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仕事猫ニャゴロー  作者: どてかぼちゃ
162/218

吾輩は新大陸に立つのである。⑥


 「さてニャゴロー、明日帰るわよ。乗り継ぎの関係で朝5時出発ね」


 小織殿は我輩を膝の上に乗せ、背中を撫でながらそう言った。

 となれば、本日が事実上の最終滞在日か。

 転勤する事をキチンと皆に伝えなければな。


 とりあえず、空腹を満たすために恒例のバフェィへ。

 殆ど全ての宿泊場所にある食べ放題のレストラン。

 我輩が訪れるのは表ではなく主にバックヤードの方だがな。


 軽くソーセージを頬張り、先ずはここの主である巨大ネズミに挨拶。

 世話になったと。


 なにも猫は必ずネズミを敵視している訳ではないのだ。

 面倒を見て貰えばお礼もする。

 郷に入れば郷に従えの精神で彼にこの街のルールを教えて貰った恩もある。

 それを無視して姿を消すなど、我輩はそんな恩知らずではないぞ?


 ほぼ全ての食事場所には必ず主がいる。

 全部は無理だが、最終日との事なので、行けるだけ行ってみよう。


 

 ― 夕方5時 ―


 全てとは言わないが、大体の場所へ挨拶をしてきた。

 今度は世話になった人間へ同じように挨拶。


 特にこの宿の従業員には世話になった。

 日焼けで黒いやつらが特によくしてくれた。

 それは何処へ行っても同じ。


 逆に色白の丸太は我輩に水をかけたり物を投げたりしてきた。

 巨木になればなるほどその傾向が強かったな。

 そいつ等には毎回バックに回り、背中に飛びつき放尿してやったわ。

  

 それに至る所で日焼けと色白の喧嘩を見かけた。

 仲が悪いのだろうか?

 同じ種族だろうに……

 猫である我輩では人間の考えなど到底理解できないな。

 

 

 ― 夜12時 ―


 そして思う所ほぼ全ての挨拶が終わる。

 行く先々で餞別を貰った。

 100%肉系の食べ物を。


 我輩はこのままフロントとやらで待機。

 時間になれば小織殿が迎えに来てくれるだろうて。


 

 ― そして ―


 「センキュー! ほらニャゴロー、帰るよ! アンタもこの人たちにお礼を言いなさい」


 こうして色々あったこの街を後にする我輩。

 クジラ施設へ行く車から見るその雄大な景色にふと思う。

 

 我が猫生、知らないことが多々あるな。

 これからも時々小織殿のカバンへ忍び込むことにしよう。

 そんな事をトクトク鼓動する小さな胸の中で誓った。



 ― そして ―


 「ただいまー!」


 「お帰りおねーちゃん! あっ! なによニャゴローその体は!?」


 「ごめ~ん、ホテルのフロントに任せて置いたらこんなんになっちゃった」


 「まったく……三倍ぐらいに太ってるし」

 

 

 気が付けば我輩も丸太になっていた。

 

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