吾輩は罠などにひかからないのである!
公園内の食堂で一服していると、ニャン吉が凄い勢いでこちらへ。
それはもう、何かに追われているかのように。
一瞬我輩を含め、他の猫達も身構えるが、どうやらそうではないらしい。
ニャン吉は興奮気味にこう話した。
「フギャアァァー・・ウギャギャーッ。」
分かるかバカモノ!
標準猫言葉で話さぬか!
早口すぎてよく聞き取れないわ!
彼はボディーランゲージを取り入れて一生懸命伝えようとする。
しかし周りの猫はその意味がまったく理解できない。
これだから野良ってやつは・・・
そこは我輩、ニャン吉の意思をはっきり受けとめ通訳を。
全くもってこの星の生物は・・知能が全然足りないな。
まあ、我輩もそのうちの一匹であるけども。
ニャン吉が言うには、商店街でネズミ捕獲作戦が始まっているそうだ。
至る場所に鉄製の罠が仕掛けられているらしい。
ハテ?
結構色々な店にお邪魔するが、ネズミなど一度も見た事ないような?
どこからか集団疎開でもしてきたのだろうか?
いや、出稼ぎとか?
確認すべく、他の猫を引き連れ商店街へ。
ややや!
本当に罠があるではないか!
偶にはニャン吉も本当の事を言うんだな。
それにしてもやけにでかいぞ?
最近のネズミはミカン箱程もあるのか?
罠の周りを念入りに調査。
その時!
{ガーンガーンガーン!!!!!}
「来たぞーっ!!!!」
突如アーケード内のあらゆるものを共鳴させながら響くドラの音!
同時に肉屋の親父による耳障りな叫び声も!
不意を突かれた我輩達は自分勝手に散開!
一先ずこの場から退避!
{ガシャン!}
「ニャアッ!?」
{ガチャン!!}
「ブニャ!?」
なんだ!?
あちらこちらで罠の閉じる音が!
もしやこれは!
だが今はそんな事を考えている余裕はない!
ここから逃げ出すのが先決!
普通の動物なら路地や側溝の中、建物の下などに身を隠すが、我輩は違う。
こんな時は人混みに紛れた方が逃げやすいのだ。
美也殿の見ていたボーンで学んだ。
つまりは商店街の道路を堂々と歩けばいいのだ!
暫くして商店街を抜けると同時に全力疾走!
逃げ足だけはドラッグマシンよりも速い我輩であった。
― 数分後 -
無酸素運動で息も絶え絶え、ニャの所に駆け込む。
ここなら追っても来ないだろうて。
「ニャ~ン。」
お、ニャよ。
少し匿っておくれ。
序にこのドラ猫模様の着ぐるみも何とかしてほしいからミセスを頼む。
この後いつもの様に着替えさせられた我輩。
今度は三毛猫模様か。
こないだの青と白で腹にポッケのあるやつよりマシかもな。
それにしてもハチワレ模様はないのかね?
まるで我輩のカラーリングが不人気みたいではいか?
ブツブツ・・・
そして高価なおつまみを出され、ニヤと一緒に食べながら話を。
そこで驚愕の事実を知らされる。
どうやら最近商店街は三毛猫とドラ猫に悩まされているらしい。
しかも複数いて、どれがどれだか見分けがつかないと。
ならば捕獲してやれとの事で至る場所に罠を仕掛けたんだと。
路地や薄暗い場所、店の裏やゴミ箱の傍とかの猫が立ち寄りそうな場所へ。
彼女が言うにはちっとも犯人は捕まらないんだと。
ずる賢いようで、人間どもを嘲笑っているのが怪盗ルパンみたいだって。
だから商店街の人間はその猫達をルンペン一味とよんでいるのだそうだ。
・・・ルパンとルンペンは違うだろうに。
こうして謎が全て解けた我輩。
相当数の猫が捕獲されるも、食堂の分け前が増えるからまあいっかと。
たくましい彼等の事、きっと自力で逃げ出してくることだろう。
さてと・・・今日は走り回って疲れたな。
そろそろ家へ帰るとするか。
その頃商店街では・・・
「すし屋さん、そっちはどうだね?」
「いやー、こっちもだめだったよ肉屋さん。結構捕まえたけどアイツらは入ってないねぇー。」
「本当にヤツラ賢いな。見分けるのはいつ見てもキレイな毛並みだけだもんなー。まるで真新しいぬいぐるみの様な・・・。」




