と本体の間に鉄の棒がかってあるだけ。

 こんなもの直ぐに解除できる。

 

 見くびるなよ?

 その気になれば毛細血管認証でも突破してやるわ!

 我輩から身を守ろうとするならば溶接でもしとけや!


 そして数匹の猫で檻をオープン。

 これで犬ッコロも大喜び!

 ……のはずが、なにやら少し様子がおかしい。

 まだビビっているのか?


 すると彼は何処かへ向かって歩き始めた。

 数歩歩くたびに振り返り、ついてこいと言っている模様。

 黙って彼に従い同じ方向へ。


 

 しかし広いなこの屋敷は。

 それにしてもヤツは一体どこへ行こうと言うのだ?

 そこを曲がれば裏手になるではないか?


 家の角に差し掛かったその時!

 一斉に空気を裂く大小様々な犬の鳴き声が!


 「!」


 裏手に回った直後、視界に入ったその光景に我輩達は愕然とする。

 なぜならそこには狭い檻に閉じ込められている複数の中、大型犬が!

 ひぃーふぅーみぃ―……その数無限といったところか?

 

 「クゥ~ン」


 ピレニーズ犬はどうやら仲間も開放してほしいようだ。

 しかしこれ程の数を野に放てば我が猫族が追いやられるのでは?

 

 そんなワケで緊急会議をこの場にて決行!

 ニャンニャンニャンニャンと複数の猫達が意見を交えるハメに。

 そして出た答えは……  


 ―― つづく ――



 この日、家具屋の本宅にある電話は鳴りっぱなし状態に。

 主に近所からの苦情で。

 勿論理由は動物たちの鳴き声。

 

 平日の日中だということで、家族も不在となり受話器を取る者も皆無。

 延々と鳴り続ける固定電話が更に五月蠅さへと拍車をかけた。



 

 

 

 

 

 

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