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仕事猫ニャゴロー  作者: どてかぼちゃ
150/218

吾輩は職務放棄などしてないのである。③


 毛もそこそこ伸び、漸くハチワレカラーがクッキリとしてきた我輩。

 それでも寒さには勝てず、まだまだ着ぐるみが手放せない毎日。


 「あら猫ちゃん!家のニャちゃんと同じね!!ウフフ。」


 病院のミセスにはすっかりお世話になっている我輩。

 いつかお返しをせねばとシミジミ思う。

 ゴミ虫には違う意味でのお返しをせねばなるまいがな。


 さてと、いつまでも仕事をサボる訳にもいかない。

 今日も商店街へ営業に行くとするか。


 「明日もちゃーんと家へ寄るのよ猫ちゃん。・・じゃあ行ってらっしゃいねー!」


 ミセスは最近我輩の行動を先読みするようになった。

 そんなに行動パターンが単純なのだろうか?

 だからといって別に危害を加える訳では無いから良しとしよう。

 

 そして病院を出た我輩。

 真っすぐ魚屋へ足を運ぶ。



 「らっしぁーらっしゃあぁぃっ!!!!」


 威勢のいい掛け声で客を必死で呼び込む魚屋の主人。

 コイツは脳みそが空っぽなのか?

 真昼間から買い物に来る人間などそうそういないだろう?

 ここで体力全開の大声を張り上げてどうする?


 「らっしゃあぁぁーーうがっ・・ゴホッゴホッ!!!」


 ほら見た事か!

 喉がパーになってしまったのと違うか?

 一番客入りの多い夕方にはもうその喉も役に立たないだろう。

 

 仕方がない、我輩が一肌脱いでやるとするか。

 ・・・この着ぐるみは脱がないけどな!


 店の前で丸くなる我輩。

 知らないうちに夢うつつ。

 そして・・・眠ってしまった。



 どれほど時間が過ぎたのだろう。

 背中にかかる重みで目覚める。


 「やだー!何この猫カワイー!!これ魚屋さんの猫ちゃん!?」


 「いやぁ。知らない猫でさぁ。服を着てるって事はきっとどこかの飼い猫じゃないんですかねぇ?はじめはウチの魚を狙っていると思ってビクビクしていたけど、どうやらそうでないらしいんでさぁね。何が目的なんだろ?」


 「イヤ~ン!超ラブリーッ!!!!」


 気付くと周りには人だかりが!

 次々と我輩を撫でまくる通りすがりの人や買い物途中の奥様達。

 タマ駅長ならぬニャゴローフィッシャーマンズワーフ代表ってとこか?


 そして魚屋は大繁盛!

 この仕事っぷりに我輩も大満足!

 

 ― 数十分後 ―


 どうやら波は去った模様。

 客足が緩むと我輩も帰宅の為に腰を上げた。

 ここで魚屋の主人が我輩の前へ。


 「よー、今日はお前のおかげで大繁盛だぜ!これはお礼だ。今が旬のサバの刺し身だ。高級なんだぜ?だから今すぐ食べな。時間が経つと痛むかもしれないしな。」


 鯖?

 かすれ声で何を喋っているか分からない。

 これが鯖という魚の身で、食べていけと言っているのはなんとなーく理解。

 言われた通り刺し身へと口を近づけると・・・


 「ニギャッ!」


 「あっ!テメーコノヤローっ!!!」


 一瞬で分からなかったが、何者かに刺し身を皿ごと全部奪われた!

 たしか猫だったような・・・


 「あのヤロー・・一瞬でよく分からなかったがシャムネコみたいなガラだったな。今のお前みたいだけど、もう少し汚かった。今度捕まえて酷い目に合わせてやる!!!」


 先程の刺し身はもうないようで、違うモノを数切れ頂いた。

 我輩にはどれも同じようなモノだけどな・・・。



 次の日、公園で腹を下してヨレヨレの猫が複数発見される事となる。

 特にニャン太郎が激しい腹痛を訴え、死ぬ一歩手前だったそうな。

 生の鯖は危険と他猫の身を以て学習したニャゴローだったとさ。

 


 

 

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