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仕事猫ニャゴロー  作者: どてかぼちゃ
154/218

吾輩はぬいぐるみである!③


 一時的にはガタガタ揺れたものの、今は平穏を保っているこの乗り物。

 どうやら食事タイムなのか、次々と運ばれてくる豪華な品々。

 三河家では決して見る事のないコース料理と見受けられる。

 

 そんな中、何やら騒がしくなる後方部。

 小織殿が食事をしている隙に抜け出し、様子を伺って見る事に。


 こっそり座席の下から下へ何度も細かく移動を繰り返す我輩。

 意外と見つからないものだな。


 思うより簡単に後部へと漕ぎつけた。

 そして我輩の目に映るのはなんと!

 これぞまさに地獄といったような光景が広がる!


 延々と並べられた小さな座席。

 小織殿が座る座席に比べ、格段に小さい。

 そこには空席の一つも見当たらず、ぎゅうぎゅう詰めの人間が!

 ここはもしや強制収容所ではないか?


 そのくせ金髪の相撲取りが結構な数いるではないか。

 これは最早拷問では?


 どうやらコイツ等も今は食事の様である。

 どこぞのクサイ飯の様にプレートへ一緒くたに乗せられているのがまた滑稽。

 それでも奴隷には上等な食事か?


 食べとる食べとる。

 得体の知れない食事モドキをガツガツと食べている。

 飢えたキツネでもそんなにがっついたりしないわ!

 ワハハハ!

 

 しかし、心なしかこちらの方が落ち着く我輩。

 なんとな~くだが、肌に合っていると言えば聞こえが良くない?

 正確には同じ穴の狢臭がプンプンするのだ。


 本来ならばここに本腰を据えたい。

 だが、小糸殿にじっとしていろと口が酸っぱくなるほど言われている。

 (ような気がする)

 

 万が一見つかると、再び玉ゴリ制裁をされかねない。

 仕方がないから元居た場所へと戻る事にするか。


 

 そして座席へ戻った瞬間事件は起きた。

 我輩の鼓膜が破れたのだ!

 

 「ニギャッ!」


 ポーンとなって何も聞こえない!

 痛い様なポーっとするような、なんとも不愉快な感覚に襲われた!


 「ちょっとニャゴロー!静かにしないと見つかっちゃうでしょ!?って、アレ?アンタもしかして耳がおかしくなったの??気圧の変化にやられたんだ。へー、猫でもなるんだね。」


 そう言いながらも彼女は我輩の股にある二つのアクセサリーをコロコロとする。

 大声を出していたら間違いなくグリッとされていただろう。


 「今から私が耳の違和感を取ってあげるから、ちょっとだけ我慢しなさいよね。」


 小織殿が我輩になにやら処置を施してくれるようだ。

 きっと人間界には耳がポーン病を直す手段が確立されているのだろう。

 となれば彼女に全てを任せるとするか。



 こうして我輩は再び眠る事となる。

 小織殿に耳から思いきり息を吹き入れられ、鼓膜の完全破壊による衝撃で失神。

 その吐息は、脳をも震わせて深刻なダメージをも残したままに・・・。

 

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