プロローグ
後悔しているかと問われれば、嫌になる程してきたと答えるだろう。
無駄に要領の良かった俺はずっと挫折することなく、何事もこなしてきた。高校に入るまでは。
1ヶ月ほど軽く勉強しただけで県内屈指の進学校に合格したせいで、舞い上がっていたとも言える。
或いは、願書を出した時点で時既に遅し、だったのかもしれない。なんにせよ、何の躊躇も考えも無くその進学校に通うことになった俺は、あっさりと挫折した。
今までぬるま湯に浸かって過ごしてきた俺と違い、激しい競争の中で『努力』を持ってして上へ上がってきた人間は、俺と比べるまでもなく強かった。
1年間保ったのは、正直かなりいい方だったと言わざるを得ない。
今まで何の努力もしなかった人間が、今までずっと努力を積み重ねてきた人間と同じ立場に立てるなど、不遜甚だしいながらも上出来と言える。
それでも一学期ニ学期三学期と時間が経つにつれ、その差は徐々に開き始めた。
最初は「ちょっと」の差だったものが、少しずつ開いていき、その度に「俺はまだ努力してない、努力すればすぐ追い抜ける」などと自分に言い訳を重ねた。重ねすぎた。
その代償として、二年を終える頃にはクラス内どころか学年最下位を争うレベルとなり、得意教科ですら赤点ギリギリ、その他は補習無しでは単位を落としてしまうレベルまで堕ちた。
無論、全員が全員自分を遥か上を行ったわけではないが、学業において自分と同レベルにいる者はその殆どがスポーツや芸術で好成績を収めたものばかりであった。
自分が周囲より劣っているという現実をまざまざと見せつけられ、不登校になり、学校をやめ、それでも高校は卒業しておけと両親に勧められ、同い年の連中に遅れをとること1年、ようやく俺は通信制高校を卒業し、高校卒業の資格を得た。
残念ながら大学に受かるほどの学力は無く、2浪という肩書きを背負い。
SNSでキャンパスライフを満喫する友人達を見るたびに、2年遅れという事実に心を締め付けられたが。
でも、心は前を向けていたと思う。
少しずつ充実を感じ始めていた生活の中で、新人の確認ミスという理由で工事現場の足場の下敷きにされた俺は、あまりにあっけなく死んだ。
書きたくなったものを書いてます。
定期更新を目指しますが、気持ちと睡眠次第で不定期更新になります。