吾輩は目出度くなどないのである!⑤
新型兵器〝モチ〟により、三途の川をもう少しで渡り終えるところだった我輩。
生還後、爆発物だと思っていた諭吉達の安全を確認、いつもの場所へ隠す。
再び悪用されたらかなわんからな!
「あ、三河さんとこのニャゴローじゃない? こっちへおいで」
その帰り道、家のすぐ手前でバイク屋の雌鬼に捕まった!
いつもゴミ虫が拷問されているのを知っている我輩は全身が総毛起つ!
ついに的が我輩へと移ったのか!?
「今日はお正月だからこれあげる。 まあ、お年玉ね!」
魔女は我輩の口へおかしなミイラを押し込んできた!
ムググ……
……
アレ?
なんだか美味いぞ?
お年玉ってもしやコイツのことか?
「コレここに置いとくからね、沢山あるからっていっぺんに食べちゃダメよ? 体に良くないらしいから。 さて、私もお宮さんに行くとするか!」
どうやら何処かへ出かけるらしいな?
ゴミ虫も家から泡食って出てきた!
「遅いんだよアンタ! 女の私より遅いってどういう事?」
{ゴチッ!}
「ウガッ! ……ご、ごめ~ん」
夫婦漫才を暫し観覧。
いや、どつき漫才か?
泣き顔のゴミ虫に何だか胸がスッとした。
「クッチャクッチャ……」
それにしても美味だなコイツは?
噛めば噛むほど味が出るぞ?
こんなミイラなら大歓迎だ。
それにしてもこれは一体何だろう?
またこの強烈な臭いが何とも言えない。
お年玉サイコー!
「ニャ?」
お!
ニャン吉達ではないか?
お前等もこっちへ来い!
このお年玉はペッタンコにした一升瓶ほどの大きさがある。
きさま等全員に分け与えても余ろうて!
こうして三河家玄関前を数十匹の猫が占領。
ニャゴローのお年玉に群がるその姿は死肉に集まるハゲタカ顔負け。
道行く人間の目にはとてもおぞましく映った事だろう。
だが、猫達は知らない。
あのハゲタカでさえ食中毒となって死んだりする事を。
この後ゲロと下痢にまみれ、下半身を引きずって這う猫の姿が通行人によって目撃されると、休みだというのに保健所から衛生班が三河家に緊急集合、建物等全て消毒されたのち彼等は全匹回収されたそうな。




