吾輩はやっぱり騒がしい我が家が大好きである!
お通夜状態だった三河家に光が戻る。
入院中の御子息が退院した。
一時生死の境を彷徨ってはいたものの、無事人生のレールに舞い戻ったのだ。
これも全て我輩のおかげと言えよう。
となれば彼を迎え入れる準備しないとな。
居候のメスと我輩で自分流にカスタマイズされたこの彼の部屋を。
特にベッド周辺は我輩の毛や臭いだらけ。
ニャゴロー臭で埋め尽くされている。
これは意図があってしていること。
ニャレルギー性鼻炎の御子息。
花粉は勿論の事、猫アレルギーも持ち合わせている。
その軟弱な体質に抵抗力をつける為、敢えて我輩色にベッドを染めているのだ!
全て御子息を思っての事である!
時折居候のメスが素っ裸で何かやっているのはまぁ見なかったことにしよう。
彼女もまた、我輩と気持ちは同じはず。
それと、近くに住むメスの集団も時折やって来ては何かしていたが……
その度に高価な猫缶やクサヤをくれるから知らんぷりを通そう。
どう見ても口止め料なのだから。
※『あの人はおばはん?』参照
そして彼は三か月半の時を超え帰ってきた。
が……
「なんだこれは……!?」
おかしい。
居候のメスはともかく我輩のしうる最高峰のサプライズを施したのに……
御子息の反応は予想外だな?
枕は低反発の素材へ香水をしみこませた。
布団は清潔感溢れるよう、中の羽毛をほじくり返して一面真っ白に。
タンスは全開ですぐに着替えられるよう、衣服類もその辺りへセット。
そして極めつけは机の上!
居候や他のメスたちが並べた得体のしれない様々な機械。
その隙間隙間へケーキとかいうものに見立てた巻き糞を。
しかもこきたてホヤホヤなのである!
それなのになぜ!?
御子息の顔は喜びより絶望のような……?
「弟子よ! 大至急こっちこんかあぁぁぁぁっ!」
家の屋根が吹き飛ぶような鳴き声を発する御子息!
これには血相を変えて居候のメスが部屋へ駆けつけた!
その後は文字で表せない程可愛がられる居候の姿が……
なんだ、やはり喜んでいるのではないか。
メスよ、我輩貴様が少し羨ましいぞ?
え?
我輩はどこにいるかだって?
御屋形様にきつく言われているから余程の事が無ければ彼には近づかない。
だから窓の外にあるベランダから見ているのだ。
なにせ彼は猫アレルギーなのだから。
……それにしてもクシャミしないけど、治ったのかな?
御子息にブチ切れられて数十分間折檻を受けた弟子と呼ばれる居候の垂香。
彼女はこの後ニャゴローを捕まえ、それ以上のお仕置きをしたのだとか……




