吾輩は食べても美味しくないのである!
前回宿敵魚屋の大将と世紀の一戦を終えたニャゴロー。
そのダメージは計り知れなく、両前足と舌がほぼ使い物にならなくなっていた。
荒んだ荒野を歩く・・いや、商店街を歩く我輩。
このままでは癪に障るので、なんとかニャン吉へ八つ当たりを・・・
しかし一向にヤツが現れる気配は無い。
というより、猫自体の気配がない。
どういうことなのだ?
そんな我輩の気持ちも知らずに相変わらず魚屋からは狼煙が上がっている。
その下にはトレジャーが・・・
グヌヌ、このまま黙って見ているだけしかないのだろうか?
アレ?
魚屋の近くに上がるもう一つの煙はなんだ?
あの位置は肉屋ではなかったか?
好奇心旺盛な我輩は足を引きずりながら見学する事に。
しかし真正面から行けば魚屋の二の舞になると考えた我輩。
今度は店の近くで裏手に回ろうと思う。
クンクン。
いーかおり!
どうやら肉を焼いているらしい。
しかしいつもの牛とは違い、あの独特の甘い香りはしない。
一体なにを焼いているのだ?
だが、煙が店の中から出ている点では魚屋と様子が違う。
どうやら中の厨房で焼いているようだ。
さっそく裏手へ回る我輩。
勿論足を引きずってだ!
お!
扉が開いているではないか?
店内が煙でモクモクになるのを防ぐために換気を良くしてのことだろう。
ならばそれを利用してっと・・・
{ズルッ!}
「ニギャッ」
店内に足を踏み入れた途端に何かで滑る。
警戒心全開で転びこそしなかったものの、更に前足へダメージを負う。
しかし何に滑ったのだろうか?
煙モウモウで視界が遮られる中、足元に顔を近づける。
滑った物体をより近くで見る為だ。
なにやら起毛の布だな。
結構複数あるぞ?
一番上にある布の色は、白、黒、茶・・・赤・・・
ハッ!
これはもしや!
恐る恐る一枚捲ると、下からは赤く染まったドラ模様の布が・・
ヒイィィィッ!
生命の危機を感じ、慌ててその場から逃げ出そうとする!
が、血?のようなモノで滑って転んでしまった!
「あっ!勝手に入るんじゃないよこのネコめ!!」
「ニャアァァァァァァァァァァッ!!!」
店主へ簡単に捕まった我輩。
あまりの恐怖に失神してしまった・・・。
その後目が醒めると、我輩はパン屋の娘に抱きかかえられていた。
きっと家まで連れて行ってくれるのだろう。
彼女は御子息と只ならぬ仲なのだから。
それにしてもあの皮は一体・・・
いや、あの肉は・・・
―― 三河家玄関にて ――
「あっ!ないろちゃん久しぶりー。わざわざニャゴロー連れて来てくれたんだ。にしてもなんでこんなに真っ赤なの?その猫柄のハンドタオルダメになっちゃったねー。私もアメショーのヤツ持ってるんだ!今流行りだからもっと集めようかと思って・・・」




