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サンタギュロース

 ようやく三作目です。

 降誕祭以前に発表する予定でしたが、間に合いませんでした。

 最近、世間がめでたい・嬉しい・楽しいと認識する期間は、特に体調が悪くなるのです(苦笑)

 しかも、未だにスマホやタブレット等を持っていないし、持っているノートパソコンはインターネットに繋いでいません。漫画喫茶のパソコンから、ガイアメモリに似た記憶媒体(横文字が苦手なので、正式名称が分からない、憶えられない)を使って手間がかかる投稿をしています。このサイトの操作方法もまだよく分かっていないのに……

 話は変わりますが、本物のサンタに会った事がありますか?

 現実世界での彼らの正体は、アルバイトや正社員等のビジネス・サンタ、義務感に隷従している親、浮かれたコスプレイヤー、物好きなボランティアのいずれかだけであると断言します。

 仮に、もう一種類いるとするならば……

 お巡りさん、信じて下さいって! どうせウソだと思ってるでしょ。けど、マジなんです!

 もう一度、始めっから話しますから、よく聞いて下さい。

 オレはヤツらに拉致られたんですよ。

 バイトの帰り道、いきなり何人かの男達が襲い掛かってきて、全身を押さえ付けられたんです。

 そいつら全員、黒いスーツに帽子被って、サングラス掛けてて……そう、マフィアかスパイみたいな格好でした。

 そん時は何が何だか分かんなかったんです。とにかく必死に暴れまくってたんだけど、口と鼻をタオルみたいな物でふさがれて……。

 何だ、この変な匂い!?――と思った次の瞬間、ぼんやりと目が覚めまして……。

 きっと、睡眠薬をかがされたんじゃないかな? だから、速攻でものすごく眠っちゃったんですよ。

 それで、頭がちょっとボーッとするけど、起き上がって周りを見回したら、五十人以上の人達が寝そべってたんです。オレと同い年くらいの男や女もいたし、オレより若いのもいたし、オジさんやオバさんもいました。

 そのうちの何人かが、オレと同じようにキョトン顔があちこち眺めてました。

 そこは大きな倉庫みたいなところでした。刑事ドラマで麻薬の取引に使われてそうな、でも何も置いてなかったんです。あとは薄暗くて……それぐらいすかね。

 何が起こったが全然分かんないから、しばらくパニくって座り込んでたんです。

 で、いきなり天井から声がしました。こっちから見えない所にスピーカーがあったらしいです。

 冷たい口調で「すぐ服を脱げ。全部だ」って命令してきたんですよ。

 そしたら、一つだけあったドアがいきなり開いて、大勢の男達がドカドカやってきて。

 そうです、オレを拉致ったヤツらと同じ服着て、サングラス掛けてました。

 そいつらはまだ寝ているヤツを乱暴に叩き起こしたり、もう起きてたオレ達も怒鳴りつけられたりして、持ってきた服に着替えさせさられました。汚ったねえ作業服(つなぎ)でした。

 マジ勘弁、ってくらいにドス黒く汚れまくってた。それに、鼻がツンッ、ってなるくらいメチャ臭くて、着たらゴワゴワして最悪でした。

 女の子やオバさんは嫌がってたけど、あいつらに顔を殴られて、着ていた服をむしり取られました。だから、最後は泣きじゃくりながら着てました。

 全員が着替え終わると、またスピーカーから冷たい声が流れました。

 『今から訓練を開始する』

 こうして地獄が始まったんです。毎日が……いや、一秒一秒、全ての時間が地獄以上の地獄でした。

 昔、『フルメタル・ジャケット』って映画があったでしょ。鬼みたいに厳しい教官が若い男達を「ブチ殺すぞ」っていうくらいシゴきまくって戦争に行かせるヤツ。……まあ、教官はクソトロいデブにトイレでブチ殺されたけど……

 はっきり言って、それ以上。あれこそガチの地獄でした。マジで死ぬかと思った。

 あのドアから出されると、何にも無いタダっ広い野原だったんです。で、いきなり『走れ』ですよ。キョトンと突っ立ってたら、また顔面パンチ。

 オレ達は慌てて走り出しました。

 当然、途中で限界きてへたり込むじゃないですか。そしたら、今度は腹や背中をマジ蹴りですよ。

 みんな、泣きながら走り続けましたよ。いい歳したオジさんも涙とヨダレと鼻水ダラダラで四つん這いになってました。もう、全身激痛で全員ボロボロですよ。

 それが始まったのは、太陽の高さからして昼ぐらいだったかな。何時間走らされたかは分かんないけど、「やめろ」って言われたのは、完全に太陽が沈んだ時でした。

 で、「倉庫に戻れ」って言われたから、みんな逆らう気力も無く従ったんです。

 すると、外から鍵をかけられました。

 中には小っちゃいパンと水が入ったペットボトル、作業着と同じくらいボロボロで臭い毛布が人数分あるだけ。……それ食って飲んで寝ろ、って事は分かりました。

 普段だったらブチ切れるとこですけど、あんな状態じゃあ言い返す事もできやしない。

 オレ達は痛いくらい喉カラカラでハラペコでした。でも、体力も気力も限界だったから、口に運ぶ事もできなかった。全身をでっかいハンマーで叩き潰されながら、火であぶって熱くなったペンチで千切られまくってるみたいに、ものスゴく痛いってのが何日も続くって経験ありますか?

 オレが硬いパンを水で何とか流し込んだ直後、電灯が消えました。まだ食べ終わってなかった人達から小さい呻き声が上がりました。でも、それ以上は反抗できなかった。

 みんなすぐに寝入ったと思います。今まで生きてきた中で一番疲れ切ってたオレは真っ暗になってから後の記憶が無いから。

 いきなり大声で起こされました。またスピーカーから冷たい声が流れてて、いきなり入ってきた黒スーツの男達がまだ寝ている人達の頭を蹴飛ばしてました。

 そして、昨日の夜と同じパンと水だけの食事。

 「三分以内に終えろ」と急かされて食べ終わると、ランニングだけじゃなく、腕立て伏せ、腹筋、背筋とか、とにかく色んなトレーニングをさせられました。

 他の人に話しかけると、即顔面グーパンチ。食事や寝てる時に話すのも禁止でした。

 そんなのが毎日繰り返されました。

 最初に目が覚めた時からスマホも腕時計も無くなっているし、倉庫にはカレンダーもテレビも置いてないから、日付なんて分かりません。

 何でオレ達がこんな目に遭わなきゃいけないのか分からなくて、腹が立って、悲しくて、頭も体も心もグチャグチャになってたんです。

 訓練が始まって二、三週間経ったと思います。ある朝、いつものように叩き起こされたオレ達はヤツらによってチーム分けされたんです。

 ワケ分かんないまま、みんなあちこちに連れて行かれました。

 オレを入れた十数人は、また何にも無い部屋に入れられたんです。そこは倉庫より狭くて、病院みたいな匂いがしてました。

 不安になったオレ達がキョトキョト見回していると、ヤツらが変なスプレーを顔にブッ掛けてきたんです。それが麻酔ガスみたいなもんだったんでしょうね。またバタングーですよ。

 で、目が覚めたら、顔と胸がゴワゴワして変だった。

 見回すと、中はあの倉庫と同じだけど、別の場所でした。

 でも、変わってたのは場所だけじゃなくて、オレ達もでした。

 すぐそばで寝そべってたのは、白いモジャモジャのヒゲが顔半分と胸を隠した、七十歳を超えたジイさんだったんです。

 驚いたオレがその横を見ると、やっぱり同じジイさんが。その横も、前も、後ろも。

 作業服で分かります。みんな、髪もヒゲと同じように真っ白になって、目元もシワだらけ。男だけでなく、若い子もオバさんもジイさんになってたんです。

 オレは嫌な予感がしたんです。何でか同時に吐き気がしました。でも、ガマンして自分の口元を触りました。

 アレが指に触れた瞬間、オレは涙があふれ出ました。

 目尻も触りました。シワだらけでした。

 ヒゲとシワを触った両手も、シワだらけでした。思わず呻いた声も、完全にジイさんの声でした。

 とうとう泣き出してしまった時、他の人達も目を覚まして体を起こしました。そして、自分達がどうなったか思い知ったんです。

 その時、見えないスピーカーから冷たい声がしました。

 『君達は今日からサンタクロースとして生きるのだ』

 全員がキョトンとしてました。毎日地獄のフルコースを強制された後、いきなり白ヒゲのジイさんに整形手術されて、お前はサンタだ、って言われて納得できますか?

 『我々〈聖夜機関〉は、君達のように“子供嫌いの大人”“モテなくて結婚できない独身者”“子供を作ろうとしない既婚者”“子供を作れるようになる努力を怠っている者”どもを拉致し、薬物と外科手術によって外見をサンタクロースに作り替え、訓練を積ませて本物と同じように一晩中プレゼントを渡し回れるように仕立て上げた』

 当然、オレ達は「どうしてだ?」って訊きましたよ。すると、

 『少子化問題を短期間で確実に解決する為だ』って。

 それを聞いてもワケ分かんなかった。だって、オレ達をサンタに改造しても意味ないじゃないですか。

 でも、ヤツらは本気だったんです。

 『サンタからプレゼントをもらって喜ぶ子供を見ると、普通は微笑ましく思う。そして、自分も子供を欲しがる。その光景を庶民にいつでもどこでも見せつけて結婚したくなるように仕向け、たくさんの子供を作らせるのだ』

 オレはタチの悪い冗談かと思いました。これは手の込んだドッキリじゃないか、って。

 でも、今までの訓練は全部ガチだった。そして、スピーカーでしゃべってるヤツも。

 その日から、オレ達はサンタの衣装で訓練をさせられました。

 見かけは八十近いジイさんなのに、軍隊ばりの動きで色んな訓練をこなしている。それが、とんでもなく現実味の無いプロジェクトの為にさせられているなんて、誰も信じないでしょう。

 でも、オレ達はやらされたんです。毎日毎日、休み無くやらされ続けたんです。

 オレは拉致られる前まで、自分で言うのもナンですがモテてました。まあ、日替わりって言うか、最高で七股やってた事もあります。

 あいつらはそれが許せないと。「きちんと結婚して、子供を二人以上作らない者は、この国で生きる資格なんて無い」って言いやがったんです。

 別にそんなのオレの勝手じゃないですか。今まで誰にも、一度もバレなかったんだからイイと思うんですよ。女の子達もオレも楽しくて気持ち良かったし。

 こんな風にムカついてましたけど、他の人達がオレ以上にムチャクチャごねてましたね。

 ここに連れてこられた時から童貞ヅラのデブキモメンは、

 「ボクは全然モテなかった。顔は整形前もキモメンだったし、脳細胞が死んでいるみたいに勉強ができないし、運動神経が腐っているのかって思うほどスポーツはどれもダメ。それに、ファッションや会話のセンスも全然無い。高卒のフリーターだから、金も肩書も学歴も無い。空気が読めないのと、要領が悪いからいつも誰かを怒らせていた。ワザとじゃない。でも、努力して良くなる方法は誰も教えてくれなかった。それでもボクが悪いのか?」

 そして、改造される前は三〇過ぎくらいのそこそこ美人だった奥さんは、

 「わたしは何年も不妊治療を続けてきたけど、経済的にも精神的にも限界で、ここにさらわれてくる数日前に治療をやめたばかりなの。それでもわたしが悪いの? 生まれつき子供を授かれない体なのが悪いっていうの?」

 でも、ヤツらは二人に『それが悪い』って言い切ったんです。

 『庶民の分際で子供を作らない――即ち上流階級を支えるべき労働者と納税者を増やさず、彼らが住みやすい国を維持し、彼らが動かしている社会に貢献しない者は、どんな理由があっても絶対に許されない。生まれつきモテない要因を持っているか、どんなに努力してもモテるようにならないなら、そんな人間に生まれてきた事自体が悪い。全面的に自己責任だ』って。

 二人ともその場にへたり込んで泣きじゃくってました。

 ちなみに、その奥さんの旦那さんは別の場所に連れていかれました。それから一度も会ってません。

 その後、今まで改造されたサンタ達がクリスマスに任務を遂行してる映像を見せられました。

 オレ達の先輩になる彼らは、色んなイベントでクリスマスを盛り上げる一方、大金持ちやいい家柄の子供達に高価なプレゼントを本当に贈ってました。

 機関が言ってる“サンタからプレゼントをもらって当然の良い子”ってのは、

 「財力・地位・肩書・家柄等がある富裕層や権力階級に所属し、庶民を支配して社会を動かしている親の子供」

 だそうです。分かりやすいですね。

 だから、いいとこの坊ちゃんやお嬢ちゃんには自宅に行って欲しい物を届けるけど、庶民の子供はイベントで楽しませるだけ。あげるとしても大した物じゃない、ってワケです。

 そして、恐ろしい映像も見せられました。

 サンタがいつでもどこでもニコニコしているのは、洗脳されたからなんです。

 彼らは機関の訓練と教育を何十時間も受けて、色んなドラッグを飲まされまくったり打ちまくられたりした上、怪しい手術で脳ミソをいじくり回されてます。子供達とふれあい、プレゼントをあげるのが心から嬉しい・楽しい・素晴らしい、って思い込むように改造されたんです。

 しかも、もっと恐ろしい事を知らされました。

 訓練についていけない者。

 ここまできても子供好きにならない者。

 反抗的な言動を取り続ける者。

 現状に悲観や絶望して任務に消極的な者。

 つまり、サンタに向かない者達は、また薬物注射と外科手術で改造されるんです。

 ――トナカイにッ!!

 だから、サンタのソリを引っ張ってるトナカイは、元は全員人間なんです!

 これでもまだ終わりません。

 体力や精神に限界がきて任務が果たせなくなったサンタやトナカイは、すぐ殺されるんです!!

 そして、フィレやロースとして市場に安く出回ります。

 しかも、絶対に上流階級の人達にいかないようにしています。

 だから、安いからって喜んで買うのは、ヤツらに支配されている中流と下流の人達なんです。彼らは知らずに人間の肉を食べさせられているんです! ヤツらはそれを見てせせら笑っているんです!

 トナカイに改造されたり、肉に加工されている映像を見せられたその日の夜、オレはたまらなくなって脱走しました。以前から目を付けていた警備システムの抜け穴を突いてね。

 運が良かったのか、トントン拍子に施設の外に出られました。

 そして、何日も山や森の中をさまよって、追っ手を振り切り、昨日ようやくこの街に辿り着いたんです。

 そして、ようやく見つけた警察署(ここ)に駆け込んで、みなさんにお願いしてるんです。

 ウソっぽく聞こえるのは、オレもよぉく分かってます。でも、全部本当なんですッ! どうか信じて下さいッ!! オレ達を助けて下さいッ!! あいつらから守って下さいッッッ!!

              〜  ☆  〜


 「アレ、どう思う?」

 「毎年この時期、浮かれ騒いで連行される酔っぱらいどもの戯言(たわごと)より面白くねえな。サンタの服は途中で盗んだんだろう。かなりズタボロになってたけど」

 「同感だ。ところが、あのじいさんからアルコールは検出されなかった。ドラッグの検査も陰性だった」

 「ラリってないのか!? あれで正気?」

 「そうじゃない。じいさんが話している最中に、隣の県にある施設から捜索願が出されていた、って報告が来たんだ」

 「あのじいさん、本当に脱出したのか? あの歳で、やるなあ」

 「そうらしい。ただ、頭の方が……な」

 「なるほど。全部妄想、って事か。つまり、口調が若者っぽくて、老人に改造されたって訴えてたのも……。そして施設ってのは、つまり……」

 「まあ、そういう事だ」

 「あっ、先輩達、喫煙室(ここ)にいたんですね。さっき施設の人達が迎えに来ました」

 「やっとか。チンタラトロトロ何やってたんだ?」

 「道が混んでたんだろう。浮かれたカップルどもがゾロゾロ湧き出てるからな。まあ、ハロウィンの時より人数も格好もマシだが」

 「でも、イチャついてる分うっとうしいから、プラマイゼロだろ?」

 「先輩達は知らないでしょう。あのおじいさん、施設の人達を見るといきなり叫びながら暴れだしたんですよ。とても七十代とは思えない暴れっぷりでした」

 「よっぽど嫌われてるんだな」

 「好かれなけりゃ、仕事もやりにくいだろうに」

 「でも、鎮静剤を打たれるとおとなしくなりました。それって本当にただの鎮静剤なの、ってくらい」

 「手間かけさせやがって」

 「それにしても、メチャクチャ怪しかったですよ」

 「何がだ?」

 「施設の人達、『M・I・B(メン・イン・ブラック)』みたいな格好だったんですよ。でも、ウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズってソフト帽被ってましたっけ?」

 「知らねーよ。マンガなんて読まねえし」

 「えっ、ハリウッド映画ですよ! 見たことないんですか?」

 「おれもその映画はよく知らねえ。でも、そいつらがかなり目立つってのは分かる。おれが外で見つけてたら、すぐ職質だな」

 「今夜はハロウィンじゃなくて、仮装しない方のお祭り騒ぎだ、って教えてやれ」

 「とにかくメチャクチャでしたよ。注射する時なんか、ギャーギャーわめいて暴れまくるから、みんなで思いっ切り押さえ付けて……。途中から見た人は、『署内で拉致かよ』って勘違いしてたでしょうね。通りかかった婦警どころか、事情を知ってる課長までドン引きしてましたし」

 「そう言ってやるなよ。向こうさんも大変なんだから」

 「しかも、イブの夜にだぞ。まあ、オレ達もだけど」

 「でも、これでやっと帰れるな。おい、後は頼んだぞ」

 「分っかりましたぁ。又吉ばりに芥川賞取れそうな報告書仕上げときま〜す」

 「ムリだろ。くだらねえ事ほざいてんじゃねえよ」

 「あんだけ誤字脱字がありゃあ、課長も押収品のドスで、お前のポンコツ脳ミソをブッた斬りたくなるって」

 「課長、結構本気だったぞ」

 「うぅ……。それはともかく、彼女に『ゴメン遅れる』ってLINE送らなきゃな。はぁ〜あ、課長以上にメチャクチャ怒られる……」

 「そうしろ、そうしろ。おれ達の若い頃はもっと苦労したぞ。それに比べりゃまだまだマシだ」

 「頼れる先輩がカワイイ後輩にアドバイスしてやろう。……『ボク後輩(ドレイ)だから、メチャクチャ怖い先輩(オニ)どもに書類地獄に叩き落とされちゃった』って送っとけ」

 「はいはい、ありがとうございます。先輩達の思いやりが嬉し過ぎて、押収品の密造拳銃をクラッカー代わりにブッ放したくなりましたよ」

 「バカほざいてる間があるなら、さっさと行って書け書け。……ま、面倒なプレゼント突っ返せて良かった。これで今日はお役御免だな」

 「あ〜あ、おれのとこにもサンタ来てくれねえかな」

 「汚れまくった大人にゃ、絶対来ねえよ。それどころか、今夜はお互いサンタにならなきゃな」

 「毎年、出費がキツいぜ。おれ達がガキの頃のオモチャって、あんなに光りまくってうるさくて高かったか?」

 「う〜ん、よく覚えてねえな。……で、プレゼント置いた後は嫁さんのサンタになるのか? 『プレゼントは自慢のフランクフルトだぞぉ』って」

 「よせよ。もうその気にならねえから」

 「おれもだ。……サンタさんよぉ。来る日も来る日も市民と治安を守ってる勤勉な公僕(おれたち)にもプレゼントくれよぉ」

 「気立てが良くて、美人で、ボンッ・キュッ・ポンッで、料理上手で」

 「家事も嫌な顔せず、ゴミ出しを頼んでこない」

 「毎月こづかいもたっぷりくれて」

 「禁煙と禁酒を押し付けてこなくて」

 「仕事に理解があって」

 「飲みの付き合いにも理解があって」

 「浮気しても風俗行っても笑って許してくれる、新品ピチピチの嫁さんをくれ〜」

 「そんなのどこにもいねえよ。それに、おれもお前もモテるオジさまじゃなくて、モテねえオヤジだぞ」

 「痛いくらい分かってるって。……おっ? 中古品の鬼嫁からLINEが来てた」

 「何だ? 『今夜は寝かさないわよぉ〜』とか?」

 「違うって。『今夜はステーキよ! しかもフンパツして牛ロース!! 早く帰ってきてね』だってさ」

 「……いい嫁さんじゃねえか」

 今の日本社会はいかなる理由を問わず、「子供を欲しがれない」「子供を先天的に作れない」「子供を作る努力が報われない」人を見下し、非難し、子供がいる人達の利益の為に全面的に損をするのが当然であるとする傾向が強いです。

 自分は前者なので最大多数派「子供は可愛いに決まっている・欲しくなって当然である・何としてでも作るべきである大軍団」からの風当たりの強さから、気付けばこんな物語を創作していました。

 ……もしかして、これを理由に社会的かつ医学的に消される?

 尚、今回最も苦心したのは、主人公の言葉づかいです。自分は普段の発言でマジもガチも使った事が全くありません。両者の区別すら付かないので、何が違うのか身内に訊いた程です。それなのに、返ってきた答えは「使い分けはフィーリング」

 非論理的な回答に絶句しました。だから、彼の言い回しが不自然であったなら、それは自分の力量不足です。

 投稿後に気付いたのですが、彼は芥川龍之介の『河童』の主人公か、映画『マタンゴ』の語り手みたいですね。前者は妄想、後者は事実を話していますが、彼は……

 最後に、今作も真偽の判別が不可能な内容と人肉ネタで済みません。

 次作は楽しい内容になる予定です。

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