序
作者は主人公最強主義の為、主人公最強主義の嫌いな方はここで戻って下さい
流刑都市ゲヘナ
ヴィーグリーズ大陸西部の不毛な山岳地帯に存在する古代都市遺跡を利用した監獄都市
周囲を数百メートルはある断崖絶壁と凶悪な魔獣の生息地に囲まれた陸の孤島
この都市の歴史は長く、文献が残っているだけでも100年以上前から隔離に利用されていた
だが、近年になり広大な《迷宮》が幾つも発見され、そこに眠る太古の財宝が掘り出された
《迷宮》は財宝の代わりに多くの命を奪っていったが、流刑者の命には限りがある
そうして生まれたのが《探索者》ギルドと大陸全土からの流刑者の補充制度
犯罪者・戦争捕虜・奴隷ありとあらゆる使い捨ての命をもつ者達が大陸全土から集められ自由を目指し迷宮を探索させられた
生と死、栄光と挫折、勝利と敗北、富と破産、そして自由と束縛の狭間に存在する都市ゲヘナ
流刑都市はその実態が世間に広まるにつけて新たな名で呼ばれ始める
――――――誰からとも無く呼び始めたその名こそ《境界都市ゲヘナ》
煉獄都市≒天国都市
その無駄に広い部屋の中は明らかに堅気の人間ではない者達に占領されていた。人種・性別に関係なく大陸全土から集められた髪の色も肌の色も違う者達がただ一様にその部屋で静かに時を待っていた。だが、いくら待っていても誰もあられない。
「おせぇ・・・」
「ちっ! はやくきやがれ」
彼等の焦燥がピークに差し掛かった瞬間、正面の扉が開き豪奢な鎧に身をつつんだ初老の男性が入ってきた。
「ふむ、今回はえらく人数がおおいが、何か特別な事でもあったのかね、クーン」
部屋の中の人数を見て、驚いたように後ろからひっそりとついてきていた眼鏡の青年に問いかけていた。
「はい、閣下。現在大陸ではティルナノーグで起こっておりました大規模な内乱が鎮圧された事、また東方から遠征に出向いてきたアッディーン5世が大敗をきし大量の俘虜がでた事、南方では大規模な海賊狩りが行われ、北方では魔女狩りと称した《魔術師》排斥運動がおこっており、その影響かと考えられます」
「ほう、そうなのか。まあいい、とりあえず働き手が増えるのはいい事だからな」
「はい、閣下。」
ゲヘナのような陸の孤島で大陸情勢をどうやって掴んでいるのか分からないが、青年の言っている事に嘘を言ってい無いことは全員がわかっていた。何故なら彼等がこのゲヘナに流刑にされた原因こそが青年のいっていたものなのだから・・・・・・
そうこうしている内に、初老の男性が一歩前に進みでてきて、部屋の全員に聞こえるよう大声でしゃべり出した
「さて、諸君、ようこそ《ゲヘナ》へ!! 私はこの《ゲヘナ》の評議員兼探索ギルド代表をしているマナナンという者だ。諸君等も知っての通り、ここに流刑になった者の末路は死体となって地下水脈へと流されるか、死ぬまで城壁の中で過ごすか、迷宮へと踏み込み己の自由を買い取るかの3つのみ! 諸君には生を愛し、死を友とし、自由に恋焦がれながら生と死の境界線上を生き抜く覚悟はあるか!?」
「当たり前だ!!」
「自由に慣れるんなら何だってするぜ!」
「・・・・・・御託はどうだっていい、早く方法を教えやがれ!」
マナナンと名乗った初老の男性の言葉に間髪いれず口々に答えを返す。その言葉を聞いてマナナンは嬉しそうに唇を歪ませ、彼等を見回した後、先程より大きな声で説明を始めた
「ならば、諸君の《力》を見せてもらおう! まずはここにいる全員で4人一チームになってもらう。これは誰と組んでもかまわない、諸君の自由だ。そして、そのチームで明日より《迷宮》を攻略してもらう。」
「まって!! 《迷宮》を素手で探索しろというの!?」
「まだ、話の途中だ。質問は最後に受け付ける」
マナナンの説明にこの部屋では数少ない女性が大声で聞くが、冷たく流される。
「今回君達に攻略してもらう《迷宮》は《試しの茨道》と俗に呼んでいる《迷宮》だ。ここは珍しく浅い《迷宮》でな、モンスターもさほど強くは無い。お前達の力を見るには調度いい所だ。期間は・・・・・・そうだな明日より1ヶ月間だ。その間に最下層から証をとってくれば正式に探索ギルドの一員となれる。その一ヶ月間はお前達の衣食住は探索ギルドが保障するし、安物だが武具も供与しよう。何か質問は?」
「もし、万が一その証をとってこれなかったら?」
「一生この城壁の中で最下級として扱われるな」
つまり、最低限の強さも無い者は人として扱われないという事だな、と当たり前のように答えるマナナンに一同は軽い恐怖を覚えた。そして、次の質問を待つがもうないようなのでまとめにはいった。
「よろしい! 今日のところはここまでだ。今からチームを編成してもらう。好きなように4人チームを組みたまえ!! 組み終わった者から正面の扉からでろ。その先の担当者からを説明をうけたら、今日の宿へ案内してもらえ。・・・・・・一応アドバイスだが、女性は可能な限り女性同士でチームを組んだほうが安全だぞ」
その言葉が終わるの待たず、部屋の中は混乱に陥った。チームを組む者が強ければ強いほど己が生き残る可能性がたかまるし、何より攻略が進む可能性が高くなっていく。
「俺は傭兵としてクヴァル戦役を戦いぬいた。誰か俺と組みたい奴はいないか!?」
「はっ、どうせ逃げ回ってたんだろ。俺はミッドの義賊クラックだ。罠の解除から戦闘まで出来るぜ、俺と組みたい奴はいないか?」
「お前は騎士適正持ち、光神加護もあるだと!! 俺と組め、いや組んで下さい!!」
「待ちなよ、その坊やは先にあたし等が誘ってたんだ、邪魔しないでくれるないかい!?」
自己アピールと勧誘でどんどん話がまとまっていき、次々と外へと出て行く。
そうこうしている内に、誰とも組めなかった者達がのこってしまった。
1人目は長身痩躯の幽鬼のような青年、2人目は襤褸切れを深く被り込んだ細身の人影、3人目は地方によっては成人とみなされない年齢の少女
その三人の姿をみたマナナンは面倒臭そうだが、どこか面白そうな目で話しかけた。
「さて、残り物の方達には三人でチームを組んでもらおうか。ああ、それがいやだというのであれば権利放棄とみなすして失格とするからな」
「・・・・・・それしかないんならそれで構わない」
「ああ」
「え? え? ええ? あの、は、はい」
他人に興味が少ない青年、小さく頷くように襤褸切れが上下する人影、明らかに混乱している少女、三者三様な姿
それを先程より面白そうに眺めながらマナナンが振り返り眼鏡の青年に話しかける。
「クーン、人数が足りないがどういうことだ?」
「どうやらこちらに向かう途中で亡くなった方がいるようです。しかし、閣下、このお三方ならば問題ないかと思います。《暴虐狂駆》レックス、《竜面公主》ユーリ、《始祖再来》フィリア、今回の囚人の中でもTOP5に数えられるだろう方々ですから」
「ほうそれはまたビッグネームが集まったな」
周囲に話が聞こえないように小さな声で会話している二人を横目に、レックスと長身痩躯の青年はユーリとよばれた襤褸切れの人影と共に少女の傍へと歩み寄っていく。整った顔立ちとルビーのような赤い髪のフィリアと呼ばれた少女は脅えたように一歩後退した。だが、その後退のスピードよりも速く追いついた青年は、屈みながら少女の目線に顔を合わせて、温和な声で話しかける。
「これから一月の間よろしく頼む、俺は傭兵のレックス。戦場でちっとヘマをうって、ここに来る事になった。戦闘スタイルは前衛接近戦・格闘戦が専門だ」
その容姿には見合わない温和な声と優しい眼差し、友好的な振る舞いに脅えていた少女もほんの少し警戒をとき話し始める。
「あ、あの私は、その…フィリアと申します。北方のサイゼル魔法学院で学んでいたのですが、掟を破ってしまいこちらに来る事になりました。発動媒体・増幅媒体が手に入るまで足を引っ張りますが何卒よろしくお願いします」
丁寧にそう言って深々と頭を下げる。三つ編みにされた美しい長い赤髪が揺れていた。そんな少女の後を継ぐように槍使いが歩み寄る。
「私はユーリ、槍使いだ。………一月も一緒に行動するなら知っておいてもらった方がいいだろう」
そう呟くと襤褸切れを脱ぎ捨てた。そこにあったのは人の顔ではなく、ドラゴンと呼ばれる最強のモンスターの頭部であった。それに驚いて、フィリアは息をのみ、レックスは目を見開いた。が、それも一瞬の事ですぐに元の陰鬱そうな表情に戻り、ユーリへと言葉をかける
「ふむ、それが噂に聞く《竜混転生》の呪いか?」
「………知っているのか?」
「ああ、名前だけはな。詳しいことはフィリアの方が詳しいんじゃないか?」
「へっ? あ、ああ、はい、確かに学院の講義で簡単な事は学びましたけど。確かドラゴン、それも知能が高い一部の古代種が使う呪いの一種で己の魂を対象へと移し、対象をのっとるモノでしたよね」
いきなり話を振られたフィリアは少し戸惑ったが、混乱から立ち直るとすらすらと知識を披露する。
「それでは、この呪いの解呪方法は知っているかい?」
「えっと、確か生半可な解呪では意味がないので各《神殿》の秘宝・秘蹟、または最高品質の解呪の秘石ぐらいでしかできない筈です」
「これで分かったろう。私は《迷宮》にその秘石を探す為に、自分から《ゲヘナ》に来たんだ。だから必ず合格したい。この一ヶ月間よろしく頼む」
そういうと静かに頭を下げる。そして上がった顔をそうして一同は顔を合わせると一度軽く頷き、出口へと向かっていく。
これが後に《ゲヘナ》最強と謳われることとなる最上位クラン《宵闇の桜》を創り上げた彼らの第一歩目だった。