吾輩は供養物ではないのである!
珍しく雨の多い秋。
我輩の仕事も行き詰っていた。
得意の外回りが出来ないでいるからである。
「こんな時は家にいるに限るわねー!」
などと、とかく一般家庭ならそうであろう。
しかしここは違う。
三河家なのだ!
美也殿や小織殿がいるのだ!
悪魔の館なのだ!
幸いなことにまだ時間が早く、二人とも学業や仕事に専念しておる最中。
せめて美也殿が帰宅する4時前ぐらいまでは体を休める事にしよう。
ZZZZZ・・・・
・・・?
・・!
やらかした!
こんな時に限っていつも寝過ごしてしまう我輩は愚か者だ!
学習能力がないにも程があるぞ!
辺りは気が付くと真っ暗に。
・・・真っ暗?
あれ?
「おはようニャゴロー。お目覚めかなー?」
!!!
美也殿の声が!
しかし彼女の姿はどこにも見当たらない!
何せ真っ暗闇なのだから!
{ガサガサ・・・}
それにしても動くたびにするこのガサガサ音はなんとかならないものか?
やけに耳障りだぞ?
心なしか手足がなんだか浮腫んでいる気が・・・
それにしても本当に真っ暗だな?
我輩のキャットアイでもまったく見えないのはどうしてだ?
「顔に紙袋を被せているのに大人しいねニャゴロー。」
美也殿が何かを言い始めた!
『亀に蟹土竜をハブしているのにドナドナしいたけニャゴロー』だと?
なにを言っているのか全く分からん!
そもそも美也殿の行為自体がいつも不明で理解できない!
「前足後ろ足にも小さな紙袋を被せ、輪ゴムで止めてみました。」
「お!面白そうな事してるね美也!!」
グヌヌ・・・
御子息に助けてほしいのだが、今はこの家にいない。
女人?とやらで入院しているのだ。
(※・・×女人〇病院)
「お兄ちゃんの復活をニャゴローに託すんだもんね。」
「・・・早く起きろっつーの、あのバカが・・・。」
どうやら我輩に御子息の無事を願掛けしているらしい。
その為に剃髪でもしているのだろうか?
時々ジョリジョリとなにかをカットする音さえも聞こえてくる。
少し悲しい空気が漂うも、二人の手は一向に止まない。
・・・気のせいか、下半身がスースーしてきたな?
それでも御子息の身体を案ずる二人へ今日は好きにさせてやるか!
我輩とて、早く彼には帰ってきてほしいしな!
殆ど会った事ないけど・・・。
この後暫く三河家周辺にて、紙素材のスカーフで真知子巻を、全足には紙の腕カバーを施し、更には首以降全身の毛を剃られた猫がうろついていたらしい。




