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仕事猫ニャゴロー  作者: どてかぼちゃ
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吾輩はスターダムをのし上がったのである!


 全身大火傷を負った我輩は今、商店街で時の猫である。

 どこへ行ってもキャーキャーと人々が大騒ぎ。

 有名芸能人の気分がなんとなく理解できる今日この頃。


 八百屋へ行ってはパシャ―!

 魚屋へ行ってはパシャ―!

 行く先々で動画や写真撮影攻撃に見舞われる。 

 まぁ、ちょっとだけ気分はいいかもだが。


 幸いにして強靭な体だった我輩は火傷面積40%もなんのその。

 次の日には全身包帯ながらも、既に病院内を歩き回っていた。

 更にその次の日には所々ガーゼを当てられただけで、もう外出。

 勿論、マダムに服をキッチリと着せられて。


 最近はどこが我輩の塒か分からないな。

 三河家よりも病院にいる時間の方が多いかも。

 

 なにはともあれ、こうして体力は完全に回復済み。

 もとから体調も悪くはない。

 だからこんな怪我如きで仕事を休むとは不届き千万と自分に喝を入れる我輩。

 営業の為、商店街へ顔を出したらこの有様だったというワケだ。


 しかし一つだけ腑に落ちないことがある。

 八百屋にしても魚屋にしても。我輩が顔を覗かせると迷惑そうな態度を見せる。

 なぜだ?


 肉屋に至っては霜降り肉の破片を我輩の目の前へそっと……

 なるほどな、スターの我輩に貢物の献上か。

 

 などと思いきや、どうやらそうではないらしい。

 チラつかせた後、肉をポイーっと遠くへ投げ捨てたのだ!

 習性で大至急拾いに行くも、咥えて戻るとなぜか店のシャッターが下りていた。


 うーむ、今日は早く店じまいする予定だったのだろうか?

 だからその前に顔を覗かせたスターへプレゼントをくれたとか?

 ……なんとも照れるなオイ!


 まあいいや。

 この後すし屋やウナギ屋と回るところはまだまだある。

 一丁頑張るか!



 その日の夕刊にある記事が掲載された。

 見出しは『商店街を徘徊する化け猫』と。

 『その姿は服こそ着ているものの、頭頂部だけチリ毛が残ってキモイ』とも。

 そして『不幸を呼ぶ悪魔の猫』とも……

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